婚約令嬢の侍女調教

和泉葉也

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最終章 貴族院への道

花奴隷との戯れ(1)

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 まだ薄明るい公爵家の庭を走り、昨晩饗宴が行われたサロンとは反対の南側に向かっていく。
 以前訪れた際は鉄棒に繋がれていたので少し迷ったが、何度か道を通り過ぎながらも見覚えのある赤レンガと二重の扉が見えてきた。
 セレンティアを待ち構えていたかのように手前の扉は開かれており、衛兵の姿もなかった。
 息をのみながらガラス錠の鍵穴に紫水晶のカギを差し込み、肌をピリピリとさせながらも重い扉を開いていく。

 中では、明るい日差しが差し込めていた。
 ガラス扉に閉じこめられる事もなく、イスに腰かけたまま三人の花奴隷たちは裸の少女と戯れている。
 足を踏み入れるだけで蜜の香りが広がっていき、セレンティアはそれらが飢えた時に舐め続けた蜂蜜と同じ物である事を理解した。

 幻覚を見せるためのものか、考え方を狂わせるための麻薬だったのか、どちらにしても空腹に耐えかねて貪ってしまったのだから、薬物と知っていた所で結局は口にしてしまっただろう。
 深い藍色の髪をした花奴隷、デンドルムが一番にセレンティアに気が付き、痛ぶっていた少女の秘芯から手を離して優美な会釈をした。

 イスだと思っていたはずのそれは、女性の身体を無理に折り曲げたものであり、大きくヒップを曝けだした淫らな姿で身体を固定されている。
 布で隠されて顔は見えないままだが、秘芯には太い張形が押し込まれ手首と足首は枷で繋がれており、とても人が成している姿勢とは思えなかった。

「随分と、素敵な趣向でのお迎えですわね…」

「朝が僕たちの活動時間だからね、木々が成長するためには陽の光に当たらなくてはならないだろう? それよりセレンティア、君がこの場所までやって来たという事は、僕らを使って蜜を作り始める気になったのかな? それとも、手慰めにでも飽きて気をやってみたくなった…とか?」

 最初に会った時の弱々しさは、恐らくレイチェル夫人に指示された演技だったのだろう。デンドルムは花奴隷の王として、威厳を保った姿でセレンティアを見下しており、そこに弱っていた自分に癒しを与えてくれた時の優しさは残されていない。

 淡い白髪をした女性の花奴隷、テトラとクラレッテはイスから立ち上がってセレンティアへと会釈をし、二人してデンドルムに纏わりつくように足元に身を落とした。

「——貴方がたに頭を下げて協力して頂き、気を狂わせる蜜を集めて貴族院の皆さんを集わせるのがレイチェル夫人のご要望なのでしょうけれど。私は、花奴隷に従属するつもりはなくてよ…」

「僕たちとしては、セレンティアの思うがままにするのでも構わないよ。さあ、どうぞ…。花びとのイスで寛いで貰いながら、君の素敵な提案を聞こうか。わざわざここまで来たのだから、何か考えでもあるんだろう?」

 デンドルムはクラレッテが腰掛けていたイスへと促し、あり得ない角度で歪められた若い女性たちの背中に座るよう仕向けた。
 ちょうど肘置きの部分に秘芯が触れるように身体は捻じ曲げており、ヒップの上には木細工の施されたグラスが置かれた。

 あまりの悪趣味さにセレンティアは目眩を覚えたが、目頭を抑えつつ何とか座り、不気味な温かみを布ごしに感じ取った。
 一度はカティーナのお小水の臭いを消すために着替えたはずだが、薄汚れてしまったドレスにまだ痕跡が残されているかのようで肌を掻きむしりたくなってきた。

「彼女たちは、退屈な奴隷生活を潤してくれる花びとだよ。この国の王に仕える従僕みたいに、ずっと教育された少女たちだ。
 同じように舌に穴を開けられて、自分の言葉を紡ぐ事も許されない。ロイヤルアゼールから連れて来られた、財産のようなものだね…。私たちは花びとを愛しては居るけれど、恋人のような関係ではない。道具として扱われる事を受け入れて、僕たちの粘液や排泄物で生かされる奴隷以下の存在…。
 まあ、花びとより下の存在も見えない場所に隠されて居るけれどね。僕たちが今では禁じられた存在になったのも、少しだけ理解出来るだろう?」

「残念だけど、理解するつもりは無くてよ……。そうね、デンドルムから見れば、虐めを受けていた小娘が縁故で従姉妹から鍵をもぎ取って来たように思えるでしょうけれど、私。レイチェル夫人の事は信用していないし、肉親の情なんて存在しないわ。それは向こうも同じこと。
 お互いの利害関係が一致しているから、私はこの場所に残っている」

 グラスに果実酒が注がれ、わざわざ薬入りの蜂蜜を混ぜ入れられた。勢いだけでそれを飲み干し、花びとのヒップに力一杯爪を立てる。
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