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依頼人と日南くん。~私のフレネミーさん~
ex9.日南新の推理
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高宮は時折、俺の居る星川家に顔を出す。
「お前さ、いつまで星川サンと一緒にいんのー……。お前がここにいるメリットなくない?」
「メリットとか俺が聞きてえわ」
高宮は今は花屋に出かけている。花瓶の花が悪くなったから買い替えるそうだ。一人で行けるかどうか心配だったが「大丈夫!」と自信満々に言うので信じて送り出した。どうして三十路の男のお使いを心配しなければならないのか。自分で言うのもあれだが過保護である。高宮はそんな時にアポなしでやってきた。いつもの事なので常備してある彼の好きなアイスを出してやる。
「姉さんから託されたから一緒にいるだけ。あと死なれると困る」
「ふーん、星川サンのこと好きなのかと思ったわ。今やってる事って通い妻じゃーん。公私ともにパートナーでーすってヤツー?」
「キッッッショ! お前冗談も大概にしろよ!? 星川だけはありえねえわ!」
確かに、関係を疑われるほど一緒にいるのは認める。が、決してそんな感情は無い。
「それ聞いて安心したわ」
無表情で高宮は有名チェーンのアイスクリームを口に運ぶ。
「いくらイケメンでも嫌いな奴と好きな奴がくっついたら不快だからな」
確かにその気持ちはわかる。実際、姉と星川の関係には俺は大手を振って喜べなかったし。
「イケメンって……、アイツ整形してるから本来の顔違うぞ」
「え、そうなん」
「昔の方がかっこよかった」
昔の星川はもう勝ち目無し、これが義理の兄になるなら仕方ないと思うほどかっこいい正統派イケメンだったのだ。今の顔も悪くはないとは思うが、今の星川を姉が連れてきたら「は? 俺の方が顔も甲斐性もあるが?」となってしまう事だろう。少し前、そう言えば結局なんで整形したの? と聞いたことがあるが理由は簡単「芽衣子から逃げられると思った」かららしい。幽霊が顔変えたからって離れるわけないだろ。常に傍に居るんだから。星川糺と言う男はいつもどこかしら抜けている。
「ん? 不快……」
じゃあ黒崎はどうなのだろう。好きな百乃が嫌いな大野と一緒にいる。別れさせるために苦渋の決断で百乃に嫌がらせをして、自分に頼らせ、寝取る……このような予想をして行動した、などは考えられないだろうか? その場合、今回黒崎より先に大野に百乃が相談したのは計算外だと思うが。
「黒崎さんもシロだろうね」
花を買って来た星川を出迎え、俺の推測を話すと彼はそう言った。高宮も「そう言うと思った」と反応する。どうやら俺の推理ははずれらしい。
「百乃さんに嫌がらせする理由がないもんなー。むしろ話を聞く限り本当の事情を知ったら力になってくれそうだー」
「そうだね。でも一番は『敵に塩を送るわけがない』と言う理由だ」
「ん?」
どういうことだ? そう首を傾げると星川は口を開く。
「日南くんの推測の『計算外』のとおりだよ。百乃さんが嫌がらせされたら、まず同棲していて信頼している大野さんに相談するだろう。多分黒崎さんはそれを望まない。会ってみて確定したが、あの人は性格上書き込みでの嫌がらせなんてしないし、仮にやるとしても標的は大野さんだ。動画や作詞のセンスがないとかいろいろ難癖はつけられる」
「じゃあやっぱり百乃さんに嫌がらせをするメリットがないわけか」
「金を貢ぐような男が好きな女性を傷つけることは考えづらいしね。むしろ気になるのは話に出てきた中村ゆかりさんの方だよ」
「?」
「多分会えばわかる」
そう言って星川は道中で買ったらしいチルドカップのドリンクを啜った。
「お前さ、いつまで星川サンと一緒にいんのー……。お前がここにいるメリットなくない?」
「メリットとか俺が聞きてえわ」
高宮は今は花屋に出かけている。花瓶の花が悪くなったから買い替えるそうだ。一人で行けるかどうか心配だったが「大丈夫!」と自信満々に言うので信じて送り出した。どうして三十路の男のお使いを心配しなければならないのか。自分で言うのもあれだが過保護である。高宮はそんな時にアポなしでやってきた。いつもの事なので常備してある彼の好きなアイスを出してやる。
「姉さんから託されたから一緒にいるだけ。あと死なれると困る」
「ふーん、星川サンのこと好きなのかと思ったわ。今やってる事って通い妻じゃーん。公私ともにパートナーでーすってヤツー?」
「キッッッショ! お前冗談も大概にしろよ!? 星川だけはありえねえわ!」
確かに、関係を疑われるほど一緒にいるのは認める。が、決してそんな感情は無い。
「それ聞いて安心したわ」
無表情で高宮は有名チェーンのアイスクリームを口に運ぶ。
「いくらイケメンでも嫌いな奴と好きな奴がくっついたら不快だからな」
確かにその気持ちはわかる。実際、姉と星川の関係には俺は大手を振って喜べなかったし。
「イケメンって……、アイツ整形してるから本来の顔違うぞ」
「え、そうなん」
「昔の方がかっこよかった」
昔の星川はもう勝ち目無し、これが義理の兄になるなら仕方ないと思うほどかっこいい正統派イケメンだったのだ。今の顔も悪くはないとは思うが、今の星川を姉が連れてきたら「は? 俺の方が顔も甲斐性もあるが?」となってしまう事だろう。少し前、そう言えば結局なんで整形したの? と聞いたことがあるが理由は簡単「芽衣子から逃げられると思った」かららしい。幽霊が顔変えたからって離れるわけないだろ。常に傍に居るんだから。星川糺と言う男はいつもどこかしら抜けている。
「ん? 不快……」
じゃあ黒崎はどうなのだろう。好きな百乃が嫌いな大野と一緒にいる。別れさせるために苦渋の決断で百乃に嫌がらせをして、自分に頼らせ、寝取る……このような予想をして行動した、などは考えられないだろうか? その場合、今回黒崎より先に大野に百乃が相談したのは計算外だと思うが。
「黒崎さんもシロだろうね」
花を買って来た星川を出迎え、俺の推測を話すと彼はそう言った。高宮も「そう言うと思った」と反応する。どうやら俺の推理ははずれらしい。
「百乃さんに嫌がらせする理由がないもんなー。むしろ話を聞く限り本当の事情を知ったら力になってくれそうだー」
「そうだね。でも一番は『敵に塩を送るわけがない』と言う理由だ」
「ん?」
どういうことだ? そう首を傾げると星川は口を開く。
「日南くんの推測の『計算外』のとおりだよ。百乃さんが嫌がらせされたら、まず同棲していて信頼している大野さんに相談するだろう。多分黒崎さんはそれを望まない。会ってみて確定したが、あの人は性格上書き込みでの嫌がらせなんてしないし、仮にやるとしても標的は大野さんだ。動画や作詞のセンスがないとかいろいろ難癖はつけられる」
「じゃあやっぱり百乃さんに嫌がらせをするメリットがないわけか」
「金を貢ぐような男が好きな女性を傷つけることは考えづらいしね。むしろ気になるのは話に出てきた中村ゆかりさんの方だよ」
「?」
「多分会えばわかる」
そう言って星川は道中で買ったらしいチルドカップのドリンクを啜った。
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