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~烈風編~
第二十三話……女アサシンの事情
しおりを挟む今日も学校でのテストが長い、一日が長い。みんな楽しくやってるかなぁ?
リアルの空は今日も熱核兵器焼けだった。
──捕縛された女アサシンのまわりで吠える者たち。
「ぶひぶひぶうぶう~♪(オーク兵)」
「ンホォォォ~♪(暇なのでついてきた内政役)」
「うさ~♪」
人間が誰一人いないその陣容に困惑した女アサシンとその部下たちは、檻に入れられたままブタ領都ニャッポ村まで連行された。
どなどな~♪
──ニャッポ村の村役場で引見。
「其方の名は?」
ブタ領唯一の常識派である老騎士が女アサシンに問う。
「聞きたければ、先ず其方から名乗られよ!」
「これは失礼仕った。某はこのあたりを収める辺境蛮族子爵アイスマン卿の家宰、ベルン・ヘーデルホッヘと申す」
そう、老騎士は襟を正し自己紹介を述べた。
「ヘーデルホッヘ殿か……、私の名はライン・シュコー」
「ん? ひょっとして貴殿はハリコフ王国騎士団副団長シュコー殿のところのご令嬢ではありませぬか?」
……老騎士は以前にシュコー副団長から彼女のことを聞いたことがあったのだ。
「いかにも! 聞き及んでいるならさっさと縄をほどかんか!」
女アサシンは凛とした声で言い放った。
……シュコー副団長は、老騎士の昔の上司だったのだ。
「副団長殿はお元気か?」
「北方戦線で戦って死んだわ」
女アサシンは俯きながらそう言い、縄でいためた手首をさすっていた。
「そ……それはお気の毒に……ん? ならばなぜ貴公はこんなところにいらっしゃるので?」
ヘ-デルホッヘが不思議に思うのも無理はなかった。ハリコフ王国では、女性であれども家督は継げるのだ。当主が戦死すれば尚のこと。慰問金もでるし、戦死に対してはさらに5年分の役職手当も中央から加給される。
その家族たちが路頭に迷う心配などどこにもないのだ。
「……おまえは貴族の家宰なのに何も知らんのだな」
「も……申し訳ない」
自分の娘のような女アサシンに老騎士は謝る。
「よければ、お話しいただけまいか?」
水を向けた老騎士の言に、
「……よかろう!」
一呼吸おいて、女アサシンは重々しい口調でそれに応じた。
──女アサシンのいうところでは……
ハリコフ王国北方正統支配軍への援軍部隊の主力であるボロンフ辺境伯爵率いる第12師団は、兵糧の蓄えも少なく、敵のゲリラ戦術に悩まされていた。
が……、中央のハリコフ王国幕僚本部では、第12師団に対し【強硬なる進撃】の命令が決定された。
食料においては、現地調達を主眼とし、ゲリラ対策として残らず敵方の村々を焼くようにも指示が出ていた。
実際に兵糧の多くが幾多の世界にわたり現地調達されてきたが、4個連隊を丸丸指揮下に置く師団においての過疎地域における現地調達は難しく、極めて厳しい命令だった。
……このような過酷な指示に対して、ボロンフ辺境伯爵は自らの作戦遂行の障壁となる、王国の戦死制度に対しても強硬に臨んだのだった。
「正当なる王国部隊がそのように易々と死ぬわけがない!」
「戦死の報告は、残らず突き返せ!」
……結果としてボロンフ辺境伯爵のもとで戦って戦死したものは、戦死の名誉どころではなく、戦死証明書も発行されなかった。
戦死証明書は、軍直属の上司しか発行できず、発行されない場合は行方不明となり、逃亡罪に問われた場合、悪ければ一族皆さらし首という事態も予想されたのだった。
「……慰問金もでなかったのか?」
老騎士が問うと、
「……」
赤毛の女アサシンは俯いたままだった。
「事後報告として、拙者が王都に報告書を送ろう。それまで暫し待たれよ」
「……そのようなこと、すでに弟がやっておったわ!」
女アサシンはズビズビと泣きながら老騎士の袖で鼻をかんだ……チーン。
武門の家柄の娘とはいえ、まだ年端もゆかぬしな……。
そうヘーデルホッヘは憐れんだ。
──王都が財政再建の切り札は、貴族の改易に際する領地没収だった。
王都が貴族の領地を狙っていることは、貴族たちの間ではすでに知れ渡っており、誰の目からしても明らかだった。
又、ボロンフ辺境伯爵の配下の従軍戦場文官は極めて優秀であることが知られており、ボロンフ辺境伯爵の戦争の力そのものであった。
……が、『それも精彩を欠く……か、』
老騎士はぽつり誰に語るでもなく寂しそうにそうつぶやいた。
『これは、有事の際に王国に従っていても恩賞などでんかもしれんぞ?』と、老騎士がボソボソ呟いていたところ、
「でな! ボロンフの奴に一矢でも報いてやろうと思うて、工事を邪魔していたというわけよ!」
女アサシンは、きりっと泣き止んだ顔で言い放った。
「あの……、その工事は、今は某たちの領分……なのですが……」
老騎士はいささか当惑してそう答えた。
……(`・ω・)
……(´・ω・)
……(;´・ω・)
…… orz 「申し訳ない……」
よしよしヾ(・ω・`)
老騎士はそっと、まだ年端もゆかぬ女アサシンの頭をなでながら、同意を求めるために周囲を見渡した。
が……、
「ンホォォォ……んが~スピィィィ……」
そこには、立ったまま起用に寝るキノコ族のンホール司教しかいなかった。
……もちろん、話が退屈そうだから逃げたのであろうが、当事者のウサもいないのは、老騎士は思わず、
「ウサもかぁ~」
っと言いかけて慌てて口をふさいだ。
……今日も怪我無く、ご飯を美味しく食べたい老騎士であった。
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