異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪

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第十二話……ワープドライブでの旅路

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 調査部隊入りを決めた晴信。
 しかし準惑星ディーハウスに帰る前に、行きたいところがあった。

 それはゲルマー王国主星にある証券取引所。
 晴信はそこへディーを連れて立ち寄った。


「お兄さん、良い株ありますよ!」

 取引所のある通りに近づくと、怪しげなセールスマンがいっぱいいた。
 裏路地から表通りまで、独特の熱気と喧騒が凄い。


「肘川牧場の株ありますか?」

「ありますよ!」

 晴信は人工たんぱく質製ではない肘川牧場の牛肉が好きだったのだ。
 彼は今まで修理で売り上げたお金から出金。
 牧場の株を大量に買ったのだった。


「ハルノブ、そんなに買ってどうするの?」

 不思議そうな顔をするディー。

「牛肉愛だよ!」

 ディーにはよくわからない返事をする晴信であった。



☆★☆★☆

――三日後。
 ゲルマー王国装甲艦籍【タテナシ】は集合宙域に到着。
 軽空母【アルテミス】にて、アルキメデス中将から歓待の言葉を得た。


「再び君と作戦を共にできてうれしいよ」

「いえいえ、こちらこそ!」

 晴信は、いわゆるおばあちゃん子だった。
 年寄り好きする青年だと思ってくれていい感じだ。
 それゆえか、彼はなんとなくアルキメデスに好感を持たれたらしかった。


「……では予定地域にワープしよう!」

「かしこまりました!」

 晴信はアルキメデス中将と別れ、装甲艦【タテナシ】の艦橋に戻る。

 今回は近隣の星系と言ってもゆうに100光年を超える大きな旅であった。
 つまりは光の速度で100年かかる道のりだ。

 もし航路を間違えると、食料やエネルギーはつき、二度とは生きて帰ってこられないであろう。
 そこで、この世界では光の速度を超える航法【ワープドライブ】を用いる。
 つまり次元跳躍である。

 それは、3次元空間を歪曲させ、離れた世界へ一瞬でたどり着く方法だ。
 もはや魔法と言ってもいいテクノロジーといえる。

 ……かといって、ゲームの魔法のように簡単には成立せず、到着目標の質量計算から予定航路までが、何時間もかけて量子電算機で細かく計算されていった。


『測定完了! ワープドライブ用意よし!』
『エネルギー充填完了!』

「よし! 次元跳躍開始!」

 こうして、【アルテミス】と【タテナシ】はワープドライブを連続してを敢行。
 未確認文明生命体のいる星系外縁部へと、一路跳躍したのだった。



☆★☆★☆

――星系外縁部。
 それはどの星系も同じく、小さな岩石や薄いガスが漂う空間である。

 ワープアウトした【タテナシ】は無事に【アルテミス】と合流。
 周辺の情報探査を開始した。


「調査開始!」

『調査アンテナ展開! 電磁波解析はじめます!』

 ナノ複合材で編み込まれたアンテナが開き、微量な電磁波を捉える。

 こうして丹念な調査で2時間を経過した頃。
 大体のデータが集まった。


「ハルノブ、この星系は惑星が11個。そのうち、有人と思われる惑星は一個だけだったよ!」

「ありがとう!」

 晴信はディーから報告を受ける。
 この有人という表現は、人間が住んでいるという意味ではなく、文明生命体が住んでいるという意味である。


『軽空母アルテミスより通信。軽度の故障により、任務を貴官に委ねる! とのことです!』

「了解!」

 旧型の軽空母【アルテミス】は次元跳躍の衝撃で故障。
 造られてからの年月がそうさせたらしかった。


「星系に進出開始!」

『了解!』

 晴信たちは、アルキメデス中将を後方の連絡係として置き、星系中心部へと進出を開始した。

 ガス状天体や岩石状天体をすり抜け、有人惑星を目指す。
 ときには氷の惑星に見とれ、または怪しげなガス雲に包まれ、ときには恒星の限りない眩しさに眩暈をも覚えた。



☆★☆★☆

『未確認飛行物体接近!』

 装甲艦【タテナシ】の音声AIが警告音を鳴らす。


『未確認言語通信、受領!』

「解析急げ!」

 晴信の命令一下、【タテナシ】の量子電算機は、未確認の言語の解読に全力を挙げる。
 電算機の放熱量が過大すぎて、艦内の温度が上昇するほどであった。


『解析成功!』

 ほどなく解析に成功。
 未知の文明生命体からの発信を読み取り、交信を可能とした。


「こちらは、ゲルマー王国装甲艦タテナシ。交信を嬉しく思う!」

『こちらはガイアス共和国。貴官との会合を歓迎する!』

 音声通話はつつがなく行われ、晴信とディーにも安堵の色が滲む。
 続いて、映像を交えての更新となったときに、軽い衝撃が走った……。


「……!?」

 ……ケイ素生命体!?
 相手の肌はクリスタルのような形状であった。

 それは我々のような有機物による生命体ではなかった。
 話には聞いていたが、初めてのことで晴信はビックリした。

 それは向こうも同じことで、有機物の生命体との会合は初めてだったようだ。


『あはは、驚かせたようだな。貴官を歓迎することに変わりはないぞ!』

「有難うございます!」

 ケイ素生命体であるガイアス人たちは、晴信の乗る【タテナシ】を歓迎。

 自らの母星に誘導。
 直陸を支援してくれたのだった。


「降下用意! 耐熱シャッター閉めろ!」

『了解!』

 装甲艦【タテナシ】は、誘導された惑星大気圏に突入。
 艦体を赤熱させながら降下していったのだった。
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