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第三十五話……レーザーandミサイル
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「爆弾投下、開始!」
「了解!」
朝陽が昇るのと同時刻。
ドレッドノートは件の渓谷地の上空にいた。
そして、ドレッドノートの下部の爆弾倉が開き、次々に小型爆弾が投下されていく。
死神の口笛の調べにも似た落下音の後。
次々に地上で爆発が起こる。
渓谷地は熱帯雨林で、そこを住み家にしていた鳥などが一斉に羽ばたいていく。
「敵からの反撃はありません!」
「了解!」
空から攻撃すれば、一定の反撃があると思ったが、そこは敵が隠蔽性を保ったままの形となった。
ドレッドノートの側としても、件の渓谷地は20km四方にも広がっており、どこに敵の設備があるのかを確かめるための爆撃だったのだ。
『……では、作戦通りで。ご武運を祈ります!』
「了解!」
エリーの通信に短く返事をする晴信。
彼はドレッドノートの爆撃の合間に、ブラックジャックを駆り、地上への降下を済ませていたのだった。
「さてと、それじゃあ始めますか……」
晴信は独り言を呟き、渓谷地の奥へと機体を進めるのであった。
☆★☆★☆
晴信の乗るブラックジャックは、先ずは胴に付いた降下用のパラシュートを焼き切る。
これがあると俊敏に動けないからだ。
その後、小さな小川へと足を進めた。
ブラックジャックは足が放熱器になっており、ここを冷やしておくと性能が上がる特性があったのだ。
晴信はブラックジャックの仕様を事細かく調べ、ゴーレムという機体を堅実に運用することに優れた人物であった。
「さてと、後は生体同期を……」
【システム通知】……認識完了しました。
パイロット人間モードに移行します。
大昔の超文明の人間たちは、多くの文明生物達を兵士として使った。
当然ゴーレムのパイロットとしてもだ。
だが、人間たちは他の文明種族の反乱にも危惧していた。
そのため、ゴーレムは人間が乗ったときにだけ、その真なる力が発揮されるように設計されていたのだ。
【システム通知】……敵発見!
14時の方角、距離1600m
ブラックジャックのセンサーは、晴信に素早く敵情を伝えてきた。
敵は物体の落下情報をある程度掴んでおり、その確認のためにゴーレムをよこしてきたのだった。
「相手は【ハーピー】か……」
晴信は三次元スコープを覗き、そっと呟く。
ハーピーとは軽量型の主に偵察に適性のあるゴーレムだった。
これが敵のパイロットも人間であったなら、偵察適性のあるハーピーであっただろう。
だが、人間という種が乗ったゴーレムは、探知センサーまでもが強化された。
ブラックジャックは伏せた姿勢で長砲身レーザーライフルを構え、晴信は経験と感により偏差射撃を試みた。
長砲身の銃口から、青白い光線が1km以上離れたハーピーに吸い込まれる。
あまりのエネルギー量に、光軸上の周辺空間が歪んでいく。
この空間歪曲は、各種センサーも狂わせる程であった。
一瞬の静寂の後。
全高15m重量40トンからなるハーピーの機体が爆散、四散する。
それは、救援の連絡も出来ない、一瞬の間の出来事であった。
【システム通知】……生体反応無し。
パイロットの蘇生不可能。
晴信はブラックジャックのセンサーで、素早く相手の生死を確認。
帰らぬものとなったことを確定させたのち、とどめの2撃目を放った。
核融合炉をむき出しにしていたハーピーの残骸は、ブラックジャックのとどめの射撃を受けて、その心臓部を完全に破壊された。
「……丁寧にやり過ぎたかな」
晴信は少しぼやく。
完全に破壊すると、敵が怪しんで増援を派遣してくる可能性があったのだ。
すぐさま、晴信が乗るブラックジャックは、葦や樹木が生い茂る水深約2mの水辺に隠れる。
先ほどのレーザーはゴーレム本体からエネルギーを加給していた。
この新鋭機ブラックジャックの最大の弱点は、武器使用時の放熱性の悪さだった。
これを敵側が知っていれば、又戦況は変わっていたかもしれない。
ブラックジャックは湿地の茂みに隠蔽したまま、後からのこのこやって来た敵戦車二両に砲撃。
敵はブラックジャックの位置さえ掴めぬまま破壊されたのだった。
晴信は時限測定器である四次元センサーを、破壊した戦車に念入りに投射する。
これは発生した熱量や気流により、今まで移動してきた経路を計算、割り出す装置だった。
敵基地は渓谷の中に潜み、エーレントラウト政府軍から巧妙に隠蔽されていた。
しかし、それは逆に侵入者が入り込むと、見つけ出しにくいという弱点も内包していたのだった。
晴信は敵戦車の移動経路をたどり、更に奥地へと進む。
経路を割り出すと言っても、結局は戦車の履帯の痕を辿っていくのが最有力の手段であったのだが……。
【システム通知】……エネルギー反応。
警戒願います!
30分進んだばかりなのに、すぐまた敵の反応があった。
晴信は赤外線スコープを覗くと、大きな岩陰の後ろにトーチカが隠されていることを察した。
今回は射線が通らないために、長砲身のレーザーライフルが使いにくい。
そのため、背中に背負っていたミサイルランチャーを構えた。
この世界の無線式ミサイルは、パイロットの脳波を読み取り、それに従って敵を追尾撃退する方式をとっていた。
その為、チャフやフレアなどの妨害が難しいといった特性をもっていた。
【システム通知】……目標をロックオン!
飛行経路を認識しました。
ブラックジャックが放ったミサイルは、幾何学模様のような飛来経路を辿る。
それはこちらの位置を悟られないための擬態だ。
その甲斐あったのかなかったのか不明だが、敵施設はすぐに破壊された。
こうして晴信は、ゆっくりと、そして着実に、敵施設目指して近づいていったのだった……。
「了解!」
朝陽が昇るのと同時刻。
ドレッドノートは件の渓谷地の上空にいた。
そして、ドレッドノートの下部の爆弾倉が開き、次々に小型爆弾が投下されていく。
死神の口笛の調べにも似た落下音の後。
次々に地上で爆発が起こる。
渓谷地は熱帯雨林で、そこを住み家にしていた鳥などが一斉に羽ばたいていく。
「敵からの反撃はありません!」
「了解!」
空から攻撃すれば、一定の反撃があると思ったが、そこは敵が隠蔽性を保ったままの形となった。
ドレッドノートの側としても、件の渓谷地は20km四方にも広がっており、どこに敵の設備があるのかを確かめるための爆撃だったのだ。
『……では、作戦通りで。ご武運を祈ります!』
「了解!」
エリーの通信に短く返事をする晴信。
彼はドレッドノートの爆撃の合間に、ブラックジャックを駆り、地上への降下を済ませていたのだった。
「さてと、それじゃあ始めますか……」
晴信は独り言を呟き、渓谷地の奥へと機体を進めるのであった。
☆★☆★☆
晴信の乗るブラックジャックは、先ずは胴に付いた降下用のパラシュートを焼き切る。
これがあると俊敏に動けないからだ。
その後、小さな小川へと足を進めた。
ブラックジャックは足が放熱器になっており、ここを冷やしておくと性能が上がる特性があったのだ。
晴信はブラックジャックの仕様を事細かく調べ、ゴーレムという機体を堅実に運用することに優れた人物であった。
「さてと、後は生体同期を……」
【システム通知】……認識完了しました。
パイロット人間モードに移行します。
大昔の超文明の人間たちは、多くの文明生物達を兵士として使った。
当然ゴーレムのパイロットとしてもだ。
だが、人間たちは他の文明種族の反乱にも危惧していた。
そのため、ゴーレムは人間が乗ったときにだけ、その真なる力が発揮されるように設計されていたのだ。
【システム通知】……敵発見!
14時の方角、距離1600m
ブラックジャックのセンサーは、晴信に素早く敵情を伝えてきた。
敵は物体の落下情報をある程度掴んでおり、その確認のためにゴーレムをよこしてきたのだった。
「相手は【ハーピー】か……」
晴信は三次元スコープを覗き、そっと呟く。
ハーピーとは軽量型の主に偵察に適性のあるゴーレムだった。
これが敵のパイロットも人間であったなら、偵察適性のあるハーピーであっただろう。
だが、人間という種が乗ったゴーレムは、探知センサーまでもが強化された。
ブラックジャックは伏せた姿勢で長砲身レーザーライフルを構え、晴信は経験と感により偏差射撃を試みた。
長砲身の銃口から、青白い光線が1km以上離れたハーピーに吸い込まれる。
あまりのエネルギー量に、光軸上の周辺空間が歪んでいく。
この空間歪曲は、各種センサーも狂わせる程であった。
一瞬の静寂の後。
全高15m重量40トンからなるハーピーの機体が爆散、四散する。
それは、救援の連絡も出来ない、一瞬の間の出来事であった。
【システム通知】……生体反応無し。
パイロットの蘇生不可能。
晴信はブラックジャックのセンサーで、素早く相手の生死を確認。
帰らぬものとなったことを確定させたのち、とどめの2撃目を放った。
核融合炉をむき出しにしていたハーピーの残骸は、ブラックジャックのとどめの射撃を受けて、その心臓部を完全に破壊された。
「……丁寧にやり過ぎたかな」
晴信は少しぼやく。
完全に破壊すると、敵が怪しんで増援を派遣してくる可能性があったのだ。
すぐさま、晴信が乗るブラックジャックは、葦や樹木が生い茂る水深約2mの水辺に隠れる。
先ほどのレーザーはゴーレム本体からエネルギーを加給していた。
この新鋭機ブラックジャックの最大の弱点は、武器使用時の放熱性の悪さだった。
これを敵側が知っていれば、又戦況は変わっていたかもしれない。
ブラックジャックは湿地の茂みに隠蔽したまま、後からのこのこやって来た敵戦車二両に砲撃。
敵はブラックジャックの位置さえ掴めぬまま破壊されたのだった。
晴信は時限測定器である四次元センサーを、破壊した戦車に念入りに投射する。
これは発生した熱量や気流により、今まで移動してきた経路を計算、割り出す装置だった。
敵基地は渓谷の中に潜み、エーレントラウト政府軍から巧妙に隠蔽されていた。
しかし、それは逆に侵入者が入り込むと、見つけ出しにくいという弱点も内包していたのだった。
晴信は敵戦車の移動経路をたどり、更に奥地へと進む。
経路を割り出すと言っても、結局は戦車の履帯の痕を辿っていくのが最有力の手段であったのだが……。
【システム通知】……エネルギー反応。
警戒願います!
30分進んだばかりなのに、すぐまた敵の反応があった。
晴信は赤外線スコープを覗くと、大きな岩陰の後ろにトーチカが隠されていることを察した。
今回は射線が通らないために、長砲身のレーザーライフルが使いにくい。
そのため、背中に背負っていたミサイルランチャーを構えた。
この世界の無線式ミサイルは、パイロットの脳波を読み取り、それに従って敵を追尾撃退する方式をとっていた。
その為、チャフやフレアなどの妨害が難しいといった特性をもっていた。
【システム通知】……目標をロックオン!
飛行経路を認識しました。
ブラックジャックが放ったミサイルは、幾何学模様のような飛来経路を辿る。
それはこちらの位置を悟られないための擬態だ。
その甲斐あったのかなかったのか不明だが、敵施設はすぐに破壊された。
こうして晴信は、ゆっくりと、そして着実に、敵施設目指して近づいていったのだった……。
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