都立第三中学シリーズ

和泉葉也

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第二話 橋本部長の秘密のコバコ

3.科学部と保健室の謎

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「そうか。あなたは、あの科学部の部員なのね」
「---はい」

「科学部に入ったばっかりで苦労するわね。その、師匠君だけど。えーっと、たしか5年ぐらい前に・・・科学部の部長をやっていたと思ったけれど?」

「科学部の部長!?」

 驚愕の事実である。

「たしか、名前は。んん? でん、でん。なんとか君だったと思ったけど、よく覚えていないわ」

 でん。奇妙な苗字もあったものだ。

「その人について詳しくお願いします!!」

「たしか、何人も部下とかを引き連れてたわよ。
 よく、一年生の男の子が大怪我して運ばれて来たっけ、渡辺君とかいったかな?  理科準備室を改造して、暗証番号入力しないと入れないようにして、クーラーとか勝手に設置したのは良く覚えているわ。
 一度だけ中に入ったことがあったんだけど、なんかテレビとか、ゲーム機とか、洗濯機なんかまで置いてあったっけ」

 可哀相な渡辺君である。山本は、自分の先輩に涙した。

「それで、どうして部長と知り合ったんです?」
「小学生の時だったと思う。四年前に、科学部の部長をやっていたその子のとこに橋本君が来たんですって」

 五年前中学生だった人間が、どうして四年前に小学生をやっているのか非常に気になる山本だったが、彼の中の何かが聞いてはいけないと囁くようなので、必死で抑えた。

「ま。まあ。つまりは、その師匠がまともな人になれば部長もまともになるんでしょうか?」
「ムリね。天性のものだろうし・・・」

 山本の計画が音を立てて崩れていった。
 はっ!  しかし、その師匠の周りの方々に部長の弱みを聞けば。
 山本はめくるめく安泰の地を思い浮かべて、心の内で笑った。

「先生。その師匠の住所とか分かりませんか?」
「教えるのは構わないけど、後ろの彼の許可がいると思うわ」

 へっ、となり。背筋にものすごい寒さを感じた山本は恐る恐る振り返ってみる。

「やーまーもーとーぉー」

 これまで見たこともないような部長の暗黒的な表情に、山本は引きつった。
 何故だか、安全カミソリを手にした部長が山本のバックを取っていたのである。

「ドアを開ける音もしなかったのに!!」
「---甘いな山本」

 部長は高笑いしながら、虫歯の出来るわけのポスターを剥がして、保健室の壁を軽く押した。
 すると、ギュウイイインという機械音と共に、壁が回転して行き中央に筋のある鉄製の壁と交代する。

「---な!」

 部長は白衣の胸ポケットから、リモコンのようなものを出し、ボタンを押す。
 すると再び機械音がして、チンという奇妙な音がした。鉄の壁が左右に開いていく。

「保健室と理科準備室は、繋がっているのだ」
「あら、エレベータなんかあったんだ」

 のん気に言う、大咲先生。

「あったんだ。じゃないでしょ!  どうして、公立中学にこんなものがあるんですか?」
「---昔作った」
「作ったって部長……!」

 なんだか、海が見たくなってきた。
 このまま海に部長を沈められたら、どんなに素敵だろう? 

「少し前までは、色々な機械もあったのだが・・・残念ながら教育委員会に見つかってしまってな。
 ちょっとした問題になって全部撤去されてしまったんだ。
 まあ、私としては師匠が残した超時空アンドロイドさゆりがまだ残っていることだし、安心して学生を続けられるものだがな」

 ---ありがとう教育委員会。
 山本は、撤去されたの後は、聞こえなかったと思い込んだ。

「しかし、さゆりが残っていたのは素晴らしいことだ。彼女は、人類初の分子破壊砲を備えたスーパーアンドロイドだからな」

 山本は聞こえないふりをした。これ以上、別のことで悩まされてはたまらない。

「おっと、邪魔したな大咲! また今度お邪魔するよ」

 いつものように、山本は部長に引きずられながら理科室へと連れて行かれた。
 降りていくエレベータが、地獄への直行便のように思えた。
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