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第三十二話……海底遺跡の番人

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 猛吹雪の中、晴信とディーは氷の大地を歩く。
 そして、ディーのセンサーが反応した部分の地面の氷を、レーザーマトックで叩き割った。

 足元の氷に穴をあけたが、その氷の下は海水だった。

「げぇ、ここを潜るの?」

「そうです」

 耐寒スーツを着込んでいるとはいえ、極寒の海に潜るのをためらう晴信。
 しかし、遺跡の反応は海の中だ。
 潜らないとお宝は手に入らない。


「ようし、いこう!」

「了解」

 意を決した晴信が海に飛び込み、その後を追ってディーも飛び込んだ。


「……うおう、変なのが泳いでいるなぁ……」

 晴信が飛び込んだ海中には、図鑑でしか見たことのない生き物が居た。
 三葉虫やアンモナイトといった類だ。
 遠くには恐竜のような海獣も泳いでいた。

 この地域の海水は養分が少ないため、とても澄んでいた。
 よって目的の遺跡も、潜った目の前に容易に確認できる。

 晴信とディーは海底につくと、遺跡の一部を電熱カッターで切り開き、中へと潜り込んだ。
 二区画ほど進むと、空気がある部屋に出て、晴信はホッと胸をなでおろした。


「……お!?」

 晴信は早速、小型コンテナを発見。
 素早く電子ロックを解除する。

「むぅ……空か……」

 古代奇跡の宝箱ともいえる小型コンテナ。
 50㎝四方の容器で中身は空。
 その結果に、晴信はとても残念がる。


「こっちにきて!」

「なんだい?」

 ディーが呼ぶ方向に晴信が向かうと、そこには壊れた警備ロボットの残骸があった。


「ねぇ、ハルノブ。ここに来たのは僕たちが初めてじゃないんじゃないかな?」

「先客がいたってこと?」

「うん。このロボットの壊れ方は侵入者によるものだと思う……」

 このディーの予想は当たっていた様で、次の区画に侵入したところの小型コンテナも全て空だった。


「ツマンないなぁ」

 晴信は不満をたらたら言いながら、尚も前進。
 懐中電灯で前を照らしながらゆっくりと進んでいた。


「ぉ!?」

 この遺跡にて6個目のコンテナであったろうか。
 電子ロックを解除すると中身があった。
 その中身は本だった。

 中を確認したが、読むことが出来ない。
 後で解析が必要なようだ。
 晴信は背中のリュックにその本しまい込んだ。


「ディー、ここまでは前の人たちは来てないみたいだね」

「うん、間違いないと思う……」

 晴信は変な返答をするディーの方向を見る。

 そこにいたのはピンク色の巨大なスライムだった。
 体重が1トンはありそうな巨体だ。


「……げぇ」

 晴信は急いで飛びのく。
 ディーも急いで後退。
 ゆっくりと忍び寄って来るスライムに身構えた。


「……オ前タチ、殺ス!」

「!?」

 晴信の同時翻訳機に反応。
 なんとこのスライムは言語を持っていたのだ。

「平和的にいこうじゃないか? ねぇ?」

 晴信は武器をしまい、こわごわスライムの説得にかかる。

「平和嫌イ。俺様、オ前食ウ!」

 スライムはそう言い放ち、体液を晴信に飛ばしてくる。


――ジュウ。
 晴信が飛びのいたところの床が、ものすごい速さで腐食を起こし、無残に穴が開く。
 同時に凄まじい異臭もばら撒く。

「オ前、食ベル! オイシソウ!」

 しかし、幸運なことにこのスライムは足が遅いようだ。
 カタツムリのようにゆっくりにじり寄って来る。

「食べられてなるもんか!」

 晴信は腰のレーザーピストルを抜き放ち、スライムに熱線を浴びせた。
 しかし、ほとんど効果がないようだ。

「ハルノブ、相手は電磁障壁をもっているよ。気を付けて!」

「マジか!?」

――電磁障壁。
 それは対エネルギー兵器に対するシールド。
 つまるところのバリアだ。
 この巨大スライム。
 生物なのにバリアを持っているということだった。


「どうしたらいいんだよ?」

 晴信は高周波サーベルを抜き放ち、スライムに対して構える。
 だがスライムは腐食性の粘液を飛ばしてくるので、安易には近づけない。

「私のエネルギーを使って!」

 ディーはそう言いながら、晴信に配線コードを手渡した。
 そう、件のエネルギーカプセルのお陰で、ディーのエネルギーはちいさな恒星クラスだ。

「わかった!」

 晴信は高周波サーベルに、ディーからの配線をセット。
 それを巨大スライムに投げつけた。

――ブス。
 鈍い音を立てて、高周波サーベルがスライムに刺さる。

「今だ!」

 晴信の掛け声に合わせ、ディーから高周波サーベルに無尽蔵ともいえるエネルギーが送られる。
 高周波サーベルは超振動し、瞬時に超高熱を発生。
 その高熱を受け、スライムは白煙を上げながら蒸発していった。


「やったね!」

 晴信とディーは見事に巨大スライムを撃退。
 そして、飛び散った体組織を調査するために、のこったスライムの欠片を試験管へと移した。


「さぁ、どんどん先へ行こう!」

「了解!」

 多分、晴信より先に入ったトレジャーハンターたちは、さっきのスライムに食われたのだろう。
 このスライムを倒して後は、発見した小型コンテナの中身があったのだ。

 中身は主に素材だった。
 次々に手に入る希少金属に、晴信とディーは顔を綻ばせた。


――その晩。

 ……平和嫌イ。俺様、オ前食ウ!

 晴信はスライムが言ったこの言葉を思い出す。
 我々も、他所から見れば、このスライムみたいに生きているのではないか。

 そう思う晴信であった……。
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