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第二十話……惑星コローナ
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「ここに、座ってもいいかね?」
「ええどうぞ」
カンスケは晴信たちと同じ席に着く。
「……お前さん、戦争をなくしたいって本気かい?」
「ええ、出来たらの話ですけど……」
カンスケの問いに、晴信は自信なさげに応える。
「じゃあさ、戦争をなくすために、俺を雇ってみないか?」
「……え?」
戦争をなくすために、戦争屋を雇う。
なんだかおかしい話だ。
しかも、今知り合ったばかりだ。
「なーに、戦争を早く終わらせるためには、全部勝てばいいんだ! そうすれば最短で戦争は終わる。先日に偶然見たんだが、それが出来るほどにあんたの船は強い。それに俺は長年傭兵をやってきたんだ。きっと役に立つぜ!」
「……なるほど」
お互い互角の戦いをすれば、戦争は長引く。
どちらかが一方的に勝てば、戦争が早く終わるというのが、カンスケの持論だった。
晴信も戦争を終わらせることができるなら、と思ったのは大きかった。
話を聞くに、カンスケは戦争に飽き飽きしているらしい。
長い戦いで多くの戦友が亡くなったということだ。
彼の顔は古傷だらけであり、沢山の戦場を駆け巡っていたことを証明していた。
晴信はこのカンスケというオトコを少し信じてみることにした。
「……じゃあ、雇いましょう。でもお給料は少ないですよ……」
「いやいや、給料なんてやすくて構わねぇ。もう俺は戦争に飽き飽きしてんだ。だれかが終わらせてくれるんじゃないかって俺は信じてる。お前さんの宇宙船は強い。一つそれにかけてみようってだけなんだ」
「わかりました」
「じゃあ、今からあんたのことを社長と呼ばせてもらうよ!」
こうしてこの日。
片目の獣人カンスケは、晴信の部下となったのであった。
☆★☆★☆
――翌日。
「社長すげぇな! こんな工場をもっていたのか!?」
カンスケを工場に案内すると、彼はその設備に驚く。
「皆には内緒ですよ……、秘密基地なんでね」
「他所でしゃべったら、命はないですよ!」
ディーがさりげなくカンスケを脅す。
「あはは、わかったってば、そんなにツンケンすんなって!」
カンスケはディーの銀色のオデコをペチペチと叩いた。
――その日の夕方。
ミーティングルームにて。
「……でな、社長。戦争を終わらせるためにはもっと力がいる。仲間も必要だ。さらには金もだな。結局、金も力もない奴に誰も従わないからな……」
カンスケは晴信が平和を目指すために足らないことを指摘していく。
それはつまり力を持てということだった。
力を持てば戦争している奴らを止めることが出来る。
それがカンスケの平和維持の方法だった。
「じゃあ手始めに何をすればいいの?」
晴信はカンスケに問うた。
「まずは、この工場以外にも拠点が欲しい。ここは内密にしておかないとだめだからな。人目にさらしてもいい拠点が欲しい」
「どこかいいところがあるの?」
「あるぞ! この準惑星から近いところにある惑星コローナ。かの地を治めるベルシュミーデ伯爵家は財政が火の車だ。そこでお金を渡して借地をお願いしてみるんだ」
「土地を借りてどうするの?」
「宇宙船を造る造船所を建てるんだ! この工場ほど優秀な船じゃなくていい。沢山船を造って売ってお金にするんだ。金さえあれば何とかなるってもんじゃないが、金がないと始まらねぇ……」
「分かったよ。で、伯爵家へはカンスケが行ってくれるの?」
「面倒なことは、全てお任せあれ!」
カンスケはニヤッと笑った。
晴信はカンスケの考えていることに、すべて納得がいったわけではない。
だがしかし、面倒事も引き受けてくれるカンスケが頼もしく思えた。
☆★☆★☆
惑星コローナ。
ゲルマー星系の第三惑星。
古くから、ゲルマー王国の名族ベルシュミーデ伯爵家が治める地である。
緑が多く、水や資源も豊富。
自然が多く景観も美しかった。
酸素濃度や気圧も十分で、ドーム状の居住コロニー施設なども不要である。
その分、人口は少な目で、未開発地が多い惑星だった。
さらに、統治者であるベルシュミーデ伯爵は浪費癖があり、この地方政府の財政は常に火の車であった。
よって、この惑星の地方政府としては、お金がないために新規での開発が難航していたのだった……。
――二週間後。
カンスケの政治工作により、晴信たちは正式に、惑星コローナの一角を借地した。
新しい造船所に相応しく、海に面した土地で、波除の岩場がある入り江だった。
多少のお金は掛かったが、いずれは稼いで元はとれるという算段である。
更には付属して、いくつかの鉱山利権も買い取った。
宇宙船を造るには鋼材が必要だったからだ……。
この惑星コローナで、晴信が立ち上げた会社は【ミハタ】と命名された。
この名づけ親は、この地の領主である伯爵である。
又、伯爵家がこの会社の株式の25%を保持し、一名の取締役を派遣するという条件が付いた。
つまり、ある程度は地元政府の意向も取り入れた形となっていたのだった。
晴信は準惑星ディーの工場で作った輸送船の代金を元手に、この地に工場プラントを建築し始めた。
地元の労働力も駆使して、突貫工事で次々に造船設備を築いていったのであった。
「ええどうぞ」
カンスケは晴信たちと同じ席に着く。
「……お前さん、戦争をなくしたいって本気かい?」
「ええ、出来たらの話ですけど……」
カンスケの問いに、晴信は自信なさげに応える。
「じゃあさ、戦争をなくすために、俺を雇ってみないか?」
「……え?」
戦争をなくすために、戦争屋を雇う。
なんだかおかしい話だ。
しかも、今知り合ったばかりだ。
「なーに、戦争を早く終わらせるためには、全部勝てばいいんだ! そうすれば最短で戦争は終わる。先日に偶然見たんだが、それが出来るほどにあんたの船は強い。それに俺は長年傭兵をやってきたんだ。きっと役に立つぜ!」
「……なるほど」
お互い互角の戦いをすれば、戦争は長引く。
どちらかが一方的に勝てば、戦争が早く終わるというのが、カンスケの持論だった。
晴信も戦争を終わらせることができるなら、と思ったのは大きかった。
話を聞くに、カンスケは戦争に飽き飽きしているらしい。
長い戦いで多くの戦友が亡くなったということだ。
彼の顔は古傷だらけであり、沢山の戦場を駆け巡っていたことを証明していた。
晴信はこのカンスケというオトコを少し信じてみることにした。
「……じゃあ、雇いましょう。でもお給料は少ないですよ……」
「いやいや、給料なんてやすくて構わねぇ。もう俺は戦争に飽き飽きしてんだ。だれかが終わらせてくれるんじゃないかって俺は信じてる。お前さんの宇宙船は強い。一つそれにかけてみようってだけなんだ」
「わかりました」
「じゃあ、今からあんたのことを社長と呼ばせてもらうよ!」
こうしてこの日。
片目の獣人カンスケは、晴信の部下となったのであった。
☆★☆★☆
――翌日。
「社長すげぇな! こんな工場をもっていたのか!?」
カンスケを工場に案内すると、彼はその設備に驚く。
「皆には内緒ですよ……、秘密基地なんでね」
「他所でしゃべったら、命はないですよ!」
ディーがさりげなくカンスケを脅す。
「あはは、わかったってば、そんなにツンケンすんなって!」
カンスケはディーの銀色のオデコをペチペチと叩いた。
――その日の夕方。
ミーティングルームにて。
「……でな、社長。戦争を終わらせるためにはもっと力がいる。仲間も必要だ。さらには金もだな。結局、金も力もない奴に誰も従わないからな……」
カンスケは晴信が平和を目指すために足らないことを指摘していく。
それはつまり力を持てということだった。
力を持てば戦争している奴らを止めることが出来る。
それがカンスケの平和維持の方法だった。
「じゃあ手始めに何をすればいいの?」
晴信はカンスケに問うた。
「まずは、この工場以外にも拠点が欲しい。ここは内密にしておかないとだめだからな。人目にさらしてもいい拠点が欲しい」
「どこかいいところがあるの?」
「あるぞ! この準惑星から近いところにある惑星コローナ。かの地を治めるベルシュミーデ伯爵家は財政が火の車だ。そこでお金を渡して借地をお願いしてみるんだ」
「土地を借りてどうするの?」
「宇宙船を造る造船所を建てるんだ! この工場ほど優秀な船じゃなくていい。沢山船を造って売ってお金にするんだ。金さえあれば何とかなるってもんじゃないが、金がないと始まらねぇ……」
「分かったよ。で、伯爵家へはカンスケが行ってくれるの?」
「面倒なことは、全てお任せあれ!」
カンスケはニヤッと笑った。
晴信はカンスケの考えていることに、すべて納得がいったわけではない。
だがしかし、面倒事も引き受けてくれるカンスケが頼もしく思えた。
☆★☆★☆
惑星コローナ。
ゲルマー星系の第三惑星。
古くから、ゲルマー王国の名族ベルシュミーデ伯爵家が治める地である。
緑が多く、水や資源も豊富。
自然が多く景観も美しかった。
酸素濃度や気圧も十分で、ドーム状の居住コロニー施設なども不要である。
その分、人口は少な目で、未開発地が多い惑星だった。
さらに、統治者であるベルシュミーデ伯爵は浪費癖があり、この地方政府の財政は常に火の車であった。
よって、この惑星の地方政府としては、お金がないために新規での開発が難航していたのだった……。
――二週間後。
カンスケの政治工作により、晴信たちは正式に、惑星コローナの一角を借地した。
新しい造船所に相応しく、海に面した土地で、波除の岩場がある入り江だった。
多少のお金は掛かったが、いずれは稼いで元はとれるという算段である。
更には付属して、いくつかの鉱山利権も買い取った。
宇宙船を造るには鋼材が必要だったからだ……。
この惑星コローナで、晴信が立ち上げた会社は【ミハタ】と命名された。
この名づけ親は、この地の領主である伯爵である。
又、伯爵家がこの会社の株式の25%を保持し、一名の取締役を派遣するという条件が付いた。
つまり、ある程度は地元政府の意向も取り入れた形となっていたのだった。
晴信は準惑星ディーの工場で作った輸送船の代金を元手に、この地に工場プラントを建築し始めた。
地元の労働力も駆使して、突貫工事で次々に造船設備を築いていったのであった。
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