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第四章 サディスト夫人の嗜虐
マリーとのヒップ責め(1)
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「——もう、朝になっていたの…?」
地下牢で気を失ったはずのセレンティアは、丁寧に身体を洗われて自室の寝台で寝かされていた事に気がついた。
昨晩の饗宴で肌に付いたはずの傷口や細かな愛撫の跡まで、元から無かったかのように肌は透き通っている。公爵家が国の医療に携わっている事は知っているが、それだけでこんなにも酷く打たれた肌が潤っているのは不思議で仕方なかった。
「おはようございます、昨晩はお疲れ様でした。朝食は多めにお持ちしましたので、どうぞゆっくりとお召し上がりください」
続きの間に小間使いのリンとスウが住み始めたようで、すぐに小部屋の扉が開いて朝食とモーニングティーが運ばれて来た。
バスルームには水甕が注がれ、それから洗顔用の用意が整えられた。顔を洗って髪を正すと、自分が酷く飢えていたようで、淑女としてのマナーも忘れて用意された柔らかなパンに齧り付く。
「……奥様のご帰還に合わせたレッスンのためとはいえ、少しセレンティア様に対して、酷い扱いではないでしょうか?」
「首に縄までかけられて、鞭で打たれて…。そこまでの行いをしなくても、ただ義母となる方とお会いするだけですのに…」
すっかり朝食に満たされた所で、二人はセレンティアを気遣って昨夜の痴態への疑問を投げかけて来た。
確かに、公爵夫人と会うだけにしては少々レッスンが過剰なものだったし、死ですらも覚悟した。そもそも、身体を傷付ける事で整えられる物とは何なのだろうか。
「私にも、何故なのかわからないわ…。でも、昨日のレッスンのおかげで、身体に酷くされる事を受け入れてしまった。何かが、壊されてしまったのかも、しれないけれど」
「奥様は、カスティア王女の側近として、セレンティア様をお育てになりたいのかもしれません…」
声を震わせながら、リンは意外な人物の名前を出してきた。この国の第一王女で、将来の女王候補ではあるが、赤い瞳に近い赤茶の目を持って生まれたために、聖女のような扱いを受けて傲慢に育ってしまい、王や王妃に好かれず。貴族院では、女子優先となる本来の継承順位ではなく、第一王子のランベルを即位させようと動いている。
「カスティアベルン王女が、何故…?」
セレンティアは、聖女と呼ばれた第一王女の昔からの信奉者だった。女王が即位する事が伝統であり、捻じ曲げた継承順位を推進する貴族院を非難していた。確かに、レイチェル公爵家は第一王女派の代表格ではあり、その事がセレンティアの婚約を承諾した理由の一つらしいが、それとこのレッスンに何の関わりが有るのだろうか。
「私たちはかつて、カスティア王女に側女として可愛がって頂き、そしてこのお屋敷で働く事を許されました…。この国の法律では、女王は即位するまで婚礼を上げる事は許されません。だから、形だけの婚約をしておくか、即位しても婚礼を上げないで同性の愛妾を設けます。その、つまりは、殿下は何があっても尽くされる令嬢を好まれるお方なので…」
言葉を幾つか濁しながら、リンは第一王女の性癖を伝えてくる。鞭で打たれても、自分から離れない相手。何をされても逃げ出さない側女。
聖女と呼ばれて慕われて居るのに、そんな者にしか心を許さない孤独な姫君。
それは、何という寂しくて冷たい感情なのだろう。本来の継承順位を捻じ曲げられ、両親である王と王妃から疎まれられる王女。
「少し前までの私でしたら、そんな行いをする王女殿下を、とても残虐な方だと非難していたわ。でも、酷くされる行いは相手の体調や怪我を細かく診て、お互いに信頼出来なくては行えないって、昨日のレッスンでよくわかったの…」
クロームファラやレミエールに嫉妬された行いと、距離感や体調を配慮されたレッスンを比べてみると、今は身体も心も満たされていた。
第三者から見れば残虐な行為にしか見えないけれど、それをするには準備が必要であり、互いの距離感を測りながら行うゲームであると理解した。
「クロームファラたちは、手足がボロボロになるまで膝立ちで歩かせたり、食事を抜いたりと私の身体を蹂躙した。でも、本来なら、鞭で打つ者は加減を覚えなくてはならない。相手を傷付ける事に悦びを感じるのではなく、労わりながら傷付ける。それは、とても難しいわ…」
熱い紅茶を飲みながら、セレンティアは心配してくれる二人の頬に口付けをして、それから頭を撫でて落ち着かせた。
「殿下の心を理解するのは、とても難しい事です。ですが私たちは。殿下のおかげで平民の身の上で有りながら、公爵家で働く事を許され…。こうしてセレンティア様にお仕えしております。いつもお寂しく、両親や弟殿下から見放された、孤独な姫君を。どうか、お救いして差し上げて下さい…」
地下牢で気を失ったはずのセレンティアは、丁寧に身体を洗われて自室の寝台で寝かされていた事に気がついた。
昨晩の饗宴で肌に付いたはずの傷口や細かな愛撫の跡まで、元から無かったかのように肌は透き通っている。公爵家が国の医療に携わっている事は知っているが、それだけでこんなにも酷く打たれた肌が潤っているのは不思議で仕方なかった。
「おはようございます、昨晩はお疲れ様でした。朝食は多めにお持ちしましたので、どうぞゆっくりとお召し上がりください」
続きの間に小間使いのリンとスウが住み始めたようで、すぐに小部屋の扉が開いて朝食とモーニングティーが運ばれて来た。
バスルームには水甕が注がれ、それから洗顔用の用意が整えられた。顔を洗って髪を正すと、自分が酷く飢えていたようで、淑女としてのマナーも忘れて用意された柔らかなパンに齧り付く。
「……奥様のご帰還に合わせたレッスンのためとはいえ、少しセレンティア様に対して、酷い扱いではないでしょうか?」
「首に縄までかけられて、鞭で打たれて…。そこまでの行いをしなくても、ただ義母となる方とお会いするだけですのに…」
すっかり朝食に満たされた所で、二人はセレンティアを気遣って昨夜の痴態への疑問を投げかけて来た。
確かに、公爵夫人と会うだけにしては少々レッスンが過剰なものだったし、死ですらも覚悟した。そもそも、身体を傷付ける事で整えられる物とは何なのだろうか。
「私にも、何故なのかわからないわ…。でも、昨日のレッスンのおかげで、身体に酷くされる事を受け入れてしまった。何かが、壊されてしまったのかも、しれないけれど」
「奥様は、カスティア王女の側近として、セレンティア様をお育てになりたいのかもしれません…」
声を震わせながら、リンは意外な人物の名前を出してきた。この国の第一王女で、将来の女王候補ではあるが、赤い瞳に近い赤茶の目を持って生まれたために、聖女のような扱いを受けて傲慢に育ってしまい、王や王妃に好かれず。貴族院では、女子優先となる本来の継承順位ではなく、第一王子のランベルを即位させようと動いている。
「カスティアベルン王女が、何故…?」
セレンティアは、聖女と呼ばれた第一王女の昔からの信奉者だった。女王が即位する事が伝統であり、捻じ曲げた継承順位を推進する貴族院を非難していた。確かに、レイチェル公爵家は第一王女派の代表格ではあり、その事がセレンティアの婚約を承諾した理由の一つらしいが、それとこのレッスンに何の関わりが有るのだろうか。
「私たちはかつて、カスティア王女に側女として可愛がって頂き、そしてこのお屋敷で働く事を許されました…。この国の法律では、女王は即位するまで婚礼を上げる事は許されません。だから、形だけの婚約をしておくか、即位しても婚礼を上げないで同性の愛妾を設けます。その、つまりは、殿下は何があっても尽くされる令嬢を好まれるお方なので…」
言葉を幾つか濁しながら、リンは第一王女の性癖を伝えてくる。鞭で打たれても、自分から離れない相手。何をされても逃げ出さない側女。
聖女と呼ばれて慕われて居るのに、そんな者にしか心を許さない孤独な姫君。
それは、何という寂しくて冷たい感情なのだろう。本来の継承順位を捻じ曲げられ、両親である王と王妃から疎まれられる王女。
「少し前までの私でしたら、そんな行いをする王女殿下を、とても残虐な方だと非難していたわ。でも、酷くされる行いは相手の体調や怪我を細かく診て、お互いに信頼出来なくては行えないって、昨日のレッスンでよくわかったの…」
クロームファラやレミエールに嫉妬された行いと、距離感や体調を配慮されたレッスンを比べてみると、今は身体も心も満たされていた。
第三者から見れば残虐な行為にしか見えないけれど、それをするには準備が必要であり、互いの距離感を測りながら行うゲームであると理解した。
「クロームファラたちは、手足がボロボロになるまで膝立ちで歩かせたり、食事を抜いたりと私の身体を蹂躙した。でも、本来なら、鞭で打つ者は加減を覚えなくてはならない。相手を傷付ける事に悦びを感じるのではなく、労わりながら傷付ける。それは、とても難しいわ…」
熱い紅茶を飲みながら、セレンティアは心配してくれる二人の頬に口付けをして、それから頭を撫でて落ち着かせた。
「殿下の心を理解するのは、とても難しい事です。ですが私たちは。殿下のおかげで平民の身の上で有りながら、公爵家で働く事を許され…。こうしてセレンティア様にお仕えしております。いつもお寂しく、両親や弟殿下から見放された、孤独な姫君を。どうか、お救いして差し上げて下さい…」
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