SA・ピエンス・ブタ史 ~第八惑星創造戦記~

黒鯛の刺身♪

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~南方編~

第九十七話……激突! ハンスロルの戦い【前編】

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今日の天気は曇り。

トンボが飛ぶ。木漏れ日が暑い。









「との! 家宰どのがお呼びですぞ」



「今行くブヒ」



 アーデルハイトに言われ、釣り竿を片付けたブタはニャッポ村の会議室へ出向くことになった。





 ブタはニャッポ村までの道を、牛の【月影】のひく荷台に揺られのんびりと進む。荷台から見る景色には蒼く光る稲が奇麗に風に揺れていた。







――ニャッポ村の会議室。



 ガヤガヤとうるさく、中には葡萄酒をあおる者までいる始末。





「静かにせんか!!」



 議長である老騎士が度々キレる。そもそもブタ領の幹部たちは、だいたいがモンスターかならず者たちである。会議場は何時も賑やかだった。





「――では、王国領ハンスロルへの援軍を賛成多数により可決致します」



 特に反対がないので、いつも次々と案件が通る。皆は議題よりも賭け事に夢中だ。

 ボルドーにより援軍を要請された王都は、とりあえずハンスロルに近いブタ達に先に援軍に行ってくれとのことだった。

 断れる案件でもなく、派兵が決まり、部隊案が揃う。





【第一陣】指揮官 アイスマン・ブルー



 第一部隊・ウサ 300名・混成種族の低級魔法使い。

 第二部隊・ポコ 25名・サイクロプス……3~4m級。

 第三部隊・アーデルハイト 15名・ブタの警護……ここにグスタフも含まれる。



【第二陣】指揮官 ザムエル



 第一部隊・ザムエル直卒 1000名・オーク族。

 第二部隊・ヴェロヴェマ 1000名・スケルトン族。



【第三陣】指揮官 モロゾフ



 第一部隊・モロゾフ直卒 1000名・トリグラフ帝国からの移民……普段は農民など。

 第二部隊・ダース    1000名・トリグラフ帝国からの移民……普段は農民など。





「で……、今回の総大将はリーリヤ殿です」



Σ( ̄□ ̄|||) ぇ?



「では、今回拙者はリーリヤの部下ブヒ?」



 心配そうに老騎士に聞くブタだったが、



「そうです!!」



(´・ω・`) ち~ん。





 アガートラムが既に北へ出陣しており、老騎士とンホール司教が留守番と考えると妥当な編成だった。

 しかし幼児であるリーリヤが総大将という点だけは、やはり皆が騒々しくなったのだが、



「まっ、いっか」



 とブタが了承してしまったので不問になった。





 ブタはンホール港の自宅に帰り、飼い犬である【ノンビーリ】をご近所さんへ預けるなど、あわただしく準備をした。







「しんぱ~ちゅ!」



 それから二日後、総大将リーリヤの元気な掛け声の下、ブタ達は南進していった。







――王国領ハンスロル。

 アーベルムの中央政府より議長代理のヘンシェル伯爵という者が、ボルドー討伐の為に兵士一万名を率いて北上してきた。よってローレンスたちアーベルム北部諸侯はそれに合流し指揮下にはいる。その後、ボルドーが立て籠るハンスロルの城を包囲することになった。





「はやく攻めたてんか!!」



 栄華を極める商業都市の伯爵にふさわしく豪華な宝石をちりばめた服を纏うヘンシェルが、ローレンスたちを叱責していた。



「しかし、相手は堀も深くしておりますので……」





 現場指揮官の欠員が多いボルドーは、野戦を諦め全力で城を強化していた。素人が一見しても夥しい数の柵が並び、無理に攻めるのは大変そうだった。





「かまわん!! どうせ先頭に立つのはみすぼらしい農兵だろう? 早く兵を進めぬか!!」



 ヘンシェル伯爵はアーベルムの国家元首たる最高議長リエンツォの代理であった。ローレンスたちが逆らえる相手ではないのだが、ヘンシェルの部隊はローレンスたちの部隊の遥か後ろの安全な位置に布陣しており戦闘に参加する気配はなかった。





「せめて、ヘンシェル殿の部隊も一緒に城攻めしては頂けまいか?」



 ローレンスはそう言い、食い下がったのだが、



「下らぬことを申すな。ここはお前たちの地元だろう? 早く持ち場へ帰って攻撃せよ!! ひょっとして逆らうのか?」



「い……いえ、そういう訳では」



 きつそうな性格のヘンシェル伯爵にすごまれたローレンスたちは、トボトボと自陣に帰っていった。





「無理攻めはお味方にも被害がでませぬか?」



 ローレンスが帰った後、ヘンシェルの家臣がそう尋ねると、



「ふん、やつらにも摩耗してもらわねばの。あやつ等は状況次第でまた裏切るであろうしの」



 ヘンシェルは苦虫を噛み潰したようにそうつぶやいた。





 しかしその後、兵を失いたくないローレンス達のやる気のない城攻めが続く。さりとてヘンシェルも堅城の様相を見せる城へ近づきたくもなく、全く進展がないまま10日が過ぎた。







「敵の援軍が参りました! 兵数およそ4500」



 駆けこんできた伝令が、幕舎の中で寛ぐヘンシェルに告げた。敵の援軍とはブタ達のことであった。



「ふふふ、小賢しい。そのような寡兵で何ができようものか!?」







……この時点で。



【ハリコフ王国側】



ボルドー上級伯爵    ……約3000名(城に籠城中)

アイスマン辺境蛮族子爵 ……約4500名



【アーベルム辺境自治都市政府側】



ヘンシェル伯爵     ……約一万名

ローレンス辺境伯爵   ……約8000名 (城を包囲中)





 ヘンシェルは難しい城攻めをローレンス達に任せ、自分たちは半数以下のブタ達を野戦で撃退することにした。



 その後、ブタとヘンシェルは近くを流れる川を挟んで対陣した。

 どちらも川を渡るほうが不利を悟っており、睨みあいになった。





 しばらくして、ブタ側から小部隊が川の手間まで前進してきた。

 そこから口に大きな漏斗を手にして騒ぐ男がいた。モロゾフである。



「我々は、正統なアーベルム国家元首リーリヤ様を擁する軍である。リーリヤ様の後ろ立てはトリグラフ帝国の先代皇帝トリグラフ2世である。その証拠にトリグラフ帝国の子爵であるブルー・アイスマン殿もご臨席である!!」



「は……はじめまして」



 ブタがゆっくり歩み出て、手を振り挨拶をする。

 彼にとっては学校の学級会以来の恥ずかしさだったが、



「あの小賢しいブタを撃て!」



「ブヒ~!?」



 対岸から矢が飛んできて、ブタは逃げることになったが、リーリヤがアーベルムの前国家主席であるメーメロ議長の娘だということはアーベルムの貴族なら誰でも知っていた。

 現国家主席のリエンツォは、クーデターによる首班就任のため正統性が弱かった。意外な場面でそれを突かれた形となったヘンシェル伯爵は対応を迫られる形となったのである。

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