姫君たちの傷痕

和泉/Irupa-na

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第二章 辱めと苦痛の日々

ニーナとレインとの出会い(5)

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「……紅茶の温度を下げてますので、ゆっくりと飲み干して下さい。
 本来ならば気位の高い従僕に、しかも初対面でここまで愛されるなんて、エリヴァル様は何と稀有なお方なのでしょうね…」

 布で身体を拭き取られ、ぬるくなった紅茶を口に注がれていく。震えはまだ収まらず、秘芯は痙攣して、花弁はヒクヒクと揺れ動いている。
 手指の感覚が既になく、身を起こそうにも全く力が入らない。触れられるだけで感じてしまうように仕立てられ、ターニアに拭き取られる度に肉芽は弾けるような快楽を与えていく。

 今度は冷たく冷えた布を当てられ、ようやく震えが落ち着いてきた。音を出せなくなっていた喉に感覚が戻ってきて、激しい吐息を漏らしながら喘ぎの声の余韻が大きく口に出ていく。

「何て、素敵な歌声なんでしょう…。もう、鳴かされる言葉も出せないくらいに、何度となく気をやってしまわれたのですね。
 淫らな声を出す事も出来ず、快楽に逆らう事も許されず、身体の限界を超えて性を教え込まれたまま、初めての悦楽に飲まれてしまい。でも、そんなご自分に戸惑っていらっしゃる…」

「……あれ…から、何時間が…」

「五時間もの間、エリヴァル様は悦びを与えられ続けたのです。意識を失う事も叶わず、抗う術も持たずに、ベルン陛下の手解きを受けて徹底的に閨の知識を学んだ従僕に触れられて、どうする事も出来ないまま、気をやった回数だけが増え続けたのですね」

 今度は熱い紅茶が運ばれ、ようやく茶葉の苦味や味が分かってきた。唇も震え、舌も、少し腫れているようで、ターニアに給仕をされなければ満足に水を飲む事でさえ出来ないだろう。

「彼女たちは、貴方さまと血の繋がった姫君なのですよ。従僕は、国王の閨の手伝いをする事も仕事の一部です。
 ニーナとレインは、前の女王。つまりは現国王の王母の娘たちです。従僕の一族は、王家のお手付きを受けた愛妾の子供たち。王に仕える者たちには、家柄も重要視されます。過去には、本来なら不義の子となる王妃の子供までおりました。二人は王の御子を孕む事も、特別に許された存在です」

「--血の、繋がった親戚の姫君…?」

「ええ、血統だけならエリヴァル様より濃い血筋の一族ですわ。生まれが違うと言うだけで、鎖で繋がれて、舌に穴を開けられていますけれど…、本来なら侯爵位を授けられる令嬢ですのよ。それも、公爵位でもおかしくない程の姫君です…」

 自分がランベル王子の娘で無ければ、あのような粗末な部屋に押し込まれて毎日気配を察せられない程に、鎖に繋がれたまま日々を過ごしていた。の、だろうか…?
 親戚の令嬢として、お互いに茶会を開いて談笑していたはずの二人は、言葉さえも奪われて湯に浸かっていた時も、食事を取っていた時でさえも、ひと言の音でさえ漏らさなかった。

「陛下のご要望で、少々歪んではおりますが。通常の従僕の教育でも、そこまでの違いはございません。彼女たちは従僕に選ばれて居城に住まわなければ、親や兄妹。一族の墓を見る事でさえ、永遠に叶いません。
 選ばれない子供は神官職となり、会う事が許されない親への祈りを生涯捧げるそうですわ…。それに、従僕になる事で自分の親かその子供。もしくは、兄妹である国王と一生暮らせるのです。今は別の従僕が居りますが、もしその子が命を落とした際には、ニーナとレインは現国王。つまり、自分の兄に仕える事となります」

 エリヴァルは、あの孤独に満ちた二人を自分に置き換えずには居られず、枯れてしまっていた涙を落とした。

 兄に会いたい一心で残酷な従僕としての教育を受け入れ、カスティア王女の歪んだ閨の調教を覚えていく。従僕となって、兄である国王と暮らせるようになっても、代償としてその一族の誰か。もしかしたら自分の父親か、その兄妹の命を失う事となる。

 誰かに自分の存在を知られれば、すぐに処刑されて知った者は処罰され、住まいはエリヴァルに快楽と苦痛を教え込む、第一王女の部屋の中。

「--二人はもう、下がらせました。彼女たちは、私か陛下以外とはお会い出来ませんから、安息日にエリヴァル姫が姿を見せてくれたら、大変喜ぶでしょうね…。表向きは、私が快楽を教え込んだ事に致しますから、二人と遊んだ後は、私に弱りきった身体を蹂躙させられましてよ。それでも、貴方さまはニーナとレインを受け入れて下さいますか?」

「これ以上、この場で何かされたら…。私はきっと、壊れてしまうでしょう。でも、それをする事で彼女たちに会えるのであれば、私はそれを耐え抜かなくて、ならないわ」

「決意は、お堅いようですね。明日は安息日後の休日ですからお休みになれますし、壊れないように加減は致しますわ。もちろん、その翌日にはレイチェル夫人方が登城されますから、今度は苦痛の責め苦がエリヴァル様に与えられます」

「……感謝するわ、ヘイヴェン侯爵令嬢」

 出来るだけ二人を怯えさせる声は漏らさないように願うが、それを出来るようになるまではどれ程の年月が必要なのだろうか。
 少しずつ動かせるようになってきた指先を伸ばして、流れた涙をエリヴァルは静かに拭き取った。

「今日は私の秘密も、お教えしますわ。私。侍女となるために、ベルン陛下に身体を弄られましたの…」

 ターニアはドレスを脱いで真っ黒なコルセット姿となり、エリヴァルを抱き起こして寝台に横たわらせる。
 室内のオレンジ色のランプが細く灯り、夜の訪れを告げていた。
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