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第二章 侍女長リリス

日向の部屋へ(5)

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「二度目の歓迎会では麦酒とお菓子くらいしか、出せそうにもないわよ」

 抱きかかえられたまま部屋へと連れて来られたリリスは、戸棚から麦酒の瓶とチョコレートの箱を取り出した。
 元姉姫の住まいだった室内は日差しが良い、日向の部屋。中央の銀鏡に今日は二人の姿が映り、荷解きの済んでない小箱がだらしなく広がっている。

「昨夜、酒豪たちが飲みつくした後では、そうなるだろうさ」
「……それもそうね」

 グラスに麦酒エールが注がれ、やや酸味を帯びた味わいが乾燥した喉に染み渡る。
 ウィードは昨晩の痴態に少し嫉妬していたようで、こちらが飲み干した瞬間、瓶に直接口を付け、リリスの唇の端から舌で押し流してきた。
 相手から口移しで飲まされると、こんなに酔いが回るものなのか。心の中でニオブに謝罪してから二本目の瓶に手を伸ばし、ツンと上唇から押し上げ、今度は負けずとウィードに押し返していく。

「……ふふっ。昨日、何度もニオブで実践したもの」

 肩から背中へと手を回し、体制が上向きになった所で舌を吸い、ピチャピチャと音を立てながら味わう。互いに酔いも回ってきたようだがゲームは続き、追加の麦酒が口に広がった。
 舌先で転がしながら牽制し、啜りながら喉の奥に届かせる。身体に体重を乗せられ押し戻されてしまった。リリスの身体は寝台に寝かされてしまう。

「実践が長過ぎて、隙が出来たようだな……」
「---悔しい。……あと少しだった……のに」

 ウィードの口から麦酒を流し込まれ、リリスはそのまま飲み干していく。
 姉姫の眠るベットだった場所で押し倒される形となり、蠱惑的な刺激が身体を襲っていった。せめてもの抵抗に舌で押し返していくが、酔いが完全に回っていてはその気力も薄れていく。
 残った瓶も空になった所で互いの唇を吸い、最後の味を噛みしめていった。麦酒が切れた所で口づけは終わらず、ざらついた舌表面の感触を楽しんでいく。

「……あっ、それを引っ張ったら……んっ」

 リリスのレッスン用コルセットの固定紐に手を伸ばされ、肩布が解けてった。
 歳のわりに大振りな胸元が露わになり、恥ずかしそうに顔を赤く染めた。

「……夜会には行かないと言っておいて、手慣れて、いるじゃない……」
「現地に行かないだけで、父上のお零れは預かってきたからな……。でも、誰でもというわけじゃないさ。本気の時も有ったけど、遊ばれていたようなものだ」

 胸にひんやりとしたウィードの手が重なっていく。敏感な部分に指が触れ、何度も口づけてから強く吸い上げられた。
 軽く甘噛みをされ、リリスは声を押し殺そうとするも小さく喘いでしまう。

「……ダメ……。これ以上したらエリヴァルに、聞こえてしまう……」
「これは歓迎会なんだろ、お姫さんも少しは大目に見てくれるさ」

 拒絶しようと伸ばした手は、強い力で押さえつけられた。
 ウィードは首筋、肩へと強く吸って跡を残していき、もう誰に見られても言い逃れが出来ないような状況になっていく。
 足を絡め捕られて、乳房を抱かれて再びリリスは唇を塞がれた。
 胸元の熱さと、ウィードの舌先とが甘く誘惑し、考えるのを止めたくなるくらいに互いの唾液を啜る。

 今度はテーブルに置かれたチョコレートのケースが開かれ、口に放り込まれた。
 歓迎会の再開となり、四角いチョコレートの甘みを味わいながら唇の端で押し出し合う。

「……んっ、あっ……甘くて、溶けていって……」

 じゅるっと、大きく音を立ててチョコが吸い出され、顔と唇の隅に付いた残りを舐め合いながら落とした。なるほど、次回の歓迎会を開く際にはニオブにこれも有りかもしれない、等と妙に冷静になっていく。
 お互いの顔を見て笑い合いながら、今度はリリスがウィードの首筋に噛みついて、跡を付けたお返しのしるしを刻んでやった。

「兵士でも無いのに、結構鍛えているじゃない……。王弟に憧れていたりとか……?」
「それも有るが、将来的に鍛治職を継がされる可能性が高いからな。剣を作るのに振るえなくては商売にならないさ」

 束ねた髪が肩を撫でて、次の一枚を誘っていた。
 小悪魔のようにリリスはチョコレートを口に咥えると、残りの枚数を数えながら押し込んでいく。
 最後の1枚まで食べ終えた所で、歓迎会とレッスンは終わりを告げた。
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