4 / 7
第1章
最弱な男4
しおりを挟む
ゼロはリアと食事に来ていた。
ゼロは節約のためにコストパフォーマンスの良い野菜炒めがメインのランチを頼んでいた。
「…食べる?」
そんなゼロを見兼ねてなのか、リアは自分の注文したステーキをフォークで指した。
「気持ちだけ受け取っておく。リアは肉が好きなんだろ?」
「…どうしてわかるの?」
ゼロは小さく微笑む。
「色なんか見えなくてもわかりやすいぞ。」
「…馬鹿にしてる?」
その発言にゼロは大きく笑った。
「してないさ。」
ゼロは野菜を少しリアの皿に乗せた。
「…なに?」
「野菜が少ないからな。」
「…野菜嫌い。」
「だと思った。でも食べないと大きくならないぞ。近所のおばさんがよく言っていたからな。」
リアは自分の胸を押さえた。
「…エッチ。」
「ち、違うからな!身長とかの話だ!」
「…余計なお世話。」
そう言いつつもリアはのせられた野菜炒めをフォークで器用に食べた。
「…美味しいか?」
「…嫌い。…大きくなる?」
「なれるさ。好き嫌いしなければな。」
するとまたリアは胸を押さえた。
「…やっぱりエッチ。」
「そっちの話だったのかよ!」
リアはゼロの反応に可愛らしく口元に手を当ててクスッと笑った。
「…嫌いなものある?」
「食べ物だよな?…そうだなぁ。無いかもな。」
ゼロは野菜を美味しそうに食べてみせた。
「でもご飯は1人より誰かと食べた方が美味しいとは思う。だから今は美味しいな。」
「…いま?」
「そう。俺は一人暮らしだから。」
リアは食べる手を止めた。
「…寂しくない?」
「もうずっと一人暮らしだから慣れたんだ。それに近所には家族のような人たちがいるから。」
ゼロは小さく笑った。
そんなゼロをリアは魔法を使って観察した。
(…青くない…。)
リアはゼロが自分の感情に嘘をついていないと気がついた。
そして今は嬉しいと感じていることも。
「…嬉しい?」
「なにがだ?」
「…今の気持ち。」
ゼロの大きく頷いた。
「リアみたいな美人と食事できれば嬉しいさ。」
「…ん。…ありがたく思う。」
「わかったよ。ありがとな。」
ゼロはまた箸を動かした。
そんな食事をする2人の元に1人の人物がやってきた。
「…隣…よいかのぅ?」
それは他でもない学園長だった。
食堂に学園長が来るという事態に他の生徒たちは驚いている。
「…学園長先生。」
「…先生も食堂でご飯ですか?」
「わしも腹は減るからのぅ。」
学園長は許可もなく2人の横に座った。
「こちらのお嬢さんはゼロくんの恋人じゃな?」
「違います!クラスメイトのリアです。」
「ん。…リア・フレイン。」
「そうじゃったか。美人さんじゃのぅ。」
「ん。…知ってる。」
学園長は大きく笑った。
「2人に聞いてもよいかのぅ?」
「なんですか?」
「夢はなんじゃ?」
その質問にリアが先に口を開いた。
「…お嫁さん。」
「可愛らしいのぅ。しかしそれならばどうして学園に来たのじゃ?」
「…お婿さん選び。」
「なるほどのぅ。将来は貴族になるものもおるからのぅ。今のうちからというわけじゃな。」
その会話にゼロは少し暗い表情をした。
(…なら俺と居ても仕方ないな。俺は…貴族になんかなれない。)
そんなゼロに学園長が声をかけた。
「それでゼロくんは?」
ゼロは小さく首を振った。
「俺は…夢なんて大それたものはないです。」
「では、何をしに来たのじゃ?」
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…大切な人を支えられる魔法が使える魔術師になるために…俺はここに来ました。」
その言葉に学園長は大きく頷いた。
「…お主はやはり優しいのぅ。」
学園長はリアに告げる。
「ゼロくんはいい男になる。今のうちじゃぞ。」
「ん。…知ってる。」
ゼロはそう言われるも表情は暗い。
魔法主義である以上はゼロに明るい未来は訪れないかもしれないから。
そうしてゼロはゆっくりと食事をするのだった。
「Dクラスが優遇されているというのは本当らしいな。あそこの2人はDクラスらしい。」
「どうして僕らじゃないんだ!この学園を代表するのは僕らなのに。」
Sクラスの連中は学園長と食事をする2人を見て気分を害していた。
「…ふむ。確かにこれでは納得できないね。」
そう告げたのはSクラスの人たちの中心にいる人物だった。
「そうですよね、カインズ様!」
「カインズ様が言うならやっぱりおかしいんだ!」
その人物はカインズ・バルア・ユーミリア。
今年入学した生徒の中で断トツの魔力値を叩き出し、尚且つこの国の王子である人物だった。
「…僕が代表で話してくるとしよう。」
カインズは席を立ち、ゼロ達の先まで近づいて行った。
「わしを待たなくても良いのじゃぞ?」
「いえ、1人でご飯というのは美味しくないですから。」
「ん。ゼロがさっき言ってた…。」
学園長は小さく微笑んだ。
現在ゼロとリアは食事を終えてまだ食べている学園長が食べ終わるのを待っている状況だ。
「ではわしも急いで食べるかのぅ。」
学園長はそう言って橋を進めた。
するとそこに金髪の髪を綺麗にまとめた男子生徒がやってきた。
ゼロとリアはその人物を見て軽く頭を下げた。
「お食事中失礼するよ。」
そこにやってきたのはカインズだった。
カインズはゼロとリアにそう言って学園長に目を向けた。
「どうしたのじゃ?」
「学園長先生、どうしてこのお二人とお食事を?」
「ゼロくんとリアちゃんかのぅ?」
その言葉にカインズは少し驚く。
(学園長先生に名前を覚えてもらっているようだね…。)
この学園で学園長に名前を覚えてもらえるということはそれだけ気に入られていることを意味していた。それは王族としても例外ではない。
「すまぬがお主の名を聞いてよいかのぅ?王子というのは知っておるのじゃが…。」
そう。学園長は王族ですら覚えていない。だからこそ、学園長に名を覚えてもらうことは名誉なことであった。
「…カインズです。」
「そうじゃったな。カインズくんじゃ。」
学園長は心のモヤモヤが晴れて少しホッとしたような顔をしていた。
「わしがこの2人と食事をするのは話を聞きたかったからじゃ。」
「どのようなお話を?」
学園長はゼロの方を見た。
「夢じゃよ。この学園に来た理由を聞いておった。」
カインズは学園長に告げる。
「では明日からは僕たちSクラスの生徒と食事をしませんか?」
「なぜじゃ?」
「Sクラスの僕たちの夢の方が現実的で壮大です。聞く価値はあるかと…。」
その言葉に学園長は首を振った。
「聞かんでもよいのぅ。」
その言葉にカインズは少し不機嫌になった。
「どうしてですかっ!僕らはこの国を背負って立つSクラスですが…。」
「Sクラスの者は皆そうじゃ。皆王国のために働くと申すのじゃ。」
学園長は箸を止め、寂しそうな顔をする。
「わしから言わせれば…この国のために魔法を覚え、戦争で死んでゆく者の名を覚えるほど…悲しいことはない。」
この発言で述べたことが学園長が名前を覚えない最大の理由でもあった。
「…お主の夢は何じゃ?この学園でなにを成す?」
その言葉にカインズは口を閉ざす。
(…そんなもの…1つしか…。)
カインズはゆっくりと口を開く。
「…偉大な国王に…。」
「…お主が思う偉大とは何じゃ?」
「……。」
「…やはりわしは…この2人の夢の方が好きじゃな。」
カインズは頭を下げたままの2人に目を移した。
「…僕より…優れていると…?」
「…そうじゃな。信念の強さで言えば…お主に勝ち目はない。偉大が何かを言い切れぬ時点で…お主は生き方を見失っておる。」
カインズは拳を強く握った。
「…わしは2人を待たせておるのじゃ。すまんがここまでにしてくれぬか?」
…ケインズくん。
カインズはゼロを睨みつけた。
「…ゼロくん…だったかい?」
その言葉にゼロは顔を上げた。
「…僕と勝負をしないか?」
「…し、勝負?」
その言葉に学園長は目を見開く。
「学園長先生に気に入られた君の力を見てみたい。」
ゼロは口を閉ざした。
「待つのじゃ!ゼロくんとの決闘は…。」
「これは僕と彼の問題です!先生でも僕たちの決闘を決める権利はありません!」
学園長は口を閉ざしてゼロを見た。
(…やめるべきじゃぞ。お主は…。)
学園長が見つめるゼロはゆっくりと口を開いた。
「…俺は弱いです。」
「…知っているつもりだ。Dクラスなのだから。」
「…俺が気に入られてるかはわかりません。学園長先生は面白がっているだけかもしれませんから。」
ゼロは学園長を見て小さく微笑む。
「…でも…。…学園長先生が俺を評価してくれた部分で負けるわけにはいきません。」
その言葉に学園長は目を見開く。
(まさか…ゼロくん…。)
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…受けて立ちます!俺は心で…敗者になるつもりはありません。」
その言葉にリアと学園長はゼロを見つめた。
「…楽しみにしているよ。」
カインズはそう言って立ち去った。
その瞬間、周りの席で関係ない生徒達が騒ぎ始めた。
学園長はゼロに告げる。
「…すまなかったのぅ。」
ゼロは頭を下げる学園長に声をかけた。
「先生が謝ることはないです。むしろ俺は嬉しかったので。魔法で大事なのは精神…心です。その心で評価してもらえるなんて…。」
…最高の褒め言葉です。
学園長はこれまでの人生で一番の衝撃を受けた。
(…ゼロくんは…忘れてはならん。わしが死ぬまで…見守らねば…。)
ゼロはリアに話しかけられる。
「…無謀。」
「そうだよな。俺もそう思う。負けるのは目に見えてるから。」
「ん。…頭悪い。」
「そ、そこまでいうか!?」
リアは小さく口元を緩めた。
「…格好良かった。」
「…えっ?」
リアは少し頬を染めていた。
「…応援する。」
「ま、負けるぞ?」
「ん。…ボコボコ。」
ゼロはため息をついた。
「…じゃあ、魔法の特訓でもしてみるかな。」
ゼロはそう告げて苦笑いを浮かべるのだった。
そしてこの日の翌日。
学年最強と学年最弱の決闘が始まるのだった。
ゼロは節約のためにコストパフォーマンスの良い野菜炒めがメインのランチを頼んでいた。
「…食べる?」
そんなゼロを見兼ねてなのか、リアは自分の注文したステーキをフォークで指した。
「気持ちだけ受け取っておく。リアは肉が好きなんだろ?」
「…どうしてわかるの?」
ゼロは小さく微笑む。
「色なんか見えなくてもわかりやすいぞ。」
「…馬鹿にしてる?」
その発言にゼロは大きく笑った。
「してないさ。」
ゼロは野菜を少しリアの皿に乗せた。
「…なに?」
「野菜が少ないからな。」
「…野菜嫌い。」
「だと思った。でも食べないと大きくならないぞ。近所のおばさんがよく言っていたからな。」
リアは自分の胸を押さえた。
「…エッチ。」
「ち、違うからな!身長とかの話だ!」
「…余計なお世話。」
そう言いつつもリアはのせられた野菜炒めをフォークで器用に食べた。
「…美味しいか?」
「…嫌い。…大きくなる?」
「なれるさ。好き嫌いしなければな。」
するとまたリアは胸を押さえた。
「…やっぱりエッチ。」
「そっちの話だったのかよ!」
リアはゼロの反応に可愛らしく口元に手を当ててクスッと笑った。
「…嫌いなものある?」
「食べ物だよな?…そうだなぁ。無いかもな。」
ゼロは野菜を美味しそうに食べてみせた。
「でもご飯は1人より誰かと食べた方が美味しいとは思う。だから今は美味しいな。」
「…いま?」
「そう。俺は一人暮らしだから。」
リアは食べる手を止めた。
「…寂しくない?」
「もうずっと一人暮らしだから慣れたんだ。それに近所には家族のような人たちがいるから。」
ゼロは小さく笑った。
そんなゼロをリアは魔法を使って観察した。
(…青くない…。)
リアはゼロが自分の感情に嘘をついていないと気がついた。
そして今は嬉しいと感じていることも。
「…嬉しい?」
「なにがだ?」
「…今の気持ち。」
ゼロの大きく頷いた。
「リアみたいな美人と食事できれば嬉しいさ。」
「…ん。…ありがたく思う。」
「わかったよ。ありがとな。」
ゼロはまた箸を動かした。
そんな食事をする2人の元に1人の人物がやってきた。
「…隣…よいかのぅ?」
それは他でもない学園長だった。
食堂に学園長が来るという事態に他の生徒たちは驚いている。
「…学園長先生。」
「…先生も食堂でご飯ですか?」
「わしも腹は減るからのぅ。」
学園長は許可もなく2人の横に座った。
「こちらのお嬢さんはゼロくんの恋人じゃな?」
「違います!クラスメイトのリアです。」
「ん。…リア・フレイン。」
「そうじゃったか。美人さんじゃのぅ。」
「ん。…知ってる。」
学園長は大きく笑った。
「2人に聞いてもよいかのぅ?」
「なんですか?」
「夢はなんじゃ?」
その質問にリアが先に口を開いた。
「…お嫁さん。」
「可愛らしいのぅ。しかしそれならばどうして学園に来たのじゃ?」
「…お婿さん選び。」
「なるほどのぅ。将来は貴族になるものもおるからのぅ。今のうちからというわけじゃな。」
その会話にゼロは少し暗い表情をした。
(…なら俺と居ても仕方ないな。俺は…貴族になんかなれない。)
そんなゼロに学園長が声をかけた。
「それでゼロくんは?」
ゼロは小さく首を振った。
「俺は…夢なんて大それたものはないです。」
「では、何をしに来たのじゃ?」
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…大切な人を支えられる魔法が使える魔術師になるために…俺はここに来ました。」
その言葉に学園長は大きく頷いた。
「…お主はやはり優しいのぅ。」
学園長はリアに告げる。
「ゼロくんはいい男になる。今のうちじゃぞ。」
「ん。…知ってる。」
ゼロはそう言われるも表情は暗い。
魔法主義である以上はゼロに明るい未来は訪れないかもしれないから。
そうしてゼロはゆっくりと食事をするのだった。
「Dクラスが優遇されているというのは本当らしいな。あそこの2人はDクラスらしい。」
「どうして僕らじゃないんだ!この学園を代表するのは僕らなのに。」
Sクラスの連中は学園長と食事をする2人を見て気分を害していた。
「…ふむ。確かにこれでは納得できないね。」
そう告げたのはSクラスの人たちの中心にいる人物だった。
「そうですよね、カインズ様!」
「カインズ様が言うならやっぱりおかしいんだ!」
その人物はカインズ・バルア・ユーミリア。
今年入学した生徒の中で断トツの魔力値を叩き出し、尚且つこの国の王子である人物だった。
「…僕が代表で話してくるとしよう。」
カインズは席を立ち、ゼロ達の先まで近づいて行った。
「わしを待たなくても良いのじゃぞ?」
「いえ、1人でご飯というのは美味しくないですから。」
「ん。ゼロがさっき言ってた…。」
学園長は小さく微笑んだ。
現在ゼロとリアは食事を終えてまだ食べている学園長が食べ終わるのを待っている状況だ。
「ではわしも急いで食べるかのぅ。」
学園長はそう言って橋を進めた。
するとそこに金髪の髪を綺麗にまとめた男子生徒がやってきた。
ゼロとリアはその人物を見て軽く頭を下げた。
「お食事中失礼するよ。」
そこにやってきたのはカインズだった。
カインズはゼロとリアにそう言って学園長に目を向けた。
「どうしたのじゃ?」
「学園長先生、どうしてこのお二人とお食事を?」
「ゼロくんとリアちゃんかのぅ?」
その言葉にカインズは少し驚く。
(学園長先生に名前を覚えてもらっているようだね…。)
この学園で学園長に名前を覚えてもらえるということはそれだけ気に入られていることを意味していた。それは王族としても例外ではない。
「すまぬがお主の名を聞いてよいかのぅ?王子というのは知っておるのじゃが…。」
そう。学園長は王族ですら覚えていない。だからこそ、学園長に名を覚えてもらうことは名誉なことであった。
「…カインズです。」
「そうじゃったな。カインズくんじゃ。」
学園長は心のモヤモヤが晴れて少しホッとしたような顔をしていた。
「わしがこの2人と食事をするのは話を聞きたかったからじゃ。」
「どのようなお話を?」
学園長はゼロの方を見た。
「夢じゃよ。この学園に来た理由を聞いておった。」
カインズは学園長に告げる。
「では明日からは僕たちSクラスの生徒と食事をしませんか?」
「なぜじゃ?」
「Sクラスの僕たちの夢の方が現実的で壮大です。聞く価値はあるかと…。」
その言葉に学園長は首を振った。
「聞かんでもよいのぅ。」
その言葉にカインズは少し不機嫌になった。
「どうしてですかっ!僕らはこの国を背負って立つSクラスですが…。」
「Sクラスの者は皆そうじゃ。皆王国のために働くと申すのじゃ。」
学園長は箸を止め、寂しそうな顔をする。
「わしから言わせれば…この国のために魔法を覚え、戦争で死んでゆく者の名を覚えるほど…悲しいことはない。」
この発言で述べたことが学園長が名前を覚えない最大の理由でもあった。
「…お主の夢は何じゃ?この学園でなにを成す?」
その言葉にカインズは口を閉ざす。
(…そんなもの…1つしか…。)
カインズはゆっくりと口を開く。
「…偉大な国王に…。」
「…お主が思う偉大とは何じゃ?」
「……。」
「…やはりわしは…この2人の夢の方が好きじゃな。」
カインズは頭を下げたままの2人に目を移した。
「…僕より…優れていると…?」
「…そうじゃな。信念の強さで言えば…お主に勝ち目はない。偉大が何かを言い切れぬ時点で…お主は生き方を見失っておる。」
カインズは拳を強く握った。
「…わしは2人を待たせておるのじゃ。すまんがここまでにしてくれぬか?」
…ケインズくん。
カインズはゼロを睨みつけた。
「…ゼロくん…だったかい?」
その言葉にゼロは顔を上げた。
「…僕と勝負をしないか?」
「…し、勝負?」
その言葉に学園長は目を見開く。
「学園長先生に気に入られた君の力を見てみたい。」
ゼロは口を閉ざした。
「待つのじゃ!ゼロくんとの決闘は…。」
「これは僕と彼の問題です!先生でも僕たちの決闘を決める権利はありません!」
学園長は口を閉ざしてゼロを見た。
(…やめるべきじゃぞ。お主は…。)
学園長が見つめるゼロはゆっくりと口を開いた。
「…俺は弱いです。」
「…知っているつもりだ。Dクラスなのだから。」
「…俺が気に入られてるかはわかりません。学園長先生は面白がっているだけかもしれませんから。」
ゼロは学園長を見て小さく微笑む。
「…でも…。…学園長先生が俺を評価してくれた部分で負けるわけにはいきません。」
その言葉に学園長は目を見開く。
(まさか…ゼロくん…。)
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…受けて立ちます!俺は心で…敗者になるつもりはありません。」
その言葉にリアと学園長はゼロを見つめた。
「…楽しみにしているよ。」
カインズはそう言って立ち去った。
その瞬間、周りの席で関係ない生徒達が騒ぎ始めた。
学園長はゼロに告げる。
「…すまなかったのぅ。」
ゼロは頭を下げる学園長に声をかけた。
「先生が謝ることはないです。むしろ俺は嬉しかったので。魔法で大事なのは精神…心です。その心で評価してもらえるなんて…。」
…最高の褒め言葉です。
学園長はこれまでの人生で一番の衝撃を受けた。
(…ゼロくんは…忘れてはならん。わしが死ぬまで…見守らねば…。)
ゼロはリアに話しかけられる。
「…無謀。」
「そうだよな。俺もそう思う。負けるのは目に見えてるから。」
「ん。…頭悪い。」
「そ、そこまでいうか!?」
リアは小さく口元を緩めた。
「…格好良かった。」
「…えっ?」
リアは少し頬を染めていた。
「…応援する。」
「ま、負けるぞ?」
「ん。…ボコボコ。」
ゼロはため息をついた。
「…じゃあ、魔法の特訓でもしてみるかな。」
ゼロはそう告げて苦笑いを浮かべるのだった。
そしてこの日の翌日。
学年最強と学年最弱の決闘が始まるのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる