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~友愛編~
第五十五話……ンホール港
しおりを挟む今日の天気は晴れ渡る青空。
気持ちイイね。
──ヨチヨチヨチ。
「ヨッコイショ」
ドス!!
ブタ領会議室に最も上座に10円ハゲが三つの貧相なブタが座る。
「ちょ、ちょっと待って、そこは君が座る席じゃないよ!」
港湾自治都市アーベルムの全権大使たるヘンデム将軍はブタを制止する。
なにしろ、ヘンデム将軍の知っているアイスマン辺境蛮族子爵は豪華な木製ブタ人形の方だ。
「あ、将軍。実は……」
ゴニョゴニョと老騎士は将軍に耳打ちする。将軍は青ざめ……。
「この度は、ご婚約の儀、誠に──」
「婚約!? なんのことブヒ!?」
今度は老騎士が青ざめる。まだブタに話辛く、話していなかったのだ。
「いや、そ……それよりも喫水の話ではなかったですかな?」
「お!? そうだった、そうだった」
喫水とは、水面に浮かんでいる船の一番下から水面までの垂直の距離のことである。とうぜん荷物を積んでいる船や、重い軍船だと、喫水はかなりのものとなる。
そのような船を停泊させる港は、水深をより深く掘り下げねばならなかった。
ブタ領が新規に作ったンホール港は、あまり広い敷地面積ではないが、先を見越して大型船用に水深は深くとってあった。
当然アーベルム側からすれば、ンホール港の完成はハリコフ王国の海上兵力の有力な前線基地ができたとみるのが普通であり、この度のブタ領への侵攻を招く結果ともなった。
「で……、ですな、ンホール港の水深を測らせていただきたい」
若きブタを横目に、将軍は老騎士に打診した。
老騎士はコソコソとアガートラム軍務役とそれについて相談した。
自国の最新設備の秘密を相手に打ち明ける事は、戦略的もしくは外交的敗北と言える。それは現代とておなじだ。
が……、
「殿! 将軍に水深を測っていただいてもよろしゅうございますかな?」
「OKブヒ!」
ブタ領は事実上アーベルムに屈していた。膨大な国力をもつ相手に戦闘を継続することは不可能だったのだ。が、それに多くの交渉において一歩的な条件になることもまた珍しい。
「我々も今度、アーベルムの港にお邪魔しても良いですかな?」
「もちろんですとも!」
大人たちのやり取りは続く。
「あ……、あの、拙者は役に立たないから、もう釣りに行ってもいいブヒ?」
「「ダメです!」」
老騎士と将軍にブタは睨まれた。
しょぼ~ん (´・ω・`)
──翌日
一向はンホール港に出かけた。
「わらわが、この港の責任者ぞえ!」
猫にしか見えない虎族のコダイ・リューが、頼まれもしていないのにンホール港について説明をし始めた。
最新データに基づくアレやコレ。秘密事項案件までしゃべりだす始末。もはや測量なぞいらないとおもわれるくらいの暴露ぶりであった。
随行員だったクローディス商館関係者は頭を抱えている。
さすがはブタ領INT(かしこさ)1の双璧の一人コダイ・リューなだけはあった。
「まぁ……、まぁ、一応私も仕事なので……」
──ポチャン。
将軍があちらこちらで水深を測るが。寸分たがわず説明の通りで驚かされた。
Σ( ̄□ ̄|||)
か……彼らに我々の秘密を話したら、このようによそ者にぺらぺらとしゃべられてしまうのか!?
ヘンデム将軍は若干の眩暈を起こした。
明日は婚約式。
いったいどちらが外交的優位に立つのか!?
ある意味、どんな賢者も見通せないほどの予断許さない状況だった。
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