SA・ピエンス・ブタ史 ~第八惑星創造戦記~

黒鯛の刺身♪

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~南方編~

第九十六話……朗らかなオトコ

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今日の天気は晴れ。

澄み渡る碧。渡り鳥も気持ちよさそうだ。









『ハリコフ王国の王都より援軍が来た時に、私に味方してくれる方は是非返事が欲しい。』



――ハリコフ王国上級伯爵・ボルドー





 アーベルム港湾自治都市からかなり北、のんびりとした麦畑の中に風光明媚な趣も備えるアイザック城。この北部地域がハリコフ王国に割譲される前には、アーベルム北部四郡の最重要拠点であったローレンス辺境伯爵の居城である。





 その城の中で、ローレンス辺境伯爵は彼の近臣にまで届けられた書状を読み、ため息をついていた。



「ふぅ……皆の衆、どうしよう?」



「……」

「……」



 書状の意図は内密にローレンスを裏切れという、いわゆる『仲たがい』を狙ったものだった。しかし今当事者であるローレンスの前に、ボルドーより誘いを受けた在地領主が仲良く勢ぞろいしていた。





「どうしようかな?」



「やはりハリコフ王国は侮れませんぞ!」



「しかしリエンツォ議長から、メンデム将軍の所持していた領地を頂けるというお話も捨てがたいですぞ!?」



「いやいや、我々だけで戦って、また先日のように夜襲を受けて負けるのではありませんか?」





 どうしようかとオロオロ悩むローレンスの姿をよそに、在地領主たちが各自に意見を出していた。



 ローレンス辺境伯爵は若いが、領民想いの良い領主で通っていた。さらに彼は辺境の大領主でありながら、近隣の小領主の意見もよく聞く人である。よって、アーベルム北部4郡の盟主格であった。



 ハリコフ王国の絶大なる力を背景にボルドー上級伯爵が誘ってきた際には、『ハリコフ王国と戦うのは反対』との小領主たちの意見により、ボルドーに従いアーベルムに反旗を翻した。



 そしてハリコフ国王が崩御し、アーベルムの現在の国家元首であるリエンツォ新議長に『メンデム将軍の領地をあげるので……』との誘いを受けたときは、ボルドーを裏切って兵を挙げたのである。このときも、周りの小領主がこぞって『その条件なら是非アーベルムに付きましょう』と言ってきたからだった。





「う~む、どうしようか?」

「どういたしますかな?」

「いやいや、この魚料理は一品」



 この日のローレンスは周辺領主たちと、仲良く悩みながら夕食をとった。

 一見地域のリーダーとしては優柔不断にも見えるが、そもそもアーベルムという国家自体が各地の貴族による議会制であるため、この方式は彼らにとってあながち間違いでもない。それよりもローレンスの人の好さは、結果的にボルドーが仕掛ける離間の策を上手に跳ねのけていたのである。









――同じ日、お昼のブタ領。





――スパッ!



 海面に浮かぶウキが勢いよく沈む。



……『1』



……『2』



……『3』



――ビシッ!!





「あはは……また某は餌をとられてしまいましたな」



……(´・ω・`) 遅いよ。



 ウキが沈んでゆっくり4拍空けてから、気が付いたように釣り竿をたてるグスタフ。どんくさいブタから見てもかなり鈍くさい男であった。



「おっちゃん、遅いポコ!」

「おっちゃん、頑張れウサ!」



「まかせとけ!」



 最近は『おっちゃん』と親しみをこめて呼ばれるグスタフ。

 ブタが少し聞いたところでは、地球の会社では全然成績が上がらずクビになり、同僚からイジメられ、好きな女性からもソッポを向かれたとかの辛い思い出話ばかりだった。

 たしかに、ブタから見ても仕事が出来そうな男には見えない。

 世知辛い世の中を渡るのには不向きだろう。



 しかし今の彼はブタの警護兵に就職すると、毎日ブタ達と楽しく釣りをし、人見知りのリーリヤも懐く存在になっていた。

 ひょっとすると彼の最大の武器は、人一倍鈍くさいながらも人一倍朗らかな性格だったのかもしれない。







――翌日、ブタの執務室において。



 領主の執務室とは名ばかりで、部屋には何もない。

 老騎士に家具を揃えておくよう言われていたが、ブタが見事にサボっていたのである。





「ねぇねぇ、机とかの家具を買ってきて欲しいブヒ!」



「わかりました! 某に任せてくだされ!」



 ブタは銀貨の入った袋をグスタフに渡し、今日も釣りに行く魂胆である。



「じゃあ頼んだブヒ!」



「お任せあれ!」



 ブタはグスタフに見送られ、外に遊びに出た。

 このころのンホール港は漁業で毎日が盛況であり、町の外れの練兵場ではモロゾフが兵士の訓練を忙しなく行っていた。またその近くの小屋では、ダースが職人を集め海獣を材料にした新しい弓などを作っていた。





「ただいまブヒ~♪」



 その日の夕方にブタが釣りから家に帰ると、古めかしい机や椅子などが部屋に運び込まれていた。



「どうですかな?」



 ブタに対して少し胸を張るグスタフであったが、そこまで良いといえる品では無かった。少し残念な面持ちのブタが席に着くと、



「これがお釣りになります」



――ドサッ。

 と、銀貨の入った袋が机におかれた。

 中身を確かめるブタだったが、



「ほとんどお金が減ってないブヒ!?」



「いやいや、丁度安い中古品が沢山売っておりましてな」



 グスタフはそういった後、ブタの傍により。



「残りのお金は、殿のお小遣いにしてしまいましょう!」



Σ( ̄□ ̄|||) ナント!?



「おっちゃん、とてに頼りになるブヒ!!」





……なんだか、ちょっと悪いこともブタに教えるグスタフおじさんでした。

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