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11話
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「先輩!この間は大変っ!ご迷惑をおかけしました!」
あれから念の為、八雲は暫く休み、やっとヒートが完全に終わったからと生徒会室を訪れると、思い切り90°で頭を下げた。
八雲から見たらラッキー以外の何物でもなかったが、晴人には多大な迷惑をかけてしまった。若干落ち込みながらも相手の反応を伺う。アイドル的に信仰している晴人に嫌われたら生きていけない。
だが晴人は眉間にしわを寄せるような事もせずに、こちらの体調を逆に伺うようなそぶりを見せてくれた。
「いや、いいよ。体調は大丈夫?」
その反応にホッとする。
晴人は天使か何かなのかもしれない。
心の中でその優しさを噛み締めながら返答である次の句を用意する。嘘はついてしまうことになるが仕方ない。
「はい。もうご迷惑をかけることもないと思います。つがいが出来たので」
「は?!……え、ちょっと、見せて」
チョーカーに隠れた首元を見せる。そこには噛み跡が残っているはずだ。
「えっ……そんな……、いつのまに」
驚きから呆然とする晴人に予め用意していたセリフを復唱する。
「前々から話は出てたんです。でもまぁ生きていく上で面倒ですし、えいっと」
「そんな軽い気持ちで?!」
(本当はあなたを不安がらせたくないからなんですよ、なんて厚かましいから言わないけど)
驚く晴人を他所に八雲は笑顔を見せる。
これで晴人の中では「東雲八雲には番がいる」ことになっただろう。実際はそんなものはいないのだが、少しは不安の種を除くことはできただろうか。
「先輩は、あの後会長とどうでしたか?」
「どうでしたって……」
「こっちも忙しいって言うのに鬼のように連絡きたんですよ。先輩と連絡がつかないって」
「それは本当にごめん……」
「いえ、いいんです。それに……」
廊下から質量のある大きな足音が聞こえる。
その主はこの生徒会室に向かってきていた。
「やっぱりみんなが幸せになるのが一番ですから」
御影と晴人はもう大丈夫だろう。
御影からはなんとか連絡が取れた旨のメールが来ていたし、晴人だってまるで憑き物が落ちたかのように自分の前でもスッキリとした表情を見せている。
もう自分が心配することは何もない。
これできっとハッピーエンドだ。
あれから念の為、八雲は暫く休み、やっとヒートが完全に終わったからと生徒会室を訪れると、思い切り90°で頭を下げた。
八雲から見たらラッキー以外の何物でもなかったが、晴人には多大な迷惑をかけてしまった。若干落ち込みながらも相手の反応を伺う。アイドル的に信仰している晴人に嫌われたら生きていけない。
だが晴人は眉間にしわを寄せるような事もせずに、こちらの体調を逆に伺うようなそぶりを見せてくれた。
「いや、いいよ。体調は大丈夫?」
その反応にホッとする。
晴人は天使か何かなのかもしれない。
心の中でその優しさを噛み締めながら返答である次の句を用意する。嘘はついてしまうことになるが仕方ない。
「はい。もうご迷惑をかけることもないと思います。つがいが出来たので」
「は?!……え、ちょっと、見せて」
チョーカーに隠れた首元を見せる。そこには噛み跡が残っているはずだ。
「えっ……そんな……、いつのまに」
驚きから呆然とする晴人に予め用意していたセリフを復唱する。
「前々から話は出てたんです。でもまぁ生きていく上で面倒ですし、えいっと」
「そんな軽い気持ちで?!」
(本当はあなたを不安がらせたくないからなんですよ、なんて厚かましいから言わないけど)
驚く晴人を他所に八雲は笑顔を見せる。
これで晴人の中では「東雲八雲には番がいる」ことになっただろう。実際はそんなものはいないのだが、少しは不安の種を除くことはできただろうか。
「先輩は、あの後会長とどうでしたか?」
「どうでしたって……」
「こっちも忙しいって言うのに鬼のように連絡きたんですよ。先輩と連絡がつかないって」
「それは本当にごめん……」
「いえ、いいんです。それに……」
廊下から質量のある大きな足音が聞こえる。
その主はこの生徒会室に向かってきていた。
「やっぱりみんなが幸せになるのが一番ですから」
御影と晴人はもう大丈夫だろう。
御影からはなんとか連絡が取れた旨のメールが来ていたし、晴人だってまるで憑き物が落ちたかのように自分の前でもスッキリとした表情を見せている。
もう自分が心配することは何もない。
これできっとハッピーエンドだ。
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