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級友
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「まさか、あんたがくるとは、ね···」
テーブルを挟み愛莉は、自分の前に小さく座っている篠崎彩奈を見た。
「ごめんなさい···」
「私だって、驚いたわよ?人事から聞いた時は···。ま、いいわ。食べましょ。早くしないと課長に怒られるから」
「はい···」
(ほんと、久し振りに会ったというのに、あいも変わらず暗いわねぇ!!)
愛莉は、クスリと笑うと一口サイズに切ったステーキを口に運んだ。
(ふふふっ。今夜は、どこに連れてって貰えるのかな?)
カチャッ···カチャッ···ガッ···
「······。」
セラミックタイルの床上に、フォークがカチャンッと落ち、店員が素早く、
「お客様大変申し訳ございません。こちらを···」
新しいフォークを彩奈に渡す。
「ほんとっ、グズ!なんだから···。ほら、早く食べちゃいなさい。切ってあげるから!」
手慣れた手付きで彩奈の皿に乗ってるリブステーキを一口サイズに切り、グラスに注がれた赤ワインを飲み干す。
「あの···お酒···。まだ···」
「大丈夫だって!ちゃんとお仕事してるし···」
不安げな表情で、私を見る彩奈···
(昔とちっとも変わらない。いつも、子猫のように震えてた···)
ランチを終え、社に戻った私と彩奈は、
「お昼、行ってきましたぁ」
「お、遅くなりました」
デスクでのんびりとスマホを弄ってる課長に言うと、席に着き仕事をし始めるも···
「あの···私、何をすれば?」
と周りに聞こうとするも、
「今日は、いいから。周りの様子見ていて。その内、わかるようになるから···」
そう言われ、おとなしく席に戻っては溜息をつく。
(えぇっ?!今日は、廻るお寿司なのぉ?)
届いたラインに顔をしかめる私。だって、今日は···
»その代わりと言っちゃなんだが···。VUITTONの新作でどうだ?今日、受け取りに行くんだけど···
(VUITTON!?わぁい!!)
途端に笑顔になる私。部屋には、彼からプレゼントされたブランド品が棚に陳列されている。
»»じゃ、今夜はいっぱい愛してね!
「送信!ふふっ」
「あ、高地さん!僕、ちょっと取引先行ってくるから!今日は、直帰するから!」
と山崎課長が、鞄に書類を詰めながら私に言ってくる。
「はぁい!!書いときまぁす」
席を立ち、ホワイトボードの山崎課長の欄に直帰と書いて、また席に戻る。
「そうだ!彩奈!他の社員さん紹介してあげる!」
ボーっとしてる彩奈を連れ、部に残っている社員ひとりひとりを簡単に紹介し終えると、午後の三時になり、他の子が買ってきたおやつを淹れたコーヒーと一緒に配っていった。
「三時に休憩って、あるんですね···」
「ま、もともとは無かったんだけどね···ふふ。ほら、ここって男性って外回りに出ちゃうと···」
彩奈にお菓子を勧めながら、営業部の1日を教えてあげた。
「···凄いね。私が前に仕事してたとこは、人数も少なかったから···」
三時の休憩を終え、暫くすると外回りに行っていた社員がポツポツと帰ってくる。
「はい。今日、誕生日なんだろ?これ、ほんの気持ちだけど···」
佐々木さんが、コッソリと小さな箱を渡してきた。
「へへっ。ありがと···」
(お願いしていたブランドのだ!)
それをコッソリと机の引き出しに隠す。
「そういや、彩奈も今日誕生日だったよね?」
「え?うん···。でも、私は···」
「彼氏は?いるの?」
(確か、彩奈のうちは父子家庭だったような?)
「ううん。いない。いたら良かったんだけど···」
仕事をしながらも、彩奈と話す。昔の私だったら、彩奈みたいな性格は嫌いだったから、よく苛めていた。
「高地さん。変わったね···」
「そう?ね、今度さ、うちおいでよ!!一緒にご飯食べたり、お酒飲も!」
「うん···」
彩奈は、些か煮えきらない態度ではあったが、昔の事を思い出したのか頷いた。
五時のチャイムが鳴り、慌ただしくみな帰り支度をする。
「···じゃ、お先に失礼します」
彩奈は、バカ丁寧に頭を下げ、ドアの外に消えた。
「ねね、高地さんと篠崎さん。同じ高校ってほんと?あんなにおとなしいの?」
腕時計で時間を確認しながらも、同僚と一緒に華を咲かし、
「─じゃね。また、明日!」
「はーい!お疲れ様ー」
残業で残る社員の言葉を背中に浴びて、私はある場所に向かった。
「お、ま、た、せ!ど?」
今朝着ていた服を脱いで、この間彼に買って貰ったワンピース姿で現れると、彼は嬉しそうに笑った。
「似合うよ。可愛い。じゃ、行こっか?」
「はぁい!!」
彼が運転するLEXUSに身を乗り込ませると、車は滑らかに走り出す···
「誕生日おめでとう。愛莉」
彼の手が、私の膝にくると段々と滑らせていく。
「だぁめ。まだ早い···もん···」
そう言うと彼は、少し寂しそうに笑うも手の動きは止めない···
彼と廻るお寿司屋に来るのは、そうないがそれなりに美味しかったし、途中で寄ったブランドショップでは、おねだりしたバッグも買って貰えた。モチロン、誕生日プレゼントも!!
「今日は、愛莉凄く幸せ···」
彼の腕に絡まり、リザーブしたホテルの部屋へと向かう愛莉の頭には、これから自分の身に危険が迫ってくるとは思わなかっただろう···
チーンッ···
「父さん、母さん。ただいま。今日ね···」
テーブルを挟み愛莉は、自分の前に小さく座っている篠崎彩奈を見た。
「ごめんなさい···」
「私だって、驚いたわよ?人事から聞いた時は···。ま、いいわ。食べましょ。早くしないと課長に怒られるから」
「はい···」
(ほんと、久し振りに会ったというのに、あいも変わらず暗いわねぇ!!)
愛莉は、クスリと笑うと一口サイズに切ったステーキを口に運んだ。
(ふふふっ。今夜は、どこに連れてって貰えるのかな?)
カチャッ···カチャッ···ガッ···
「······。」
セラミックタイルの床上に、フォークがカチャンッと落ち、店員が素早く、
「お客様大変申し訳ございません。こちらを···」
新しいフォークを彩奈に渡す。
「ほんとっ、グズ!なんだから···。ほら、早く食べちゃいなさい。切ってあげるから!」
手慣れた手付きで彩奈の皿に乗ってるリブステーキを一口サイズに切り、グラスに注がれた赤ワインを飲み干す。
「あの···お酒···。まだ···」
「大丈夫だって!ちゃんとお仕事してるし···」
不安げな表情で、私を見る彩奈···
(昔とちっとも変わらない。いつも、子猫のように震えてた···)
ランチを終え、社に戻った私と彩奈は、
「お昼、行ってきましたぁ」
「お、遅くなりました」
デスクでのんびりとスマホを弄ってる課長に言うと、席に着き仕事をし始めるも···
「あの···私、何をすれば?」
と周りに聞こうとするも、
「今日は、いいから。周りの様子見ていて。その内、わかるようになるから···」
そう言われ、おとなしく席に戻っては溜息をつく。
(えぇっ?!今日は、廻るお寿司なのぉ?)
届いたラインに顔をしかめる私。だって、今日は···
»その代わりと言っちゃなんだが···。VUITTONの新作でどうだ?今日、受け取りに行くんだけど···
(VUITTON!?わぁい!!)
途端に笑顔になる私。部屋には、彼からプレゼントされたブランド品が棚に陳列されている。
»»じゃ、今夜はいっぱい愛してね!
「送信!ふふっ」
「あ、高地さん!僕、ちょっと取引先行ってくるから!今日は、直帰するから!」
と山崎課長が、鞄に書類を詰めながら私に言ってくる。
「はぁい!!書いときまぁす」
席を立ち、ホワイトボードの山崎課長の欄に直帰と書いて、また席に戻る。
「そうだ!彩奈!他の社員さん紹介してあげる!」
ボーっとしてる彩奈を連れ、部に残っている社員ひとりひとりを簡単に紹介し終えると、午後の三時になり、他の子が買ってきたおやつを淹れたコーヒーと一緒に配っていった。
「三時に休憩って、あるんですね···」
「ま、もともとは無かったんだけどね···ふふ。ほら、ここって男性って外回りに出ちゃうと···」
彩奈にお菓子を勧めながら、営業部の1日を教えてあげた。
「···凄いね。私が前に仕事してたとこは、人数も少なかったから···」
三時の休憩を終え、暫くすると外回りに行っていた社員がポツポツと帰ってくる。
「はい。今日、誕生日なんだろ?これ、ほんの気持ちだけど···」
佐々木さんが、コッソリと小さな箱を渡してきた。
「へへっ。ありがと···」
(お願いしていたブランドのだ!)
それをコッソリと机の引き出しに隠す。
「そういや、彩奈も今日誕生日だったよね?」
「え?うん···。でも、私は···」
「彼氏は?いるの?」
(確か、彩奈のうちは父子家庭だったような?)
「ううん。いない。いたら良かったんだけど···」
仕事をしながらも、彩奈と話す。昔の私だったら、彩奈みたいな性格は嫌いだったから、よく苛めていた。
「高地さん。変わったね···」
「そう?ね、今度さ、うちおいでよ!!一緒にご飯食べたり、お酒飲も!」
「うん···」
彩奈は、些か煮えきらない態度ではあったが、昔の事を思い出したのか頷いた。
五時のチャイムが鳴り、慌ただしくみな帰り支度をする。
「···じゃ、お先に失礼します」
彩奈は、バカ丁寧に頭を下げ、ドアの外に消えた。
「ねね、高地さんと篠崎さん。同じ高校ってほんと?あんなにおとなしいの?」
腕時計で時間を確認しながらも、同僚と一緒に華を咲かし、
「─じゃね。また、明日!」
「はーい!お疲れ様ー」
残業で残る社員の言葉を背中に浴びて、私はある場所に向かった。
「お、ま、た、せ!ど?」
今朝着ていた服を脱いで、この間彼に買って貰ったワンピース姿で現れると、彼は嬉しそうに笑った。
「似合うよ。可愛い。じゃ、行こっか?」
「はぁい!!」
彼が運転するLEXUSに身を乗り込ませると、車は滑らかに走り出す···
「誕生日おめでとう。愛莉」
彼の手が、私の膝にくると段々と滑らせていく。
「だぁめ。まだ早い···もん···」
そう言うと彼は、少し寂しそうに笑うも手の動きは止めない···
彼と廻るお寿司屋に来るのは、そうないがそれなりに美味しかったし、途中で寄ったブランドショップでは、おねだりしたバッグも買って貰えた。モチロン、誕生日プレゼントも!!
「今日は、愛莉凄く幸せ···」
彼の腕に絡まり、リザーブしたホテルの部屋へと向かう愛莉の頭には、これから自分の身に危険が迫ってくるとは思わなかっただろう···
チーンッ···
「父さん、母さん。ただいま。今日ね···」
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