SA・ピエンス・ブタ史 ~第八惑星創造戦記~

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
上 下
73 / 100
~南方編~

第七十三話……能臣の内実

しおりを挟む




今日の天気は雨。
最近の暖かい陽気も、少し水を差された感じ。




――
 メンデム将軍はアーベルムの政庁にて不機嫌な面持ちでライン・シュコーの話を聞いていた。


「……相分かった、もう、下がれ……」

 メンデム将軍は姪の嫁ぎ先の家臣を下がらせると、大きな窓から恨めしそうに海を眺めた。まだ冬の面影もあり、海は灰色の体をなしていた。




――

「ブヒブヒブヒ~♪」

 ブタとポコは老騎士に言われた通りにモロゾフの家の前に来ていた。

 モロゾフは体力が回復すると、ブタ領の外れの小高い丘に小さな借家を借り、そこに住んでいた。庭には木の実がなった大きな木が目立つ。


「もしもしブヒ~♪」

 ブタとポコが呼びかけるも返事はない。

 裏手に周りこむと突然に窓が開き、モロゾフという老人に睨みつけられた。


「なんのようだ? 小僧!!」
「え……、え~っと、お元気ですか?」

「見ての通り元気になった、世話になったな、小僧」
「よかったブヒィ~♪」

「では、さらばだ!!」

 ビシッと雨戸が閉まる。


 ……(´・ω・`)

「気難しいおじいさんポコね」
「ブヒィ……」

 ブタとポコがヨチヨチあるきで帰路につこうとすると、モロゾフのお付きと思われる男にでくわす。


「これはこれは、ご領主様こんにちは」

 男は背中に背負った籠を下ろし帽子を取ってあいさつした。

「こんにちはブヒ!」
「こんにちはポコ~」

「ご領主さまがこんなところまで何用で?」

 男はなぜブタが来たか不思議に思ったようだった。


「実はウチの爺やがモロゾフさんをスカウトしろって言ってるブヒ」
「ほほう……」

 男はなるほどという顔つきにかわる。

「でね、追い払われたブヒ」
「そうポコ」

「しかし、それは何と言いますか、ウチの旦那様は偏屈ですからな」

 男はやれやれといった感じの笑みを浮かべた。


「ブヒィ」
「ポコ~」

 二匹は男に別れを告げ、藁ぶき屋根の屋敷にもどった。


――
 ブタは帰宅するとポコと仲良く手を洗い、老騎士の執務室に入った。ここは当初はブタの私邸だったはずなのであるが、業務効率の為に半分公邸化してきている。


「失礼しますブヒ~♪」

 老騎士はどうやらブタを待っていたようであった。
 ブタちょこんと丸椅子に着席すると、アーベルムより急ぎ駆け戻ったライン・シュコーが報告をはじめた。


――
 報告が長引き、ブタがうとうとし始めると、


「ボルドー伯爵の領土では、逆らうものは皆地下牢獄行きだと!?」

 老騎士が声を荒げると、ブタははっと起きた。


「はい、そのようです」

 女アサシンが重ねて肯定する。


「なんだかひどいブヒ!!」
「あはは、殿、我ら貴族に酷いとか汚いとか言っている暇なぞありませぬぞ」

 老騎士は快活に笑ったが、困惑しているブタの表情を見て、なんだか温かい気分になった。



「皆様、夕餉の準備が整いました」

 女官の報告を聞くや否や、

「某はこれにて御免」

 と、老騎士は逃げるようにニャッポ村へ帰還していった。


 何を隠そう、リーリヤとウサが毎日エビフライを作るのだ。
 7日連続朝昼晩21回目。もう流石に美味しくない。


 テーブルに着いたブタは、狡賢くエビフライ地獄から逃げ去った老騎士の言葉を思い出す。

 『あはは、殿、我ら貴族に酷いとか汚いとか言っている暇なぞありませぬぞ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...