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第十五話……老人ジャブロー
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「ねぇ、ディー。人間たちってなんで絶滅したの?」
晴信はディーに不思議に思っていることを聞いた。
なぜなら人間は戦争で絶滅したと聞くが、その戦争の跡がほとんど見られないからだった。
「えっと、戦乱で滅びたと聞きますが、確かにその痕跡は少ないですよね……」
「そうなんだよ。本当に戦乱で滅びたのかなぁ? ひょっとして病気だったとか?」
「その可能性もないとはいえません。でも、晴信さまを除いて人間族が絶滅したのは事実です」
「そっかぁ……」
晴信は不思議に思った。
もしかしたら人間たちはどこかで生きているのではないかと、そして、そこから自分たちを見ているのではないかと感じていた……。
☆★☆★☆
晴信たちが温泉掘削で楽しんでいる時、ゲルマー王国とスラー帝国は、各地で激戦を繰り広げていた。
それぞれの星系の中間地帯にあるエネルギー資源地帯アダマンタイト。
これらの小惑星群を手にした方が、この膨大なエネルギーを手にすることが出来る。
その遡源地帯の価値は、まさに相手との国力差を圧倒的にすることが可能なのだ……。
つまり、このアダマンタイト小惑星帯を手にした方が、相手の国家を蹂躙できる。
逆に言えば、勝ち得なければ蹂躙される。
しかし、幸か不幸か、両国の実力派拮抗していた。
よって正面決戦しても引き分けになるのが常だった。
そのため、獣人の国ゲルマーと虫人の国スラーは、正面戦線以外の戦線地域を拡大。
戦線の両翼を鶴の翼のように広げ、相手側の後ろに回り込もうと、周辺星系を探索、攻略した。
周辺星系は宇宙に出ることのままならない低文明地域もあったが、両勢力は遠慮なしに征服し蹂躙。
その文明を破壊し、自分たちの文明やしきたりを押し付けた。
そして彼らを従属星系として取り込みつつ、急速に勢力下に加えていった。
☆★☆★☆
「降下用意!」
『了解!』
晴信はディーの部品の購入のために、ゲルマー王国の鉱山惑星を訪れていた。
鉱山惑星とは、古の超文明を誇った人間たちの遺産が掘り起こせるところであり、ゲルマー王国の技術的な生産を支えている地域であった。
「晴信様ですね、どうぞ!」
晴信とディーは鉱山惑星の検疫をパス。
技術掘削鉱区へと向かった。
この惑星は赤茶けており、居住区画は半円状のドームに覆われていた。
ドームの外は常に砂嵐であり、時折、強烈な硫酸の雨が降っていた。
まさに死の惑星であり、技術遺産がなければ何の価値もないような星であった。
「だれだねアンタ?」
晴信は部品市場で、とある部品屋に話しかけられる。
この部品屋、老齢なのもあって、体のほとんどが機械であった。
顔も機械で、目の部分だけがようやっと生命体であることを告げていた。
「飯富晴信と言います。部品の掘り出し物を見に来ました」
「そうかい、そうかい……。じゃあこっちにきな!」
「はい」
晴信は老人に招かれ、市場のはずれにある彼の店に入った。
店の中は薄暗く、老人の眼が怪しく光る。
「……あんた、その形は人間だな!?」
老人が振り向きざまに言い放つ。
「そうです。人間です」
晴信は正直に答えた。
「そうだろう、そうだろう……」
老人はそう呟きながらに振り返り、顔の機械部分を外した。
そこには焼けただれた顔があったが、その顔はゲルマー王国に多い獣人族のモノではなく、人間にちかい顔立ちだった。
「俺様はジャブロー。人間の生き残りだ!」
「……ぇ!?」
晴信とディーは驚く。
「まさか、人間の生き残りが自分達だけだとでも思ったか!? 確かに人間はほぼこの世界にいなくなった。だが俺様みたいな欠陥モノはあちらの世界には行けなかったのだよ!」
「あちらの世界!?」
晴信は慌てて問う。
「お前、やっぱり知らないんだな。人間の殆どは、次元の壁を越えて、この宇宙空間の外側に移住したんだよ! お前は寝てたかでおいてかれたんじゃないか? ははは……」
老人は快活に笑う。
「宇宙空間の外側ってなんですか?」
ビックバン以来、宇宙空間は広がり続けている。
しかし、その外側の世界については、晴信は聞いたことが無かったのだ……。
「宇宙の外側はな、精神世界とも言われていてな。質量を伴う物質はそこへいけないのさ……」
老人の言うことに晴信は頭がこんがらがる。
「それは一体どういうことです?」
老人はため息交じりに話す。
「つまり、人間たちは体を捨てた。意識と知識を宇宙の外側へ飛ばし、その体を放棄したんだよ。つまりこちらの世界では死だ……」
「なんでそんなことを?」
「わからんな……。俺様はそのころ難病にかかっていてな。みんなにおいてかれちまったんだな……」
老人は段々と声を小さくし、そして泣き出した……。
「……ううっ、チクショウ。俺をこんところに置いていきやがって……」
「おじいさん、人間の生き残りは僕もいますから。たまにはここにきますから。元気出して下さい!」
「お前、結構いいやつだな……。うん、なんだ。とっておきの部品を売ってやるぞ!」
老人は泣き止み、店の裏側にある巨大な倉庫に晴信を案内したのだった。
晴信はディーに不思議に思っていることを聞いた。
なぜなら人間は戦争で絶滅したと聞くが、その戦争の跡がほとんど見られないからだった。
「えっと、戦乱で滅びたと聞きますが、確かにその痕跡は少ないですよね……」
「そうなんだよ。本当に戦乱で滅びたのかなぁ? ひょっとして病気だったとか?」
「その可能性もないとはいえません。でも、晴信さまを除いて人間族が絶滅したのは事実です」
「そっかぁ……」
晴信は不思議に思った。
もしかしたら人間たちはどこかで生きているのではないかと、そして、そこから自分たちを見ているのではないかと感じていた……。
☆★☆★☆
晴信たちが温泉掘削で楽しんでいる時、ゲルマー王国とスラー帝国は、各地で激戦を繰り広げていた。
それぞれの星系の中間地帯にあるエネルギー資源地帯アダマンタイト。
これらの小惑星群を手にした方が、この膨大なエネルギーを手にすることが出来る。
その遡源地帯の価値は、まさに相手との国力差を圧倒的にすることが可能なのだ……。
つまり、このアダマンタイト小惑星帯を手にした方が、相手の国家を蹂躙できる。
逆に言えば、勝ち得なければ蹂躙される。
しかし、幸か不幸か、両国の実力派拮抗していた。
よって正面決戦しても引き分けになるのが常だった。
そのため、獣人の国ゲルマーと虫人の国スラーは、正面戦線以外の戦線地域を拡大。
戦線の両翼を鶴の翼のように広げ、相手側の後ろに回り込もうと、周辺星系を探索、攻略した。
周辺星系は宇宙に出ることのままならない低文明地域もあったが、両勢力は遠慮なしに征服し蹂躙。
その文明を破壊し、自分たちの文明やしきたりを押し付けた。
そして彼らを従属星系として取り込みつつ、急速に勢力下に加えていった。
☆★☆★☆
「降下用意!」
『了解!』
晴信はディーの部品の購入のために、ゲルマー王国の鉱山惑星を訪れていた。
鉱山惑星とは、古の超文明を誇った人間たちの遺産が掘り起こせるところであり、ゲルマー王国の技術的な生産を支えている地域であった。
「晴信様ですね、どうぞ!」
晴信とディーは鉱山惑星の検疫をパス。
技術掘削鉱区へと向かった。
この惑星は赤茶けており、居住区画は半円状のドームに覆われていた。
ドームの外は常に砂嵐であり、時折、強烈な硫酸の雨が降っていた。
まさに死の惑星であり、技術遺産がなければ何の価値もないような星であった。
「だれだねアンタ?」
晴信は部品市場で、とある部品屋に話しかけられる。
この部品屋、老齢なのもあって、体のほとんどが機械であった。
顔も機械で、目の部分だけがようやっと生命体であることを告げていた。
「飯富晴信と言います。部品の掘り出し物を見に来ました」
「そうかい、そうかい……。じゃあこっちにきな!」
「はい」
晴信は老人に招かれ、市場のはずれにある彼の店に入った。
店の中は薄暗く、老人の眼が怪しく光る。
「……あんた、その形は人間だな!?」
老人が振り向きざまに言い放つ。
「そうです。人間です」
晴信は正直に答えた。
「そうだろう、そうだろう……」
老人はそう呟きながらに振り返り、顔の機械部分を外した。
そこには焼けただれた顔があったが、その顔はゲルマー王国に多い獣人族のモノではなく、人間にちかい顔立ちだった。
「俺様はジャブロー。人間の生き残りだ!」
「……ぇ!?」
晴信とディーは驚く。
「まさか、人間の生き残りが自分達だけだとでも思ったか!? 確かに人間はほぼこの世界にいなくなった。だが俺様みたいな欠陥モノはあちらの世界には行けなかったのだよ!」
「あちらの世界!?」
晴信は慌てて問う。
「お前、やっぱり知らないんだな。人間の殆どは、次元の壁を越えて、この宇宙空間の外側に移住したんだよ! お前は寝てたかでおいてかれたんじゃないか? ははは……」
老人は快活に笑う。
「宇宙空間の外側ってなんですか?」
ビックバン以来、宇宙空間は広がり続けている。
しかし、その外側の世界については、晴信は聞いたことが無かったのだ……。
「宇宙の外側はな、精神世界とも言われていてな。質量を伴う物質はそこへいけないのさ……」
老人の言うことに晴信は頭がこんがらがる。
「それは一体どういうことです?」
老人はため息交じりに話す。
「つまり、人間たちは体を捨てた。意識と知識を宇宙の外側へ飛ばし、その体を放棄したんだよ。つまりこちらの世界では死だ……」
「なんでそんなことを?」
「わからんな……。俺様はそのころ難病にかかっていてな。みんなにおいてかれちまったんだな……」
老人は段々と声を小さくし、そして泣き出した……。
「……ううっ、チクショウ。俺をこんところに置いていきやがって……」
「おじいさん、人間の生き残りは僕もいますから。たまにはここにきますから。元気出して下さい!」
「お前、結構いいやつだな……。うん、なんだ。とっておきの部品を売ってやるぞ!」
老人は泣き止み、店の裏側にある巨大な倉庫に晴信を案内したのだった。
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