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夢の終わり

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 諦められない、どうしてもなりたい、夢があった。

 ゲームのシナリオライター。

 大学生の時、昔、未来が見えず無気力だった自分を外に出してくれた。

 たった数時間で終わるゲームのキャラクターのセリフ。

『自分の未来は自分しか作れないだろ?』

 自分はそれを読んで確かに思ったのだ。

「未来……、自分で……?」

 考えたことがなかった。

 未来というものは、自分で作るものではない。親が用意して、それを路線通りに進むのが正しい未来というものだ。

 でも、小さなスマートフォンの中の彼は言ったのだ。未来は自分で作ると。自分でしか作れないと。

 友人の勧誘ボーナスの為に登録した、よくわからない「ゲーム」と言うモノ。その中で生きているキャラクターにそう言われた時、なにか、自分の中の殻のようなものが割れたような気がした。

 それから、植物の小さな芽が花を咲かせるまでは一瞬だった。ぐんぐんと伸び、湧き出る感情。

 ーーオレも、誰かに何かを残せるような物語を書きたい! 誰かに何かを与えられる『ナニカ』になりたい!

 趣味にしようとは思わなかった。
 
 家を継ぐことは決まっていたから、ひとり息子の自分が家業以外の目標を持つことは親からそれはそれは反対された。

 趣味にしなさい、貴方にはやるべきことがあるでしょう、と言う母に、こう反論した。

「商業じゃなきゃ意味がない。プロになるしか誰かに作品を見てもらえる道はない。実際、自分はアマチュア作品なら見向きもしなかった。商業のブランド名と広告力があってこそ、人は手に取る。それはどの創作物も同じだろ?」

 それから、シナリオの勉強をして、余裕を持った就活をする為に大学の単位を巻き戻すように取って、就活を頑張って。

 そして何の奇跡か、夢の、あのゲームを作った会社に入社できた。

 本当に夢のような数年間だった。

 だけど、夢には終わりがある。

「は? 実家を継げ? それって仕事辞めろってことかよ」

『ええ、前から言ってるじゃない。貴方は家を継ぐから就職しなくてよかったのにって』

 家は染物屋で、ひとり息子の自分はいつかそれを継がなければならないのはわかっていた。

 だから美大に行かせてもらえていたし、そのための勉強もさせてもらっていた。未来が決められていたから、その分自由にさせてもらっていた。そのツケが今、回ってきただけだった。

 どうすれば仕事を辞めずに済むか考えた。
 
 説得もした。
 
 それでも万人が、自分の求めるハッピーエンドに向かえるわけではない。
 
 松里染衣まつざとそめい、二十六歳。

 今月、秋にソーシャルゲーム運営会社「ホワイトスピカ」を退職。
 
 現在、実家でニート中。
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