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第一章 令嬢だった頃の日々
婚約者とのひと時(2)
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勤めを果たすという義母との約束から、安易にリグレット家に戻ることも許されない。この婚約を逃す事が有れば、社交界からは追放されてしまう。
亡くなったセレンティアの母は、北方の辺境伯の子女で、王家に連なる血筋。伯爵程度の身分に嫁ぐのは異例の話で、本来なら公爵家にも充分に釣り合う家格。
病弱でさえなければ、相手はすぐに見つかっただろうに、婚約に相応しい年齢を過ぎても見つからず、家柄はかなり劣る伯爵家の父と婚礼を結ぶ事となった。
父は優しい男では有ったが気は弱く、伯爵位としての地位も振るわなかったので、母は手持ちの宝石を手放すしかなく、その事を最後まで恨みながら始祖神の元に旅立った。
リグレット家には侯爵位とその領地が与えられ、自身も将来は公爵夫人となる。
その事に強いプライドを持って、この公爵家で認められなくてはならない。
しかし、同じ第一王女派の派閥同士だと言うのに、何故父はそこまでこの話を止めさせようとしたのだろうか?
セレンティアは何度となく制止され続けた父の必死さと、特別に侯爵位を受けた時の深い諦めの表情を思い起こした。
何をそこまで心配し、公爵家の侍女となる事を不安がって居たのかは最後まで教えて貰えず、それでも公爵家から用意された馬車に乗る時は、涙を流しながら手を振ってくれた。
女学校にさえ通わせて貰えなかった無学の娘が、この国の最高峰に近い公爵家の働き手となる。一年間という期限は在るものの、嫉妬や嫌がらせの類いは多く行われるだろう。
もしかしたら失敗した際には鞭を打たれたり、冷たい水を浴びせられる事も有るかも知れない。
公爵家へ戻る際も愛を囁いてくれるテオルースの心地よい声を耳にしながら、明日への決意と今夜の甘い夢をセレンティアは思い描いた。
一年間公爵家の侍女として勤め上げ、正式な婚約を結び、やがて婚礼を迎えて娘を授かり、将来の女王候補の母と呼ばれる。
頼れるのは背丈の大きめな身体と、良い思い出のない黒髪。財産もなく、家は仮初めの侯爵位で教養も何もない。
手のひらに収められる武器の少なさに、セレンティアは反対し続けていた父の必死な顔を思い出してしまい、少しだけ不安な気持ちを抑えられなくなった。
夕食を終え、夜着を見に纏った所でテオルースがティーセットを手に客間へと入ってきた。
しばらく会えなくなる事と、明日の出発は早朝になるので朝食を一緒になれない非礼を詫びて、それから同じソファーに腰掛けて優しく肩を抱いてくれた。
正式な婚約も済ませていない、仮の間柄では有ったけれど、彼は充分に自分を愛してくれているし、これからの苦難を乗り越えるための証しのような物が、セレンティアは欲しくなった。
「これから君を辱めてしまうけれど、少し時期が早過ぎると君の父君はお怒りになられないかな……?」
「私は、貴方様の者ですわ。何をなさろうとも、咎められる事は有りません。でも、私。挨拶以外の口付けを交わした事もない、知識の少ない娘です。どうかテオルース様、私にご指導なさって……」
現れた侍女達が茶器を片付けていき、テオルースの瞳はセレンティアだけを見つめ続けた。そっと頬に手を当てると深い口付けをされ、口元を淫らにしてから胸元に手を当てがわれた。
まだ幼い胸を震わせると、緊張を解くように首筋や肩へと軽く口付けられていく。
「こんな可憐な君と、毎日逢えないなんて……。早く正式に婚約を結んで、僕の侯爵領に連れて行きたいよ。公爵家は母上のサロンも兼ねているから、侍女服に身を包んだセレンティアの姿は、僕より先に他の貴族達に見られてしまうのが、とても惜しいよ」
「私も、テオルース様のお屋敷で毎日過ごせるようになりたいです。侍女としてのお勤めがアースティ侯爵家だったら、貴方に尽くす事が許されるのに……。その瞳に映るのが私ではなく、他の侍女である事に嫉妬してしまいます」
髪をそっと撫でられてから唇で触れられ、すっかり肌を露わにした乳房の先端を転がされる。強く身体が反応し、秘芯の奥から蜜が溢れ出す。
逞しい腕が産毛を撫で、それから指を這わされながら舌を吸い合う深い口付けを交わした。
「……愛しいセレンティア。君をこのまま屋敷に連れ去って行けない罪は、貴方を思いながら過ごす事で許して欲しい」
行為が終わってもテオルースは優しく抱きとめ、髪を整えて夜着を正してくれる。
ずっと彼と暮らせたらいいのに、と初めての痛みを奥で感じ取りながらも、彼からの深い愛にセレンティアは胸が震えた。
目を覚ました時には、一人だけの自分しか居ない。明日からは行儀見習いも兼ねた侍女としてのセレンティアが始まり、幼かった少女時代とも別れを告げなくてはならない。
帰る事も許されず、気軽に外へ出かける事も出来ない。休みの日が有るのかさえ、教会に祈りを捧げる時間が取れるのかも、何も分からない。
一年後の自分は、婚約者として振る舞えるだけの気品を身につけて居られるだろうか……?
希望や思いを描きながら、令嬢としての時間を終えたセレンティアは深い眠りに就いた。
亡くなったセレンティアの母は、北方の辺境伯の子女で、王家に連なる血筋。伯爵程度の身分に嫁ぐのは異例の話で、本来なら公爵家にも充分に釣り合う家格。
病弱でさえなければ、相手はすぐに見つかっただろうに、婚約に相応しい年齢を過ぎても見つからず、家柄はかなり劣る伯爵家の父と婚礼を結ぶ事となった。
父は優しい男では有ったが気は弱く、伯爵位としての地位も振るわなかったので、母は手持ちの宝石を手放すしかなく、その事を最後まで恨みながら始祖神の元に旅立った。
リグレット家には侯爵位とその領地が与えられ、自身も将来は公爵夫人となる。
その事に強いプライドを持って、この公爵家で認められなくてはならない。
しかし、同じ第一王女派の派閥同士だと言うのに、何故父はそこまでこの話を止めさせようとしたのだろうか?
セレンティアは何度となく制止され続けた父の必死さと、特別に侯爵位を受けた時の深い諦めの表情を思い起こした。
何をそこまで心配し、公爵家の侍女となる事を不安がって居たのかは最後まで教えて貰えず、それでも公爵家から用意された馬車に乗る時は、涙を流しながら手を振ってくれた。
女学校にさえ通わせて貰えなかった無学の娘が、この国の最高峰に近い公爵家の働き手となる。一年間という期限は在るものの、嫉妬や嫌がらせの類いは多く行われるだろう。
もしかしたら失敗した際には鞭を打たれたり、冷たい水を浴びせられる事も有るかも知れない。
公爵家へ戻る際も愛を囁いてくれるテオルースの心地よい声を耳にしながら、明日への決意と今夜の甘い夢をセレンティアは思い描いた。
一年間公爵家の侍女として勤め上げ、正式な婚約を結び、やがて婚礼を迎えて娘を授かり、将来の女王候補の母と呼ばれる。
頼れるのは背丈の大きめな身体と、良い思い出のない黒髪。財産もなく、家は仮初めの侯爵位で教養も何もない。
手のひらに収められる武器の少なさに、セレンティアは反対し続けていた父の必死な顔を思い出してしまい、少しだけ不安な気持ちを抑えられなくなった。
夕食を終え、夜着を見に纏った所でテオルースがティーセットを手に客間へと入ってきた。
しばらく会えなくなる事と、明日の出発は早朝になるので朝食を一緒になれない非礼を詫びて、それから同じソファーに腰掛けて優しく肩を抱いてくれた。
正式な婚約も済ませていない、仮の間柄では有ったけれど、彼は充分に自分を愛してくれているし、これからの苦難を乗り越えるための証しのような物が、セレンティアは欲しくなった。
「これから君を辱めてしまうけれど、少し時期が早過ぎると君の父君はお怒りになられないかな……?」
「私は、貴方様の者ですわ。何をなさろうとも、咎められる事は有りません。でも、私。挨拶以外の口付けを交わした事もない、知識の少ない娘です。どうかテオルース様、私にご指導なさって……」
現れた侍女達が茶器を片付けていき、テオルースの瞳はセレンティアだけを見つめ続けた。そっと頬に手を当てると深い口付けをされ、口元を淫らにしてから胸元に手を当てがわれた。
まだ幼い胸を震わせると、緊張を解くように首筋や肩へと軽く口付けられていく。
「こんな可憐な君と、毎日逢えないなんて……。早く正式に婚約を結んで、僕の侯爵領に連れて行きたいよ。公爵家は母上のサロンも兼ねているから、侍女服に身を包んだセレンティアの姿は、僕より先に他の貴族達に見られてしまうのが、とても惜しいよ」
「私も、テオルース様のお屋敷で毎日過ごせるようになりたいです。侍女としてのお勤めがアースティ侯爵家だったら、貴方に尽くす事が許されるのに……。その瞳に映るのが私ではなく、他の侍女である事に嫉妬してしまいます」
髪をそっと撫でられてから唇で触れられ、すっかり肌を露わにした乳房の先端を転がされる。強く身体が反応し、秘芯の奥から蜜が溢れ出す。
逞しい腕が産毛を撫で、それから指を這わされながら舌を吸い合う深い口付けを交わした。
「……愛しいセレンティア。君をこのまま屋敷に連れ去って行けない罪は、貴方を思いながら過ごす事で許して欲しい」
行為が終わってもテオルースは優しく抱きとめ、髪を整えて夜着を正してくれる。
ずっと彼と暮らせたらいいのに、と初めての痛みを奥で感じ取りながらも、彼からの深い愛にセレンティアは胸が震えた。
目を覚ました時には、一人だけの自分しか居ない。明日からは行儀見習いも兼ねた侍女としてのセレンティアが始まり、幼かった少女時代とも別れを告げなくてはならない。
帰る事も許されず、気軽に外へ出かける事も出来ない。休みの日が有るのかさえ、教会に祈りを捧げる時間が取れるのかも、何も分からない。
一年後の自分は、婚約者として振る舞えるだけの気品を身につけて居られるだろうか……?
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