婚約令嬢の侍女調教

和泉葉也

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第四章 サディスト夫人の嗜虐

地下室の逢瀬(1)

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 二日ほどカースティ補佐官と、侍女のマリーによるお掃除のレッスンは続き。戻ってきたレイン侍女長もギャラリーに加わるようになると、ようやくセレンティアも補佐官から精を出せるようになった。
 三人は仕切りに褒めてくれたものの、冷静になって自分を振り返ってしまう気持ちの方が強く、素直に喜べはしなかった。

 迎えた安息日には、婚約者のテオルースが屋敷に戻ってきて大切に抱かれはしたものの、彼を愛する気持ちは残っていても何処か物足りなさを感じてしまう。

「……私は、何をしているのだろう…」

 モーニングティーを口にして、朝食とレッスンの出迎えを待つ間。答えの出ない疑問は続いていく。
 すぐに焼き立てのパンの匂いと共に朝食を乗せたサーブカートは運ばれて、水々しい地取り野菜のサラダや熱いスープボウルを、セレンティアは上品に口にしていく。

 少しずつ元のように増やされていった食事も、今日で、最初に公爵家へ訪れた時のような量に戻った。食べ終えれば小間使いのリンがコルセットや侍女服の着替えをし、いつもの執務室へ向かえばセレンティアの一日は始まる。

「——おはようございます、セレンティア様。奥様から連絡が届きまして、三日後に公務を終えて戻られるとの事です。急な事情で戻りが遅くなってしまい、申し訳ないと、丁重にお詫びするように言付けられました」

「公爵夫人に、お会い出来る事を楽しみに待っておりました。夫人にお会いするに相応しい淑女になれるよう、本日もご指導の程、よろしくお願い致します」

 何だか呪文のような建前の台詞をカースティ補佐官とレイン侍女長に伝え、今日は何処かに移動するのか、机上にはいつものレッスン道具の用意が無かった。

「本日から明日にかけて、責め苦のレッスンを行います。二日間で仕上げて、最後はセレンティア様に奥様とお会いするために着飾って頂こうと思っております……。
 少々、お身体に負担をかけてしまうレッスンでは有りますが、これまで成し遂げられたセレンティア様ならば、必ず耐え切って下さいますわ」

 レイン侍女長は優しく頬を撫でて、ポケットからリードの付けられた首輪を取り出してセレンティアに付けた。それを見て、また動物のように歩かされる事を知ったセレンティアは、少し悲しそうな表情で四つん這いとなり、二人に連れられて執務室を後にする。

 数分歩かされて、玄関近くに調度品で隠された小部屋の扉の前へとやってきた。
 戸棚や置き物を移動させないと入れない造りとなっており、入った相手を確実に逃がさないような地下への階段が続いている。
 浮かんだ疑問の言葉や焦りを口にしても、残忍な二人の指導官が教えてくれるはずもなく、ランタンに照らされた薄暗い階段を、少しずつセレンティアは進んでいった。

 やがて開けた場所に辿り着くと、レイン侍女長は燭台の火を灯していき、高い鉄格子と窓のない部屋が姿を現す。
 罪人を入れる地下室、残酷な牢屋。花奴隷の姿を見てから、この屋敷に在るだろうと思い続けていた答えが姿を見せた。

 リードを外されたセレンティアは、地下牢の鉄枷に腕を固定され、少しだけつま先立ちという窮屈な姿勢で牢の壁を背に立たされる。
 髪を整えられ、いつもよりも濃い化粧がレイン侍女長によって施された。
 牢の中は思っていたよりも清潔に保たれ、机の上にはいつの間にか持ち込まれていた、水差しや鞭の類が並んでいく。

「ご指導、よろしくお願い致します…」

 滑稽とも言える台詞を吐き、内心のため息を隠しながらセレンティアは深い瞬きを繰り返した。
 二日間と時間は区切られては居ても、こんな幼い心で耐え切れる自信はなく、動揺を必死で隠しながら笑顔の表情だけを顔に飾って見せた。
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