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第二章 異世界でなんとか生きてます
第11話 異世界の夜は長いのか・・・
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部屋にもどると、とりあえずベッドに腰掛ける。
異世界に飛ばされて、いい人に助けられたのは奇跡的なことかもしれない。
ただ、この世界でどうしたらいいのか、どう生きたらいいのか、まったくわからない状態だ。
体感的には、午後7時くらいだろうか。
窓の外は夕焼けが終わり、夜の帳が降りようとしている。
日本にいる時は、街灯があり、生活している家の灯、コンビニの灯、車のライト、店のネオン、街中に光りが溢れていた。
この世界では、街灯などなく、部屋の灯も薄暗いランタンしかなく、気持ちもどことなく暗く沈みがちになる。
ただ、夜空にかかる青い下弦の月は、街を神秘的な光で包み込んでくれる。
これから、朝まで何時間あるのだろうか。
ネット環境も、タブレットやパソコンもない状態で、途方に暮れてしまう。
パソコンでレポートを書いたり、タブレットをダラダラいじってたりするだけで、時間が過ぎていってたのが今は懐かしく感じる。
《マスター、報告してもいいでしょうか。》
一緒に異世界に飛ばされてしまったAI人格であるモヒンダが、思考のデススパイラルに陥りそうになる自分を気にかけながら話しかける。
「あぁ、モヒンダか。
元の世界に戻れる方法でも、見つかったのかい?」
そんなに簡単に元の世界に戻れるなんて思わないが、とりあえず聞いてみる。
《いいえ、元の世界に戻れるかどうか検討する材料が不足しています。
今後、情報収集し、解析することで、検討したいと思います。》
「そうか、では報告したいことってなんだい。」
《この宿のランタンの灯ですが、ロウソクでも油でもないのにお気づきでしょうか。
魔素が石のように固まったものをセットし、ランタンに記録された術式を起動することで、発光させていました。》
「そんなこともあるのか。
でもLED蛍光灯に比べたら、だいぶ光が暗くなってるよね。」
《魔素を使用する術式を最適化することにより、消費魔素を抑えながら明るくすることができます。
3時間程度で魔素切れにより消灯するものが、夜間点灯であれば1週間はもつようになります。
ランタンへの術式の上書きを実行します。》
ランタンの光量があがり、薄暗かった部屋が隅々まで明るくなった。
現金なもので、ちょっと落ち込んでいたレイの気持ちも、ランタンとともに明るくなった気がした。
《あわせて、部屋の光りを外に漏らさない偽装と、室内の会話を外に聞こえないようにしました。》
「モヒンダ、それも魔素を使用した術式の展開でできるのか。
他にはどんなことができるようになるんだ。」
AI人格であるモヒンダは、周囲の魔素を利用した道具や、ラナの身体強化を解析し、最適化を進めてるようだった。
《ラナ殿からは、身体強化、索敵、剣に付加された鋭利化、自動修復、強化を解析し、最適化を行いました。
また、ブレスレットの中の「万能図書」から、世界の武術を収集し、魔素と融合することにより、伝説的な技を実用化しました。
マスターが元の世界でVRゲームで実装していた、一瞬で短い距離を移動する縮地、超至近距離で身体の内部に大きな打撃を通す発勁、剣や手刀でのスラッシュ、小石などを指で弾いて的にあてる指弾などです。
ただし、マスターの基礎となる体力がともなわないため、大幅な身体強化はできず、リミッターをかけています。》
レイは腰掛けていたベッドから立ち上がり、頭の中で「縮地」とつぶやきながらドアの方に移動してみた。
原理はわからないが、空間がねじまがるような感覚の後、ドアの前に立っていた。
ベッドの方に振り返り、軽くシャドゥ・ボクシングをしてみると、予備動作がなく素早くキレのあるジャブ、伸びのある重いストレート、あたったら首ごと刈り取ってしまいそうなフックを放つことができた。
本来の自分にはかけ離れた動きではあるが、違和感なく武芸の達人のように使いこなすことができた。
スラッシュや指弾は、部屋の中のものを壊しそうなので、明日確認することにした。
《ニコル殿の道具からは、道具に付与された術式を解析しました。
ランタン、コンロなど、生活用具。
ニコル殿の持つ魔素を練り込んだ皮のバッグからは、見た目の容積以上にモノを収納する術式を解析しました。
マスターのブレスレットに魔素を利用した収納、魔素そのものを蓄積する機能を追加しました。
魔素量の上限がなくなるため、無制限の収納量を実現しました。
また、時空への干渉が可能となり、暖かいもの、冷たいものの状態固定、調理などでの煮込み等の短縮化することができます。》
「そうか、ライトノベルにでてくる魔道具やアイテム・ボックスが実装できると、この世界でだいぶ生活しやすくなりそうだな。
モヒンダ、王道の魔術は使えるのかなぁ。」
さっきまでどうしたらいいんだろうと悩んでいたが、ちょっとワクワクしながら聞いてみた。
《残念ですが、現時点では不明です。
マスターがワクワクしている「地」「水」「火」「風」「光」「闇」の魔法は存在すると思われますが、未確認のため対応できない状態です。》
「そうか、確認ができたら解析をすすめて、僕が使えるようにしてくれ。」
ちょっと、残念な気分になったが、まだ使えないわけじゃないと気を取り直した。
《マスター、今晩は魔素を身体に循環させ、なじませると同時に身体の基礎データを向上させてはいかがでしょうか。》
「わかった、モヒンダの推奨設定であれば、そうしよう。
こっちで何かやることはあるかい。」
《ベッドに横になっていただければ、特にありません。
こちらで魔素を身体に循環させますので、軽く意識していただいて、そのまま就寝してください。》
早速ベッドに横になると、モヒンダが遠隔でランタンの灯を落としてくれた。
しばらくするとブレスレットを起点に体中にエネルギーが満たされていく、おそらくこれが魔素なのだろう。
ゆっくりとした呼吸に合わせて魔素が動いていく。
左足の裏→尾てい骨→心臓→左手→首→頭頂部→眉間→右手→へそ→右足の裏→左足の裏と、循環させていく。
最初動きが硬かった魔素が、なめらかに動くようになっていく。
穏やかな光に包まれ、気持ちの底にあった不安が消え、多幸感にみたされる。
落ち着いた気持ちのまま、レイは眠りに落ちていく。
《マスター、良い眠りを。》
異世界に飛ばされて、いい人に助けられたのは奇跡的なことかもしれない。
ただ、この世界でどうしたらいいのか、どう生きたらいいのか、まったくわからない状態だ。
体感的には、午後7時くらいだろうか。
窓の外は夕焼けが終わり、夜の帳が降りようとしている。
日本にいる時は、街灯があり、生活している家の灯、コンビニの灯、車のライト、店のネオン、街中に光りが溢れていた。
この世界では、街灯などなく、部屋の灯も薄暗いランタンしかなく、気持ちもどことなく暗く沈みがちになる。
ただ、夜空にかかる青い下弦の月は、街を神秘的な光で包み込んでくれる。
これから、朝まで何時間あるのだろうか。
ネット環境も、タブレットやパソコンもない状態で、途方に暮れてしまう。
パソコンでレポートを書いたり、タブレットをダラダラいじってたりするだけで、時間が過ぎていってたのが今は懐かしく感じる。
《マスター、報告してもいいでしょうか。》
一緒に異世界に飛ばされてしまったAI人格であるモヒンダが、思考のデススパイラルに陥りそうになる自分を気にかけながら話しかける。
「あぁ、モヒンダか。
元の世界に戻れる方法でも、見つかったのかい?」
そんなに簡単に元の世界に戻れるなんて思わないが、とりあえず聞いてみる。
《いいえ、元の世界に戻れるかどうか検討する材料が不足しています。
今後、情報収集し、解析することで、検討したいと思います。》
「そうか、では報告したいことってなんだい。」
《この宿のランタンの灯ですが、ロウソクでも油でもないのにお気づきでしょうか。
魔素が石のように固まったものをセットし、ランタンに記録された術式を起動することで、発光させていました。》
「そんなこともあるのか。
でもLED蛍光灯に比べたら、だいぶ光が暗くなってるよね。」
《魔素を使用する術式を最適化することにより、消費魔素を抑えながら明るくすることができます。
3時間程度で魔素切れにより消灯するものが、夜間点灯であれば1週間はもつようになります。
ランタンへの術式の上書きを実行します。》
ランタンの光量があがり、薄暗かった部屋が隅々まで明るくなった。
現金なもので、ちょっと落ち込んでいたレイの気持ちも、ランタンとともに明るくなった気がした。
《あわせて、部屋の光りを外に漏らさない偽装と、室内の会話を外に聞こえないようにしました。》
「モヒンダ、それも魔素を使用した術式の展開でできるのか。
他にはどんなことができるようになるんだ。」
AI人格であるモヒンダは、周囲の魔素を利用した道具や、ラナの身体強化を解析し、最適化を進めてるようだった。
《ラナ殿からは、身体強化、索敵、剣に付加された鋭利化、自動修復、強化を解析し、最適化を行いました。
また、ブレスレットの中の「万能図書」から、世界の武術を収集し、魔素と融合することにより、伝説的な技を実用化しました。
マスターが元の世界でVRゲームで実装していた、一瞬で短い距離を移動する縮地、超至近距離で身体の内部に大きな打撃を通す発勁、剣や手刀でのスラッシュ、小石などを指で弾いて的にあてる指弾などです。
ただし、マスターの基礎となる体力がともなわないため、大幅な身体強化はできず、リミッターをかけています。》
レイは腰掛けていたベッドから立ち上がり、頭の中で「縮地」とつぶやきながらドアの方に移動してみた。
原理はわからないが、空間がねじまがるような感覚の後、ドアの前に立っていた。
ベッドの方に振り返り、軽くシャドゥ・ボクシングをしてみると、予備動作がなく素早くキレのあるジャブ、伸びのある重いストレート、あたったら首ごと刈り取ってしまいそうなフックを放つことができた。
本来の自分にはかけ離れた動きではあるが、違和感なく武芸の達人のように使いこなすことができた。
スラッシュや指弾は、部屋の中のものを壊しそうなので、明日確認することにした。
《ニコル殿の道具からは、道具に付与された術式を解析しました。
ランタン、コンロなど、生活用具。
ニコル殿の持つ魔素を練り込んだ皮のバッグからは、見た目の容積以上にモノを収納する術式を解析しました。
マスターのブレスレットに魔素を利用した収納、魔素そのものを蓄積する機能を追加しました。
魔素量の上限がなくなるため、無制限の収納量を実現しました。
また、時空への干渉が可能となり、暖かいもの、冷たいものの状態固定、調理などでの煮込み等の短縮化することができます。》
「そうか、ライトノベルにでてくる魔道具やアイテム・ボックスが実装できると、この世界でだいぶ生活しやすくなりそうだな。
モヒンダ、王道の魔術は使えるのかなぁ。」
さっきまでどうしたらいいんだろうと悩んでいたが、ちょっとワクワクしながら聞いてみた。
《残念ですが、現時点では不明です。
マスターがワクワクしている「地」「水」「火」「風」「光」「闇」の魔法は存在すると思われますが、未確認のため対応できない状態です。》
「そうか、確認ができたら解析をすすめて、僕が使えるようにしてくれ。」
ちょっと、残念な気分になったが、まだ使えないわけじゃないと気を取り直した。
《マスター、今晩は魔素を身体に循環させ、なじませると同時に身体の基礎データを向上させてはいかがでしょうか。》
「わかった、モヒンダの推奨設定であれば、そうしよう。
こっちで何かやることはあるかい。」
《ベッドに横になっていただければ、特にありません。
こちらで魔素を身体に循環させますので、軽く意識していただいて、そのまま就寝してください。》
早速ベッドに横になると、モヒンダが遠隔でランタンの灯を落としてくれた。
しばらくするとブレスレットを起点に体中にエネルギーが満たされていく、おそらくこれが魔素なのだろう。
ゆっくりとした呼吸に合わせて魔素が動いていく。
左足の裏→尾てい骨→心臓→左手→首→頭頂部→眉間→右手→へそ→右足の裏→左足の裏と、循環させていく。
最初動きが硬かった魔素が、なめらかに動くようになっていく。
穏やかな光に包まれ、気持ちの底にあった不安が消え、多幸感にみたされる。
落ち着いた気持ちのまま、レイは眠りに落ちていく。
《マスター、良い眠りを。》
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