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そのうち、ねこかいます
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三丁目の夕日坂。そこを登って最初の角にある一軒家、そこが僕の家だ。
夕焼けに照らされた坂道を駆け上がって、一目さんに家に向かう。
あんまり遅くなると、ママが心配するもの。
「ただいまー!」
「うにゃー!」
玄関を開けて、大きな声で挨拶。僕が帰ってきたことを知らせなければ。
一緒に帰ってきたみーちゃんも、一緒に挨拶をしてくれた。
なんだか嬉しくなってみーちゃんを見れば、みーちゃんも大きくてまん丸な目で僕を見ている。
僕たち似たもの同士だね。
ふすふす、顔をひっつけて笑い合う。
「あらあら、みーちゃん、ハルちゃん、お帰りなさい。ちゃんと手を洗うのよ?」
ママがリビングから顔を覗かせて、にこにこしている。
僕はママがハルちゃんって僕のことを呼んでくれるのが大好き。
桜がきれいに咲いていた春に生まれたから、ハルちゃん。モモちゃんとも悩んだらいしけど、僕が男の子だからハルちゃんにしたって、前に話してくれた。
ま、僕はどんな名前だって気にしないけど。大好きな人たちに呼んでもらえる名前なら、なんだっていいじゃない。
「ママ、今日のご飯なに?」
「みゃー」
お腹が減ったのか、みーちゃんも夕ご飯を催促しているみたいだ。
でも、仕方がないよね。だって今日は、お外でいっぱい遊んだもの。
「そうねぇ。今日は暑いから、さっぱりした和風パスタにしようと思ってるわ。上に鰹節ふりかけて、梅を混ぜるの」
「やった!鰹節大好き!」
「あらあら、まるで猫みたいね」
今日の夕ご飯、鰹節があるなんて最高だ!
あんまりたくさんは食べられないけど、美味しいからついついたくさん食べちゃうんだよね。途中でママから「もうやめなさい」ってストップさせられちゃうけど。
「さ、それよりまずは水分補給よ。お外で遊んで、汗かいたでしょう?」
冷蔵庫は大きくて届かないし、重くて開けられないから、ママが水を用意してくれる。
たしかに喉は乾いた。
汲まれた水を勢いよく飲み干していれば、そばでみーちゃんも水をごくごく飲んでいる。いい飲みっぷりだ。よっぽど喉が乾いてたんだな。
「ねえママ」
唐突に切り出した。
「なあに?」
ママがにこやかに返事をする。
「にゃんこ飼いたい」
「あら、家にはもうにゃんこいるじゃない」
「にゃー!」
やだやだ、なんでそんなこと言うのさ!
「だってー。ハルもお友達欲しいよね!?」
ママを見ていたみーちゃんが、ぐりんと僕の方に顔を向けた。
やだよ! 僕一匹でいいじゃん!
「そうねえ。たしかにもう一匹いたら、ハルも寂しくないかしら?」
「でしょー?」
「でも、そのお話はパパが帰ってきてから! まあパパも賛成しそうだけど、その内ね」
ママ、その内って言った? 猫飼うの? その内、猫飼いますの?
嘘でしょ!? もうその家、ネコ科いますよ? 僕っていう、超可愛いネコ科のにゃんこいますよ?
ねえ、みーちゃん、ママ、聞いてる!?
「ゔにゃー!」
「ハルうるさい!」
酷いや!
(その内、猫飼います/その家、ネコ科います)
夕焼けに照らされた坂道を駆け上がって、一目さんに家に向かう。
あんまり遅くなると、ママが心配するもの。
「ただいまー!」
「うにゃー!」
玄関を開けて、大きな声で挨拶。僕が帰ってきたことを知らせなければ。
一緒に帰ってきたみーちゃんも、一緒に挨拶をしてくれた。
なんだか嬉しくなってみーちゃんを見れば、みーちゃんも大きくてまん丸な目で僕を見ている。
僕たち似たもの同士だね。
ふすふす、顔をひっつけて笑い合う。
「あらあら、みーちゃん、ハルちゃん、お帰りなさい。ちゃんと手を洗うのよ?」
ママがリビングから顔を覗かせて、にこにこしている。
僕はママがハルちゃんって僕のことを呼んでくれるのが大好き。
桜がきれいに咲いていた春に生まれたから、ハルちゃん。モモちゃんとも悩んだらいしけど、僕が男の子だからハルちゃんにしたって、前に話してくれた。
ま、僕はどんな名前だって気にしないけど。大好きな人たちに呼んでもらえる名前なら、なんだっていいじゃない。
「ママ、今日のご飯なに?」
「みゃー」
お腹が減ったのか、みーちゃんも夕ご飯を催促しているみたいだ。
でも、仕方がないよね。だって今日は、お外でいっぱい遊んだもの。
「そうねぇ。今日は暑いから、さっぱりした和風パスタにしようと思ってるわ。上に鰹節ふりかけて、梅を混ぜるの」
「やった!鰹節大好き!」
「あらあら、まるで猫みたいね」
今日の夕ご飯、鰹節があるなんて最高だ!
あんまりたくさんは食べられないけど、美味しいからついついたくさん食べちゃうんだよね。途中でママから「もうやめなさい」ってストップさせられちゃうけど。
「さ、それよりまずは水分補給よ。お外で遊んで、汗かいたでしょう?」
冷蔵庫は大きくて届かないし、重くて開けられないから、ママが水を用意してくれる。
たしかに喉は乾いた。
汲まれた水を勢いよく飲み干していれば、そばでみーちゃんも水をごくごく飲んでいる。いい飲みっぷりだ。よっぽど喉が乾いてたんだな。
「ねえママ」
唐突に切り出した。
「なあに?」
ママがにこやかに返事をする。
「にゃんこ飼いたい」
「あら、家にはもうにゃんこいるじゃない」
「にゃー!」
やだやだ、なんでそんなこと言うのさ!
「だってー。ハルもお友達欲しいよね!?」
ママを見ていたみーちゃんが、ぐりんと僕の方に顔を向けた。
やだよ! 僕一匹でいいじゃん!
「そうねえ。たしかにもう一匹いたら、ハルも寂しくないかしら?」
「でしょー?」
「でも、そのお話はパパが帰ってきてから! まあパパも賛成しそうだけど、その内ね」
ママ、その内って言った? 猫飼うの? その内、猫飼いますの?
嘘でしょ!? もうその家、ネコ科いますよ? 僕っていう、超可愛いネコ科のにゃんこいますよ?
ねえ、みーちゃん、ママ、聞いてる!?
「ゔにゃー!」
「ハルうるさい!」
酷いや!
(その内、猫飼います/その家、ネコ科います)
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