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~烈風編~
第三十一話……反乱討伐軍
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今日の空は青い。快晴だ。
──
「放て!」
大空を真っ黒にするように、矢が砦に向かって……
……ではなかった (´・ω・`)
矢が曲がっていたり、腕が悪かったりと、反乱軍が立てこもる砦に有効打は与えられない。
ここはボロンフ辺境伯爵領東部の農村地帯だった。ブタ領からするとはるか北東にあたる。
反乱討伐軍司令官はアガートラムであった。
当初はブタ領へは援軍要請のみであったのだが、あれよあれよという間に、援軍主将であったアガートラムは、反乱軍討伐の連合軍司令官になっていた。
「矢が真っすぐ飛んでないな!」
アガートラムは頭が痛かった。
例えば、今回の矢の補給は王都からの指示で、王都の製作所が製作し運んできたモノに限られた。
矢も矢であれば、連合軍の部隊の内訳はアガートラムが直轄500名以外は、非正規兵1500名。
1500名と聞こえはいいが、その実はお爺ちゃん兵士ばっかりでヨタヨタしていた。
対して、砦に立てこもる反乱軍はおよそ3000名と思われ、若手が多く動きもキビキビしており、どちらが反乱軍か一見わからなかった。
「は……話にならん!!」
ハイオーク族族長アガートラムは状況に怒り、持っていた指揮刀を地面に叩きつけへし折った。
ボロンフ辺境伯爵領は、中央が企図する北方戦線に全力出撃していた。よって当然、地域の村々には臨時徴収(契約上は前借)が行われていた。
村々が疲弊しているところに、近年の不作であり、王都の商人たちの買い占めにより物価は右肩上がりだった。
物価急騰たるインフレーションは真っ先に貧者に打撃を与えた。よって、当然のごとく蜂起や反乱は次々に勃発した。
そんな事情だったので、反乱討伐軍の士気も最悪だった。なにしろ砦の中の者たちとは近郷であり、親戚であったり馴染みであったりしたのだ。やる気が出るほうがおかしかった。
──その晩。
「まぁまぁ、ぐいっとブヒ!」
「ブタさん!話が分かるね♡」
貧相な装備の老兵士に葡萄酒を注ぐ落武者装備のブタ。25名ばかりの輪の中には、タヌキも兎もいた。
実は3匹とも【ンホール司教】の試験に合格できず、老騎士に釣り竿を取り上げられて戦地に一兵卒として実地研修に来ていた。反乱討伐が終わったら釣り竿を返してもらう約束だった。
……ブタとポコが持ち込んだ葡萄酒によってどんちゃん騒ぎ、砦の中の連中もやる気が無さそうなので良いかと思われたが……。
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
誰かがウサに飲ませたらしい……(事件)
アガートラムはイライラしながらも夜襲警戒のため、陣地を巡回する。
……最前線。
Σ( ̄□ ̄|||)
( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ
……ブタとその他大勢が、タンコブだらけで寝ていた。
そのころ、赤毛の女アサシン【ライン・シュコー】の手の者は、反乱軍に紛れ込み内情を探っていた。
「がははは……王国軍は腰抜けだ! 一切攻めてこぬわ!」
「奴らは口だけの腰抜けよ! 目に物を見せてくれる!」
反乱軍の指揮官たちは、元ハリコフ王国軍の将校のようだったが、みな手足に目立つ大きな傷があった。きっと前線に立つのが無理になった体なのであろう。
──翌日。
反乱討伐軍指揮官用幕舎内。
「よいか? 決して包囲してはならん! 敵は3000此方は2000だ! 敵を挑発するな! まともな補給が来るまで戦ってはならぬ!!」
アガートラムは吠え続ける。
「さらにはだ……、敵の方がはるかに兵の士気が高い! よって付城を築く!」
アガートラムは、卓の末席の隅っこに座っていたブタを指さし、
「そこのブタ! お前が指揮を執って砦を築け!」
「ブヒ??」
やる気のない軍隊ほど弱いものはない。彼らが統率を保っているのは所詮勝っている間だけなのだ。逃散される前に手をうっていかねばならなかった。
アガートラムはヘーデルホッヘ老騎士に補給を伝書鳩で要請したが、当面は王都から送られてくる物資でやりくりするしかなかった。
──付城工事現場。
「働け!」
「ブヒィィ (>_<)」
「ポコォォ (>_<)」
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
もちろんウサが仕切っていた(現実)
土を掘り、石を運ぶ。
そろそろ冬の訪れが近づいていたので、みな赤切れやしもやけになっていった。
「疲れたブヒィ……耳鳴りブヒ?」
【システム通知】……スキル【土のにほい】をGET!【危険】【汚い】【キツイ】状態での労働者との親和性が高まります。
Σ( ̄□ ̄|||) 耳鳴りか?空耳か?
ブタ達はたくさん働き、その晩もポコとウサとブタはなかよく……
( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ
……していた。所詮ブタも中身は凡庸な中学生だったのだ。
──
「放て!」
大空を真っ黒にするように、矢が砦に向かって……
……ではなかった (´・ω・`)
矢が曲がっていたり、腕が悪かったりと、反乱軍が立てこもる砦に有効打は与えられない。
ここはボロンフ辺境伯爵領東部の農村地帯だった。ブタ領からするとはるか北東にあたる。
反乱討伐軍司令官はアガートラムであった。
当初はブタ領へは援軍要請のみであったのだが、あれよあれよという間に、援軍主将であったアガートラムは、反乱軍討伐の連合軍司令官になっていた。
「矢が真っすぐ飛んでないな!」
アガートラムは頭が痛かった。
例えば、今回の矢の補給は王都からの指示で、王都の製作所が製作し運んできたモノに限られた。
矢も矢であれば、連合軍の部隊の内訳はアガートラムが直轄500名以外は、非正規兵1500名。
1500名と聞こえはいいが、その実はお爺ちゃん兵士ばっかりでヨタヨタしていた。
対して、砦に立てこもる反乱軍はおよそ3000名と思われ、若手が多く動きもキビキビしており、どちらが反乱軍か一見わからなかった。
「は……話にならん!!」
ハイオーク族族長アガートラムは状況に怒り、持っていた指揮刀を地面に叩きつけへし折った。
ボロンフ辺境伯爵領は、中央が企図する北方戦線に全力出撃していた。よって当然、地域の村々には臨時徴収(契約上は前借)が行われていた。
村々が疲弊しているところに、近年の不作であり、王都の商人たちの買い占めにより物価は右肩上がりだった。
物価急騰たるインフレーションは真っ先に貧者に打撃を与えた。よって、当然のごとく蜂起や反乱は次々に勃発した。
そんな事情だったので、反乱討伐軍の士気も最悪だった。なにしろ砦の中の者たちとは近郷であり、親戚であったり馴染みであったりしたのだ。やる気が出るほうがおかしかった。
──その晩。
「まぁまぁ、ぐいっとブヒ!」
「ブタさん!話が分かるね♡」
貧相な装備の老兵士に葡萄酒を注ぐ落武者装備のブタ。25名ばかりの輪の中には、タヌキも兎もいた。
実は3匹とも【ンホール司教】の試験に合格できず、老騎士に釣り竿を取り上げられて戦地に一兵卒として実地研修に来ていた。反乱討伐が終わったら釣り竿を返してもらう約束だった。
……ブタとポコが持ち込んだ葡萄酒によってどんちゃん騒ぎ、砦の中の連中もやる気が無さそうなので良いかと思われたが……。
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
誰かがウサに飲ませたらしい……(事件)
アガートラムはイライラしながらも夜襲警戒のため、陣地を巡回する。
……最前線。
Σ( ̄□ ̄|||)
( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ
……ブタとその他大勢が、タンコブだらけで寝ていた。
そのころ、赤毛の女アサシン【ライン・シュコー】の手の者は、反乱軍に紛れ込み内情を探っていた。
「がははは……王国軍は腰抜けだ! 一切攻めてこぬわ!」
「奴らは口だけの腰抜けよ! 目に物を見せてくれる!」
反乱軍の指揮官たちは、元ハリコフ王国軍の将校のようだったが、みな手足に目立つ大きな傷があった。きっと前線に立つのが無理になった体なのであろう。
──翌日。
反乱討伐軍指揮官用幕舎内。
「よいか? 決して包囲してはならん! 敵は3000此方は2000だ! 敵を挑発するな! まともな補給が来るまで戦ってはならぬ!!」
アガートラムは吠え続ける。
「さらにはだ……、敵の方がはるかに兵の士気が高い! よって付城を築く!」
アガートラムは、卓の末席の隅っこに座っていたブタを指さし、
「そこのブタ! お前が指揮を執って砦を築け!」
「ブヒ??」
やる気のない軍隊ほど弱いものはない。彼らが統率を保っているのは所詮勝っている間だけなのだ。逃散される前に手をうっていかねばならなかった。
アガートラムはヘーデルホッヘ老騎士に補給を伝書鳩で要請したが、当面は王都から送られてくる物資でやりくりするしかなかった。
──付城工事現場。
「働け!」
「ブヒィィ (>_<)」
「ポコォォ (>_<)」
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡
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もちろんウサが仕切っていた(現実)
土を掘り、石を運ぶ。
そろそろ冬の訪れが近づいていたので、みな赤切れやしもやけになっていった。
「疲れたブヒィ……耳鳴りブヒ?」
【システム通知】……スキル【土のにほい】をGET!【危険】【汚い】【キツイ】状態での労働者との親和性が高まります。
Σ( ̄□ ̄|||) 耳鳴りか?空耳か?
ブタ達はたくさん働き、その晩もポコとウサとブタはなかよく……
( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ( ˘ω˘)スヤァ
……していた。所詮ブタも中身は凡庸な中学生だったのだ。
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