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~友愛編~
第六十八話……ブタの住居♪
しおりを挟む今日の天気はくもり。
私の気分が晴れないだけかしら。
――
ブタがちょこちょこと、茶色い髪のお姉さんの処へ行っている情報をキャッチしたリーリヤ……ではなくて、リーリヤの側仕えの者たちです。
「奥方様! 領主さまがお喜びになるので、是非お料理をなさいませ」
「おりょうりとは、しもじものものがするものではないの?」
「え……え~っと」
側仕えの者たちは、お互いに顔を見合わせます。
この側仕え達は、リーリヤの故郷である港湾自治都市アーベルムから送り込まれている女官たちで、何やらイロイロとありそうです……。
「お料理をすると、ブタさんたちが早く帰ってきますよ」
「やるーーー!!」
まだ4歳のリーリヤは恋敵がどうのと言う発想はない様です。
ですが、早く帰ってきて家で一緒に遊んでくれるのは楽しい様ですね。
実はブタさん達は結婚を機に、きちんとしたキッチンもあるお屋敷を新築しました。
なにしろ、奥方様のご実家からの金貨がモノを言ったようですね。
高額貨幣を領内で使うことに良い顔をしないへ―デルホッヘ爺さんですが。
「アーベルムに受注させましょう」
と、屋敷の受注業者をアーベルムの建築業者に限り、雇ってもらう大工さんはブタ領から雇ってもらうことに決めました。
きっとこれでアーベルムの建築技術がニャッポ村の大工さんに伝わりそうですね。
「領主さまのために頑張っぺか!?」
「んだんだ!」
新しい技術が学べるという触れ込みがあり、ブタ領辺境からも若者たちがドンドン参加していきました。
もちろん人間だけではなく、いろいろなモンスター達もやってきます。
「え、え~っと」
皆さんが張り切って造ってしまったので、アーベルム建築業者はお困りの様です。
なにしろ、設計図には煙突が一つの処を三つにしていたりと、大工のみなさんは大サービスをしてしまいました。
お陰で、木造やら何やらの混合三階建ての完成です。
……ちなみに、設計図を覗き込んだところ、総煉瓦造りの二階建てだったようです。
「すご~~い!!」
とりあえず、若い奥方様は喜んでくれました。
……が、
「こ……これはいったい!? おぬしら! それでも一流の建築業者か!?」
へーデルホッヘ爺さんは、その場から退散しようとする建築士さん達を、力づくで村役場まで連行していったようです。
たしかに、専門家でない私たちが見ても、屋根が部分部分藁ぶきだったりとか、かなりユニークな出来栄えです。
とても威厳のある領主さまのお屋敷にはみえませんね。
なにはともあれ、領民の皆さんの愛情がこもったお家が完成して、ブタさん達は引っ越ししました。
実はこのおうちは、ニャッポ村にはなく、ンホール港の河口沿いに建てられました。
最近はニャッポ村の便利な土地が移民の皆さんの影響で人気が出て高値になっていたのです。
……まぁ、それだけではなく、大好きな潮干狩りやら釣りに都合が良いこともあったんじゃないかと私は思ってますけどね。
ちなみにこのお屋敷は、ブタさんの趣味でどんどん要塞化されていきます。
河口から水を引いた堀やら土塀、柵やら井戸櫓、溜め井や簡易の船着き場まで作っていたようですね。
ブタさんとポコさんは旅人たちにもその防御システムを包み隠さず説明し、ヘーデルホッヘ爺さんは頭を抱えていたようです。
ちなみにこの要塞造りは、若奥様も大いに参加します。みんなと一緒に土いじりです。楽しそうですね。でも、側仕えの女官たちは大慌てですね。
「奥方様! 伯父様から頂いた絹のドレスが……ああ」
「ぢゃま~~~♪」
ついには、若奥様はスカートの裾を笑顔で破いて走り去っていきました。
ちなみにこのユニークなお屋敷の住人は、ブタさん、リーリヤさん、タヌキさん、ウサギさん、そしてンホール教騎士団騎士団長アーデルハイトさんとその部下の騎士団内最年長のおじいちゃんたち5名。
そのほか、アーベルムより来た若奥様の側仕え達。
で、最後に……、この日記を書いているナシャータ・ヘーデルホッヘ。
最近、リーリヤさまのお側をお暇になりまして超悔しいです。
……今は、ブタさんの秘書ですわ。今に見ていなさい!!
――第二章・完結――
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