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第六話……晴信の修理工場

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「……うーん」

「……あ、おきましたか!? 無事でよかったです!」

 ディーの看病のもと、晴信が気付いた場所は準惑星ディーハウスのベッドの上だった。
 どうやらディーが連れ帰ってくれたらしい。

「あの男は?」

「すいません。取り逃がしました」

 どうやら作った宇宙船は奪われた模様。
 晴信はベッドにて上半身を起こし、ディーに向き直る。

「どうしよう?」

 と晴信が言うも、

「前金沢山もらっちゃいましたしね……」

 ディーは以前に晴信が受け取った沢山の金貨を見せる。

「たしかにお金を受け取ったのに、詐欺というのも変だね」

「……ですよね」

 結局、晴信たちは眠らされたのを公にせず、気にしないでおくことにしたのだった。


――それから数日。
 晴信の体力が回復するまで、二人はのんびりと過ごしたのだった。



☆★☆★☆

「あのー」

 再び晴信は、宇宙ステーション【タイタン】の造船所を訪れていた。

「なんだ? 何の用だ?」

「えっと、ですね……」

 晴信はディーの修理ができないなら、ディーの為に良い部品は無いものかと尋ねたのだった。

「あんた、それどころじゃないよ!」

「ぇ?」

「戦争だよ、戦争。あんた知らないのか?」

 造船所の工員に新聞を渡され、目を丸くする晴信とディー。
 そこには、ゲルマー王国とスラー帝国が開戦したと書かれていた。

「僕たちの位置はどこなの?」

 ディーに尋ねる晴信。

「私たちはゲルマー王国領ですね」

「じゃあ、戦争になるんじゃん!?」

「そうに決まってんだろ! だから忙しいんだい!」

 素っ頓狂な驚きをする晴信から、新聞を取り上げる工員。
 造船所はゲルマー王国からの新造船の依頼で、てんてこ舞いな忙しさとなっていたのだった。


「あの~、ウチの船を修理してもらえませんか?」

 小太りな獣人が、造船所の工員に話しかける。

「お前商人だろ!? いまは王宮からの依頼で手一杯だ。他所を当たってくんな!」

「ぇー!」

 ションボリとする小太りの獣人。
 今は王宮からの新造艦の依頼が一杯で、この商人の宇宙船は修理してもらえそうにない様子だった。

「あの、良ければ僕が直しましょうか?」

 晴信はこの商人に話しかけた。

「ええ? いいんですか?」

「……晴信、大丈夫?」

 ディーが用心しろと伝えて来る。

 今度の晴信は、相手の惑星間ギルドのカード等を確認。
 素性がしっかりとした商人としたことを確認したのちに、正式に修理を受けることを決めたのだった。

 この商人の宇宙船は、ベータ号で牽引。
 慎重に誘導され、準惑星ディーハウスの工場へと格納されたのだった。



☆★☆★☆

――二日後。
 かの商人の宇宙船は奇麗に修理された。

「……あ、ありがとうございました。おかげで助かりました」

「いえいえ、とんでもない!」

「これはお代です」

「こんなに貰っていいのですか?」

 晴信の代わりにお代の金額に驚くディー。
 ……そう、晴信はイマイチこの世界の貨幣価値についてわかっていない。

「構いませんよ。それより他の商売仲間に、この工場を紹介しても構いませんか?」

「いいですよ!」

 と、満面の笑顔の晴信。
 得になるかどうかはさておき、晴信は人に感謝されるのが好きだった。

 彼はもとの世界では、人の為になれるほどの力は持ち得なかった。
 この世界に来て、それが出来るなら望外の幸せであった。

 それからというもの、宇宙ステーション【タイタン】で、身元照合可能な商人たちの宇宙船の修理が、どっと晴信のところに持ち込まれた。


「毎度あり!」

「ありがとう!」

 大小さまざまな宇宙船がドックを賑わい、修理が次々に行われる。
 修理材を造り出すため、採掘と精錬も同時に盛んにおこなわれた。

 晴信はこの修理業を介して、この世界での知己を少しずつ増やしていったのだった。



☆★☆★☆

 晴信とディーが修理業を営んでいるこの時期。
 ゲルマー王国とスラー帝国の戦いは激化。
 多くの星系や惑星を巻き込み、その戦火を拡大させていった。

 その分、軍艦の修理などで、宇宙ステーション【タイタン】の造船所は手一杯になり、普通の民間船の修理は、ディーハウス等に押し寄せることとなっていったのだった。


 戦いはその後、スラー帝国軍が優勢に事を運んだ。

 そのため、ゲルマー王国軍は地方の警備部隊までもを前線に投入。
 その分、ゲルマー王国領の治安維持力は低下し、宇宙海賊の出没数は激増していった。


――そんな中。
 修理船引き渡しの際に、宇宙ステーションを訪れていた晴信とディー。
 彼等に惑星間ギルド職員が話しかけてきた。

「あの船立派だね。君のかな?」

「ええ、僕たちの宇宙船ですよ!」

 晴信はギルド職員の質問に応え、星間ギルドのカードを提示した。
 このカードはこの辺りの宙域での身分証明書であるとともに、それを担保する星間ギルドへの協力義務もあった。

「実はハルノブさん、貴方に依頼したいことがあるのです」

 ギルド職員はカードを晴信に返しつつ、言葉をつづけた。

「依頼?」

「ええ、この辺りに宇宙海賊が出没しているのはご存知だと思います。彼らを退治して欲しいのです……」
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