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本編
雨の降る喫茶店
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まいの章
村上レイは親友だ。
いや、親友だったーーという方が正しいのだろうか。
ふう、とため息をつく。
静かに雨の降る土曜日の午後。
広瀬まいはおしゃれな喫茶店で、長ったらしい名前の甘ったるいコーヒーを飲んでいた。
「なーにぃ、まいったらー。ため息なんかついちゃってぇ。もしや、恋煩いかーっ?」
まいの友達ーー佐藤みゆきは、まいの小さなため息も見逃さない。
くつくつと笑い、冗談めかしてまいに問う。
いつも通りの、ありふれたごく普通の会話。
「ち、違うよーーそんなんじゃないって」
「じゃ、なにさぁ」
「レイーー村上レイの事、ちょっと考えてた」
刹那、みゆきの顔から笑顔が消える。
数秒、沈黙。
窓ガラスに、つうと雨が伝う。
「……あいつの事なんか、早く忘れちゃいなよ」
さっきまでとは違う、重苦しい声のトーン。
表情で。声で。目で。
明らかな嫌悪を感じる。
怖い。怖い。怖い。
「そ、そう……だね」
必死に口角を上げる。
明るい声を作る。
まいにはそれを言うのが精一杯だった。
そう、レイは。
村上ーーレイは。
私たちが、殺した。
村上レイは親友だ。
いや、親友だったーーという方が正しいのだろうか。
ふう、とため息をつく。
静かに雨の降る土曜日の午後。
広瀬まいはおしゃれな喫茶店で、長ったらしい名前の甘ったるいコーヒーを飲んでいた。
「なーにぃ、まいったらー。ため息なんかついちゃってぇ。もしや、恋煩いかーっ?」
まいの友達ーー佐藤みゆきは、まいの小さなため息も見逃さない。
くつくつと笑い、冗談めかしてまいに問う。
いつも通りの、ありふれたごく普通の会話。
「ち、違うよーーそんなんじゃないって」
「じゃ、なにさぁ」
「レイーー村上レイの事、ちょっと考えてた」
刹那、みゆきの顔から笑顔が消える。
数秒、沈黙。
窓ガラスに、つうと雨が伝う。
「……あいつの事なんか、早く忘れちゃいなよ」
さっきまでとは違う、重苦しい声のトーン。
表情で。声で。目で。
明らかな嫌悪を感じる。
怖い。怖い。怖い。
「そ、そう……だね」
必死に口角を上げる。
明るい声を作る。
まいにはそれを言うのが精一杯だった。
そう、レイは。
村上ーーレイは。
私たちが、殺した。
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