異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪

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第十三話……外交無き宇宙海獣

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「凄い船ですね!」

「いやいや」

 ゲルマー王国装甲艦籍の【タテナシ】はガイアス共和国の宇宙へ入港。
 その見慣れない最新鋭の装備に、現地では称賛を受けた。

 街並みをみるに、ガイアス共和国はさほど科学文明が進んでいるという風はなかった。
 やっとのことで宇宙に出て来られているといった感じの科学力である。

 化石燃料で走る自動車も多く、発電にも石炭を使っており、晴信が元居た地球と同じような感じであった。


「……さて、こちらにお越しになった理由は何ですかな?」

 晴信が宇宙港へ降り立つと、外交担当の要員と対面する。

「いや、僕は未知の星系を調査しに来ただけで、外交権はないんです」

「そうですか……」

 相手の方の方々は残念そうだ。
 確かに友好親善の使者とかだと歓迎しやすいが、ただの調査団だと歓迎しにくい。
 残念ながら、晴信には外交権が付与されてはいなかったのだ。

「……まぁ、立ち話もなんですし、こちらへどうぞ!」

 結局、晴信とディーはガイアス共和国の歓迎式典に出席。
 ご馳走沢山の歓迎を受けた。

 小難しい外交案件は、あとから来るアルキメデス提督に丸投げし、晴信は歓迎式典を純粋に楽しんだのであった。



☆★☆★☆

――歓待の宴時分。

 突如、歓迎式典にてサイレンが鳴り響く。
 皆慌ててテーブルの下に逃げ込んだ。

「地震か何かですか?」

 晴信もテーブルの下に逃げ込みながらに尋ねる。

「……いえ、宇宙海獣なんです」

「怪獣!?」

「そうなんです。時々彗星のような軌道でやってきては、我が星を荒らすのです」

「退治しないんですか?」

「我がガイアス共和国の科学力では無理なんですよ!」

「じゃあ僕がやってみます!」

 晴信はすっくと立ちあがり、ディーと共に宇宙港に停泊している【タテナシ】の元へと急いだ。
 彼には特に宇宙海獣を倒す自信があるわけでは無かった。
 ……が、しかし、パーティー会場に少し飽きたのもあっての出撃であったのだ。



☆★☆★☆

「エンジン始動!」

『機関へエネルギー注入開始!』

「離陸開始!」

『OK! 発進します!』

 晴信は手早く艦のAIに命令。
 大気圏外への出航を開始した。

 雲をしたから突き抜けたら、すぐに薄暗くなり大気がないことを感じる。
 眼下には美しい緑の大地だ。
 成層圏を飛び出したところ、漆黒の宇宙に輝く星々に混ざって、件の宇宙海獣は姿を現した。


「おおきいなぁ!」

 体長6kmにもなる宇宙海獣の姿に晴信が驚く。

 宇宙海獣はアンモナイトのような外見であった。
 分厚い貝殻から、波打つように巨大な触手生えていた。


「話によると、あれでも子供らしいですよ!」

 ディーはガイアス共和国から得られたデータを読み解く。

「えーっ!? そうなの」

 晴信は少し後悔した。
 そんなに手間がかかる討伐だとは予想していなかったからだ。

 ここでも、彼の防御主体の指令が飛ぶ。
 なにがなんでもやられたくないのが、晴信の性格なのである。

「全防御シールド展開! 出力最大!」

『バリア展開完了。防御隔壁閉鎖します!』

 数ある武器の中で、晴信が宇宙海獣退治に使用したのは衝角であった。
 つまりは【タテナシ】の艦首についている細長い極振動カッターである。

 使用理由としてはとくになく、一度はつかってみたい武器ということであった。

「全速前進! 衝角を叩きつけろ!」

 大きな衝撃波と共に、【タテナシ】の衝角は宇宙海獣の殻を叩き割る。
 そして、極振動によってもたらされた刃の摩擦力に寄って、宇宙海獣は切り裂かれた。

 更には大口径レーザーを複数叩きつけ、コア部分の破壊を試みる。


「ミサイル発射!」

『了解!』

 ……が、宇宙海獣も粘る。
 大きな触手をつかって、二度三度と【タテナシ】の艦体を鋭く殴打した。

 この時光ったのは、晴信の過剰防衛構想。
 宇宙海獣の攻撃は、【タテナシ】の最外殻バリアさえも破れない。

 宇宙海獣の反撃を数度いなしたところで、【タテナシ】は反撃に転じる。
 極振動カッターで宇宙海獣のコアを突き刺し、さらには高電圧を流し込み、爆散させるに至った。

 ……勝負は決まった。


『敵、生命反応停止しました!』

「よし!」

 宇宙海獣の断末魔の叫びと共に、大量の緑色の体液が【タテナシ】に浴びせかけられた。

「やりましたね!」

「うん!」

 ディーの言葉に返事をする晴信。

 彼はこの後、地上に帰還。
 ガイアス共和国の人たちに大変感謝された。


「あんた凄いな!」

「遠くの星から来た英雄様だな!」

「また、頼むぜ!」

 口々に賛辞を浴びせるガイアス共和国の人々。
 晴信は未開の惑星で、ちょっとした英雄になった気分であった。

 晴信は調子に乗って、ガイアス共和国のTVにも少し出演。
 しかし、緊張してろくに喋れなかった。



☆★☆★☆

――三日後。

「機関始動!」

「ワープドライブ用意!」

『次元跳躍準備良し!』


 晴信はガイアス共和国からの調査書を携え、ゲルマー王国領へと帰投。
 正式に任務完了としたのだった。

 また、ガイアス共和国の調査に成功ということで、晴信はゲルマー王国からは、多額の報奨金と中佐の地位を授けられたのだった。
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