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冬、リスタート。

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「……本当にいいのか?」

「うん、本当は松里と観光とかしたかったけど、今それどころじゃないでしょ? 書きたい、ってうずうずしてる顔してる」

「……否定はしない」

 吉川は言うことだけ言って満足すると席を立った。東京に帰ると言い出したのだ。ホテルは、と言うと「最初からそんなものは取っていない」と。有給は一日しか取れず、明日も仕事だと。つまり、彼は染衣を叱咤激励するためだけにここまで来たのだ。

「……お前には感謝してる。それと、ごめん」

「なにが?」

「酷いこと言ってお前を泣かせた」

「なっ……!」

 顔を真っ赤にして吉川が両手を顔の前でぶんぶんと手を振った。

「な、ないてない!」

「いや、泣いてただろ」

「何でわかったの!?」

「え、友達……だから……?」

 それに吉川は固まって茹で蛸のようにさらに顔を赤くし、あうあうと次の言葉を探す。

「ただの同期だと思ってた……」

「オレは友達だと思ってたよ。じゃなきゃこんなにお前のこと気にしない」

「友達いないからわかんない……」

「じゃあオレが第一号だな」

 そう笑ってやると、やっと吉川も表情を崩した。

「……次作、楽しみにしてるよ。友達一号」

「ああ」

「次は何を書くのか聞いても?」

「それはもう決まってる」

 誰かのナニカになりたい。どうしたらなれるか色々考えた。怒り? 感動? 失望? 誰かの記憶に残る為のきっかけになる感情はたくさんある。だけど自分が他人に与えるなら、与えることができるなら。

 あの時のような。


『自分の未来は自分しか作れないだろ?』


 あの時の、キラキラした気持ちを与えたい。綺麗事でもいい。「松里染衣」がどんなに嫌われてもいい。それでもいいから、ゲームのプレイヤーに明日を生きる希望を持ってゲームを閉じてほしい。

「オレはもう家を継ぐから商業には戻れない。そういう現実に夢を奪われた奴、いっぱいいると思う。だけど、こうやってお前が言ってくれた同人とかの別の道を選ぶことで、夢を正しく諦めて前に進めるような……そんな、プレイした奴が明日も頑張れるような優しいゲームを作ってみせる!」

 それを聞いた吉川の表情はとても晴れやかだった。きっと、その瞳に映る自分の表情
が付き物が落ちたようだったからかもしれない。
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