10 / 10
第三話 さらば科学推論演算部
3.超時空アンドロイドさゆり
しおりを挟む保健室から理科準備室へと、エレベータが降りていく。
山本は、大咲先生から借りたモップを両手で持ち戦闘体制に。糸倉は、右手にカップめん。左手にはスーツケースを持って戦いに赴いた。
理科準備室は機械のジャングルだった。
モーター音と警告音のようなものが交差して流れ、怪しげなケーブルが数え切れないほど壁に埋め込まれていた。
「---侵入者と思えば、山本と変なサラリーマンか」
黒マントをはおった部長が現れ、ジャイアン登場のバックミュージックがどこからか流れた。
「なんだ? そのサラリーマンは? カップめんなんぞ食いつづけて、小池さんの親戚か?」
面白い人ですね、と糸倉は山本に耳打ちした。
「……ま。とりあえず、やれ! 生徒会役員!」
声と共に、野獣のような生徒会役員達が顔を出す。
慌てて、山本はモップで役員達をはたきつけた。二、三度攻撃すると、役員達はその場に伏した。
「糸倉さん、手伝ってくださいよ……!」
糸倉はひょいひょいと攻撃をよけながらラーメンをすすっていた。
食べ終わるまではダメか。山本は舌打ちした。
「なかなかのものではないか。ならば、私自ら戦ってやろう!」
ばさりと部長はマントをはずす。貧弱な肉体が現れ、山本は恐怖した。
「・・・まあ待て、我も戦おう!」
それまで、奥で鉄管工事をしていた師匠が現れた。
山本達をボーっとしばらく見て、自分の頭をポンポンと叩いてあぁぁぁぁぁと叫ぶ。
「---社長」
突然、師匠は態度を低くした。彼も一応社会人。縦社会のつらさである。
「役員会議が待っていますよ。何やってんですか?」
糸倉は、なおもラーメンを食べ続けた。
「ふっ、ふふふふふ。いい機会だから、貴様も改造してやる……!」
彼の中で何かが弾けたらしい。
師匠の社会人としての生活を捨て、新しい支配者としての道を歩むことにしたようだ。
「ボーナス査定、マイナスですね」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ。
積年の恨み、晴らさせてもらう! 出でよ、超時空アンドロイドさゆり!!」
ど派手な効果音と共に、マネキンのようなロボットが現れた。
コンニチハ、コンニチハと子供向け乗り物のような挨拶をするさゆり。
「うわぁ、ダサ」
糸倉は、さゆりを眺めてすぐにこう言った。
「さゆり。超時空ミサイルだ」
「イエッサー」
さゆりは手を山本に向けて、手首を開いた。小さなミサイルが山本に発射される。
「痛っ!」
それは、つまようじだった。
「はっ、はっはっはっはっはっ! さゆりの恐ろしさ、知るがいい!!」
白衣の二人は高らかに笑った。山本はモップを横に振る。
チャリンというガラスのような音がして、超時空アンドロイドさゆりは破壊された。
「はぁ、さゆり!!!」
「貴様ら、さゆりには三歳になる赤ちゃんがいるんだぞ!」
「厚生年金も払っているのに、なんだ……!!」
何だかよく分からないことを、彼らは言い始めた。
「ふう」
糸倉は、ラーメンをようやく食べ終えた。
割り箸を横に折り、ゴミを準備室のくずかごへと捨てポンポンとお腹を叩き、スーツケースからサイレンサー付きのコナンスオードを取り出す。
ガチャという音がすると、糸倉は白衣の二人に銃を放つ。
タッタッタというミシンのような音がして、師匠と部長は血を噴出しながら床に倒れた。
「い、い、い、糸倉さん……?」
山本は恐怖で腰がぬけてしまった。
「ああ。大丈夫です。この二人は、それくらいで死にませんから」
笑いながら、糸倉は師匠を引きずって準備室を後にした。
―――――――――――――――――
かくして、長い道のりを経て第三中学に平和が訪れたのだ。
しかし、これで山本の苦難が終わったわけではない。
この世に憎しみの続く限り、第二の橋本が現れるかもしれない。
また、その時まで科学推論電子演算部は閉部としよう。
―――――――――――――――――
さらば、科学推論電子演算部!
終
0
お気に入りに追加
4
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる