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第二話 橋本部長の秘密のコバコ
1.思春期の登場!
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「海ーの男にゃ、戦地が似合う。月月火ー水木金金ーっとくら!」
町外れのさびれたカラオケボックスに軍歌が響く。
恋の呪文はスキトキメトキスに始まり、軍歌、軍歌、軍歌と続き、山本は酒を飲んでいるわけでもないのに、吐き気をもようした。
ひたすら歌い続けるのは、一応先輩である橋本橋蔵。
ぐるぐるメガネと白衣を下校時だろうと構わず着こなす、第三中学の歩く変質者であり、山本はじめの科学部の先輩でもある。
もちろん。こんな先輩が部長をやっている科学部に入部するものはいない。
どうして、山本が科学部に入部したか。 それには脅迫、という言葉が適用されるだろう。
「よーし。点数だ!」
歌い終えた部長は、マイクを握り締めたまま画面をにらむ。
軽快な効果音と共に、点数は何故だか100点を表示する。
「わあー。凄いですねー」
とやる気なさげに山本は呟いた。
「---当然だ」
そして、カラオケの機械には怪しげなコンセントが付いている。
もはや何も言うまい。
二十七曲程、部長だけが歌い続けてカラオケは終わった。
恭順な部下をねぎらっての会、らしいのだが毎度こうなってしまうのだから山本の努力も無駄である。
「やっと終わった」
山本は、安息の地我が家へと急いだ。
―――――――――――――――――
「私は中学三年生にもなった」
いつもの部活時間。そして、いつもの理科準備室。
いつも通りの試験管を逆さに持っての部長演説が始まった。
山本は内緒で学校に持ってきているポッキーをくわえながら、だるそうにだが聞く体制になった。
「中学三年生。ともなれば、精神的にも肉体的にも変化は訪れる。
知能の強化、体力の増加、身長の上昇。これらの変化は遺伝子の命令によって起こされているものであり、当然私にもこんな変化はある。そう、下界の住民どもがグラビアの写真に興味を覚えエロ本を買いあさるような!」
その前に、お前は受験生だろうと山本は心の中で思った。彼の演説はまだ続く。
「言うならば、のび太君がしずかちゃんの入浴シーンをのぞきたいような変化は私にもある。そこで、今回のターゲットは一般生徒だ!!」
今回は、山本はイスから落ちなかった。彼もだいぶ慣れてきたようである。
「そして、今回登場するのがこの秘密のコバコだ!!」
バンと部長が床を叩くと、小箱にしては大きすぎる木製の箱が現れた。
一体どうなっているんだろうかと不安になる山本だったが、忘れることにした。救心が案外高かったためである。
「このコバコは、私の師匠であり第三中学の先輩でもある師匠と、有名メーカーの協力により開発されたものだ。
心地よい香りときつさを同時にミックスした御殿である。ちなみに、特許出願中! 製品化も検討している」
さり気なく、嫌な言葉を耳にした山本。
走り出そうとしたが、どこからか高枝切りバサミっぽいものが飛んできたので壁際までが、彼の逃亡距離となった。
バン
いつもより、やや多い書類がテーブルに投げ出された。
恐る恐る書類を手にして、いつものように青ざめる山本。通知表・成績表・戸籍・健康保険証等のコピーがそこに入っていた。
もちろん、山本のというのは言うまでもない。
「---やります! 喜んでやらさせてもらいます!!」
書類を握りつぶして、山本は涙混じりで叫んだ。
「そうかー。男女問わないから頑張れよ山本!!」
僕の人生って何だろう。
そう考えながら山本は理科室を後にした。
町外れのさびれたカラオケボックスに軍歌が響く。
恋の呪文はスキトキメトキスに始まり、軍歌、軍歌、軍歌と続き、山本は酒を飲んでいるわけでもないのに、吐き気をもようした。
ひたすら歌い続けるのは、一応先輩である橋本橋蔵。
ぐるぐるメガネと白衣を下校時だろうと構わず着こなす、第三中学の歩く変質者であり、山本はじめの科学部の先輩でもある。
もちろん。こんな先輩が部長をやっている科学部に入部するものはいない。
どうして、山本が科学部に入部したか。 それには脅迫、という言葉が適用されるだろう。
「よーし。点数だ!」
歌い終えた部長は、マイクを握り締めたまま画面をにらむ。
軽快な効果音と共に、点数は何故だか100点を表示する。
「わあー。凄いですねー」
とやる気なさげに山本は呟いた。
「---当然だ」
そして、カラオケの機械には怪しげなコンセントが付いている。
もはや何も言うまい。
二十七曲程、部長だけが歌い続けてカラオケは終わった。
恭順な部下をねぎらっての会、らしいのだが毎度こうなってしまうのだから山本の努力も無駄である。
「やっと終わった」
山本は、安息の地我が家へと急いだ。
―――――――――――――――――
「私は中学三年生にもなった」
いつもの部活時間。そして、いつもの理科準備室。
いつも通りの試験管を逆さに持っての部長演説が始まった。
山本は内緒で学校に持ってきているポッキーをくわえながら、だるそうにだが聞く体制になった。
「中学三年生。ともなれば、精神的にも肉体的にも変化は訪れる。
知能の強化、体力の増加、身長の上昇。これらの変化は遺伝子の命令によって起こされているものであり、当然私にもこんな変化はある。そう、下界の住民どもがグラビアの写真に興味を覚えエロ本を買いあさるような!」
その前に、お前は受験生だろうと山本は心の中で思った。彼の演説はまだ続く。
「言うならば、のび太君がしずかちゃんの入浴シーンをのぞきたいような変化は私にもある。そこで、今回のターゲットは一般生徒だ!!」
今回は、山本はイスから落ちなかった。彼もだいぶ慣れてきたようである。
「そして、今回登場するのがこの秘密のコバコだ!!」
バンと部長が床を叩くと、小箱にしては大きすぎる木製の箱が現れた。
一体どうなっているんだろうかと不安になる山本だったが、忘れることにした。救心が案外高かったためである。
「このコバコは、私の師匠であり第三中学の先輩でもある師匠と、有名メーカーの協力により開発されたものだ。
心地よい香りときつさを同時にミックスした御殿である。ちなみに、特許出願中! 製品化も検討している」
さり気なく、嫌な言葉を耳にした山本。
走り出そうとしたが、どこからか高枝切りバサミっぽいものが飛んできたので壁際までが、彼の逃亡距離となった。
バン
いつもより、やや多い書類がテーブルに投げ出された。
恐る恐る書類を手にして、いつものように青ざめる山本。通知表・成績表・戸籍・健康保険証等のコピーがそこに入っていた。
もちろん、山本のというのは言うまでもない。
「---やります! 喜んでやらさせてもらいます!!」
書類を握りつぶして、山本は涙混じりで叫んだ。
「そうかー。男女問わないから頑張れよ山本!!」
僕の人生って何だろう。
そう考えながら山本は理科室を後にした。
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