48 / 100
~友愛編~
第四十八話……『後悔が無いように……』
しおりを挟む──『のぼれ!』『後悔が無いように……』
その日の夕日はとても奇麗だった。
「殿! 陣頭はおやめくだされ!」
「殿! おさがりを!」
「殿! お願いします!」
ブタは峻険な地に建つバートルム砦の麓の断崖を、先頭を切って登っていた。
すでに彼の装備する落武者の鎧は、敵方の矢でハリネズミのようになり、ブタ自身の体に到達した矢も3本を数えていた。
既に、ウサはブタを守ろうとして、砦側の矢と魔法を受け滑落し、重傷。後送されていた。
ブタを止めようと、ブタ領首脳部は突出。
──ブタは愚かか?
中身は中学生である。
当然に怒りに燃え、赤き血は煮えたぎり沸騰した。
──
「急げぽこぉぉぉ!」
バートルム砦のブタが存在する正面と反対方向の搦手には、ポコとビットマン、そしてヴェロヴェマ率いる骸骨赤備え3000名が配備を急いでいた。
何としても、敵の本体の後詰が来る前に落とす必要があった。敵の方が強大な戦力を持つために、少なくとも地の利を得たかった。
今ならバートルム砦の構造(なわばり)や通路、廓の配置は同じであり、ブタ側の方が砦の構造に詳しかった。
よって、奇襲や強襲が紙のうえでは成立した。
──
「ブタ討ち取ったりぃぃぃ!!」
敵方の歓声が響き渡る。
「ガァァァ……」
タヌキの目は血走り、小さな悲鳴をあげる。
それに続き。
ゴオォォォォォ! と地鳴りが砦周辺に響き渡る。
夕暮れの逆光の中から、とんでもない巨躯を誇るサイクロプスのビットマンが砦の中を覗き込んでいた。
その怒り狂った巨人は城壁を貪り食った。巨人の口からは血しぶきがほとばしり、その血しぶきの中から、深紅に染まった骸骨兵がなだれ込んできた。
「動くもの全てを殺せ!」
咽喉から震えた声を絞り出すヴェロヴェマ。地獄絵のような風景に城兵は怯んだ。
狂気じみた殺戮がバートルム砦を襲う。
堅固な正門も打ち破られ、ハイオーク達が怒号を上げながらなだれ込んでくる。
日が沈む前に、砦の最も高い塔に白旗が上がり、その塔から城将の首が投げ捨てられた。
それを見て、我に返った両軍は潮が引いたように矛を収めた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる