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第3話 秘密組織ブラックストライクの謎 後編

3.訪れた正義の味方

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 校舎をひたすら駆け回り、職員室に逃げ込んだ菊池の耳に届いた者は、恐るべき校内放送だった。
 内容をそのまま出せば、こんな感じである。

「---菊池が、今から30分以内に戻ってこなかったら……。
 生徒に、ヤリパンマン衣装を着せて写真撮影を行い、その写真を校庭へばらまく。
 さらに1分経過したら、ヤリパンの頭だけ付けた状態の写真をばらまく……」

 死んだ方がましな脅迫に、菊池は頭を悩ませた。
 どうしたらいいんだ……? やはり何度考えても、答えは出ない。
 菊池がどんなにか説得しても、馬鹿に付ける薬がないのと一緒であり同じ事であり、かなり無意味なことだった。

 かけずり回るだけ、職員室をかけずり回る。
 そんな時、ふとこの状況を何とかしてくれる人物のことが思い浮かんだ。
 そうだ。あの人なら3人をギタギタのぼっこぼこにしてくれるのは、間違えなかった。

 悪魔のささやきとも言える名案を実行すべく、菊池は電話番号を調べ始める。
 この人に、叶うはずがない。

「……もしもし、あの。急ですみませんが、頼みたいことが……」

 願いは届いたようで、その人物へと電話が繋がる。

―――――――――――――――――

 人という者は、必ず負ける者である。

 それは自分より大きな相手であり、強い相手であり、人によって様々な天敵が居るだろう。
 それは三人にも居る者だ。
 門をよじ登って登場した校内で有名な人物は、制止する警備員を一喝して帰らせるように命じ、捕まっていた人々の拘束を解いた。
 もの凄い勢いで階段を駆け上り、屋上の人々に向けて最重量クラスのガトリング銃を突きつけた。
 捕まっていた生徒を強引に解放させると、その人物は顔を覆っていたスカーフを脱ぎ捨てる。

「---あなたっ!!」

 恐怖したのは、誰であろう黒き魔王である。
 しかし、彼は負けずと戦いを挑もうと決め込んだ。
 ステンレス製の物干し竿を振り回し、ガトリング銃を破壊する。

「ふっ……いつまでも、女の影に怯えている我では無い」

 勝ち誇った笑みを浮かべる魔王。
 抵抗する婦女子を押さえつけると、彼らは計画を再開させる。
 彼女の心の中で、定期預金解約の文字が浮かんだのは言うまでもない。この事件が終わった後、魔王は秋のそよ風に吹かれることになる。

「また。馬鹿騒ぎなんですってね……」

 ご家族の乱入は一人だけではなかった。
 屋上の入り口に隠れて、様子を見ていたマタニティードレスの女性は、冷ややかな笑みを中心となって活動していた人物にぶつける。

 ---そう、理事長に。

 大量の汗が理事長を襲い、足がふるえ始めた。
 もう、どんな言い訳も彼女の耳には届かないだろう。やさしく、その女性はシェリーの頭を撫でた。

「ねえ、あなたは一人前の大人なんでしょ……?」

 返す言葉もない。シェリーは固まったまま動かなくなる。
 彼女はシェリーの髪をつかむ、そして勢い良く右頬にビンタを浴びせかけた。その時だった。

  ---シュパ!!

 隙を見て、拘束を逃れた黒き魔王の連れ合いが、ステンレス製物干し竿をシェリーの連れ合いに投げ渡したのだ。
 にっ。と笑って彼女は物干し竿を横に振るう。
 逃げ腰になっていた魔王と殺戮者にそれは当たり、彼らは動かなくなる。
 隅に隠れていた菊池は、その光景に感動した。

 奥さんは強い。まさに、カカア天下である!

 妊娠しているのだからとも思うのだが、彼女にとって、これくらいの運動は準備体操のようなものらしい。
 シェリーが天高く舞う。
 右頬、左頬とビンタを打たれ、逃げようとしたシェリーは飛び膝を食らった。
 数十分間かけて、ギッタギッタのぼこぼこにされたシェリーは奥様に引きずられながら退散していく。

 ……悪は、滅びたのだ。
 生徒達は歓喜し、お互いの無事を喜んだ。
 悪の秘密結社がある時、正義も必ず居る。
 奥様という最強チームの乱入により、2度とブラックホームランは結成されることはなかった。

――――――――――――――――― 

 後日。
 理事長はその場に居なかったという大嘘により、シェリーは処分を免れた。
 さらに、学年行事という銘文を付けていたため、科学部の処分も全く行われないという異常事態すら起こるのだった。

 しかし、生徒達に焼き付いた恐怖は消えないため、科学部が昔作った人格形成マッシーンにより、一部の記憶除去が行われたらしい。
 こうして、教育委員会もすり抜けているのだろう。
 菊池は、書くだけ書いた退学願いを出すかどうか悩み始めた。

 …………学校って、学校って?

 終わり
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