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第五章 贅を尽くされた部屋
夜の訪れと処刑の時間(6)
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「……あ、ぁ、あぁ!!! い、いや、ぁ…。い、痛い、い、痛いっ!!! は、はずして、外して下さいレイチェル夫人!!!」
「あら、何か言ったかしら…? 先ほど、泣き声は聞かないとお伝えしましたでしょう。とても貴族らしい素敵なお姿になられたのに、外して欲しいだなんて…。弱音を吐くには遅すぎてよ」
イスに固定されたままのカティーナは、あまりの秘芯の苦痛に身体を揺り動かして抵抗を繰り返す。だが、それも敏感な箇所に取り付けられた枷を刺激する事になり、さらなる苦痛が彼女を襲った。
「——自分から選んだと言うのに、無様な女ね」
それまで冷静に事を見ていたセレンティアは、かつての嫌味な令嬢を "酷く汚いモノ" として感じられるようになってきた。
緊張と驚きで本来の気弱さが戻ってしまったはずなのに、心の奥底のどす黒い感情へと支配され、この場の来賓たちと同じように気高い表情で出されたワインを口にする。
あれは、罪人だ。殺されても仕方のない、何の価値もない女だ。何故、誇り高い自分が彼女に助け舟を出そう等と思ってしまったのか? 過去の感傷に引き摺られて、陰口を言われても頭を下げ続けて義妹や義弟の良さを語る小間使いのような、使い回しのドレスを身に付けたボロの令嬢だった自分を思い出してしまったのだろう。
骨肉の燻製を齧り、次はどんな肢体で暴れてくれるのかと心が躍った。もっと酷い行いを、残虐で凄まじい拷問をあの女に与えてはくれないだろうか…?
「何だか楽しそうね、知人の出し物を観るのに抵抗が有ると思って居たけれど…」
「昔を知っているから、令嬢らしく毅然として振る舞って下さると思っていたの。でも、私を攻撃し続けていた伯爵令嬢にしては、随分と呆気ない結末ね」
ターニアは髪を撫でて頬に触れ、そっと口付けてきた。同性との行いはマリー以来だろうか、少しだけ秘芯が濡れて熱く満たされてきた。
「セレンティアの冷酷な表情、とても素敵だわ。思わず濡れてしまうくらいに、身体に鞭を打って貰いたくなる程に残虐で卑猥よ…。手鏡をご覧になって」
ターニアに王家の紋章が付いた手鏡を手渡され、セレンティアは今の自分の顔を見つめた。確かにきつい瞳と尖った眉に変わっており、レイチェル夫人を思い出させる。
血は繋がっているのだから、似ていても仕方のない事だが、気持ちが切り替わるだけでこうまで顔が変わってしまうのは少し不気味だった。
公爵家の次期当主との婚約、王位継承権十一位、リグレット侯爵令嬢、レイチェル夫人の従姉妹、花奴隷の部屋の鍵、将来の貴族院代表…。
令嬢としてのステータスとしては広過ぎる人脈と権力に、臆病で気弱だったはずの自分が少しづつ消失していく。
鞭で打たれ、水を浴びせられ、秘芯に削ぎ棒を押し込まれるカティーナの淫らな姿に、芸術的なものを感じた。もっと酷く、もっと痛め付けて手足をもがれて哀願を繰り返して地べたに這いつくばるべきだ。あの女は、気高い自分に何をした? 乳母だと嘲り笑い、継ぎ接ぎのドレスを貶し、お茶を掛けられた事や本を破かれた事だってある。
下世話な伯爵令嬢の分際で、将来の女王を産むこの身体に触れさせて頂けただけで感謝するべきだ。私を崇めて、許しを乞うて、泥や砂に塗れたまま身体を括られて、ギロチンで首を切って貰えばいい…。
真っ黒な妄想や幻聴を耳にしながら、それでもセレンティアは臆病だったいつもの自分に戻ってしまう。
そんな事は考えてはいけない。彼女は可哀想な女なのだ、恋に騙されて情報を渡し、罰を受けているだけで罪が許される時が来る。この場を耐え抜いて、元の侍女となって、貴族としての振る舞いが出来るようになる。
戯言が口から溢れそうになり、自分の中に仮面を付けた新たな自分が生まれたかのように感じた。慈悲深い臆病なセレンティア伯爵令嬢と、冷酷で気高い自分。心と体の不一致に眩暈がして、ターニアの唇を夢中で吸い続けた。
観客は舞台を熱心に観ており、顔を向けようともしない。レイチェル夫人は楽しそうにこちらのテーブルへと視線を向けたみたいだが、熱くなった身体を止められそうにも無かった。
「さあ皆さま、当家のサロンでのお茶会も終焉ですわ。ドレスアップしたカティーナ様に赦しの羽根を刺して下さいませ…」
フィナーレを告げる鈴が鳴り響き、給仕の少女たちが真っ白に塗られた鴨の羽根をテーブルに置いていく。無惨に剣で突かれた鴨の、剥ぎ取った羽根の先端には鋭い針が取り付けられており、これを舞台に向けて投げつけると狂った夜会は終わるらしい。
息を荒くして、何とか意識を保っているカティーナが一人舞台に取り残され、レイチェル夫人の合図で一斉に鴨の羽根が投げつけられる。
ターニアが投げた羽根は乳房に、セレンティアの羽根は秘芯へと突き刺さり、激しい絶叫と共に残酷なお茶会の犠牲者は大きく喘いで意識を失った。
レイチェル夫人は拍手で迎えられ、参加者の寝泊まりする部屋の番号と罪人が謝罪のために訪れる時間が伝えられた。セレンティアはターニアと同じ部屋を指示され、三階の別棟へと向かう。
カティーナが二人の元に訪れるのは夜明け近くの最終時間、それまでに彼女が生き延びれば、最後の審判はセレンティアに任される事となる。
「あら、何か言ったかしら…? 先ほど、泣き声は聞かないとお伝えしましたでしょう。とても貴族らしい素敵なお姿になられたのに、外して欲しいだなんて…。弱音を吐くには遅すぎてよ」
イスに固定されたままのカティーナは、あまりの秘芯の苦痛に身体を揺り動かして抵抗を繰り返す。だが、それも敏感な箇所に取り付けられた枷を刺激する事になり、さらなる苦痛が彼女を襲った。
「——自分から選んだと言うのに、無様な女ね」
それまで冷静に事を見ていたセレンティアは、かつての嫌味な令嬢を "酷く汚いモノ" として感じられるようになってきた。
緊張と驚きで本来の気弱さが戻ってしまったはずなのに、心の奥底のどす黒い感情へと支配され、この場の来賓たちと同じように気高い表情で出されたワインを口にする。
あれは、罪人だ。殺されても仕方のない、何の価値もない女だ。何故、誇り高い自分が彼女に助け舟を出そう等と思ってしまったのか? 過去の感傷に引き摺られて、陰口を言われても頭を下げ続けて義妹や義弟の良さを語る小間使いのような、使い回しのドレスを身に付けたボロの令嬢だった自分を思い出してしまったのだろう。
骨肉の燻製を齧り、次はどんな肢体で暴れてくれるのかと心が躍った。もっと酷い行いを、残虐で凄まじい拷問をあの女に与えてはくれないだろうか…?
「何だか楽しそうね、知人の出し物を観るのに抵抗が有ると思って居たけれど…」
「昔を知っているから、令嬢らしく毅然として振る舞って下さると思っていたの。でも、私を攻撃し続けていた伯爵令嬢にしては、随分と呆気ない結末ね」
ターニアは髪を撫でて頬に触れ、そっと口付けてきた。同性との行いはマリー以来だろうか、少しだけ秘芯が濡れて熱く満たされてきた。
「セレンティアの冷酷な表情、とても素敵だわ。思わず濡れてしまうくらいに、身体に鞭を打って貰いたくなる程に残虐で卑猥よ…。手鏡をご覧になって」
ターニアに王家の紋章が付いた手鏡を手渡され、セレンティアは今の自分の顔を見つめた。確かにきつい瞳と尖った眉に変わっており、レイチェル夫人を思い出させる。
血は繋がっているのだから、似ていても仕方のない事だが、気持ちが切り替わるだけでこうまで顔が変わってしまうのは少し不気味だった。
公爵家の次期当主との婚約、王位継承権十一位、リグレット侯爵令嬢、レイチェル夫人の従姉妹、花奴隷の部屋の鍵、将来の貴族院代表…。
令嬢としてのステータスとしては広過ぎる人脈と権力に、臆病で気弱だったはずの自分が少しづつ消失していく。
鞭で打たれ、水を浴びせられ、秘芯に削ぎ棒を押し込まれるカティーナの淫らな姿に、芸術的なものを感じた。もっと酷く、もっと痛め付けて手足をもがれて哀願を繰り返して地べたに這いつくばるべきだ。あの女は、気高い自分に何をした? 乳母だと嘲り笑い、継ぎ接ぎのドレスを貶し、お茶を掛けられた事や本を破かれた事だってある。
下世話な伯爵令嬢の分際で、将来の女王を産むこの身体に触れさせて頂けただけで感謝するべきだ。私を崇めて、許しを乞うて、泥や砂に塗れたまま身体を括られて、ギロチンで首を切って貰えばいい…。
真っ黒な妄想や幻聴を耳にしながら、それでもセレンティアは臆病だったいつもの自分に戻ってしまう。
そんな事は考えてはいけない。彼女は可哀想な女なのだ、恋に騙されて情報を渡し、罰を受けているだけで罪が許される時が来る。この場を耐え抜いて、元の侍女となって、貴族としての振る舞いが出来るようになる。
戯言が口から溢れそうになり、自分の中に仮面を付けた新たな自分が生まれたかのように感じた。慈悲深い臆病なセレンティア伯爵令嬢と、冷酷で気高い自分。心と体の不一致に眩暈がして、ターニアの唇を夢中で吸い続けた。
観客は舞台を熱心に観ており、顔を向けようともしない。レイチェル夫人は楽しそうにこちらのテーブルへと視線を向けたみたいだが、熱くなった身体を止められそうにも無かった。
「さあ皆さま、当家のサロンでのお茶会も終焉ですわ。ドレスアップしたカティーナ様に赦しの羽根を刺して下さいませ…」
フィナーレを告げる鈴が鳴り響き、給仕の少女たちが真っ白に塗られた鴨の羽根をテーブルに置いていく。無惨に剣で突かれた鴨の、剥ぎ取った羽根の先端には鋭い針が取り付けられており、これを舞台に向けて投げつけると狂った夜会は終わるらしい。
息を荒くして、何とか意識を保っているカティーナが一人舞台に取り残され、レイチェル夫人の合図で一斉に鴨の羽根が投げつけられる。
ターニアが投げた羽根は乳房に、セレンティアの羽根は秘芯へと突き刺さり、激しい絶叫と共に残酷なお茶会の犠牲者は大きく喘いで意識を失った。
レイチェル夫人は拍手で迎えられ、参加者の寝泊まりする部屋の番号と罪人が謝罪のために訪れる時間が伝えられた。セレンティアはターニアと同じ部屋を指示され、三階の別棟へと向かう。
カティーナが二人の元に訪れるのは夜明け近くの最終時間、それまでに彼女が生き延びれば、最後の審判はセレンティアに任される事となる。
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