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第3章 アレクを狙って
第857話 張り切りすぎて限界を迎える親方!
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アレクは、楽しみにしておこうと、敢えてお店が完成するまで1日も足を運ぶことはしなかった。
だが、毎日のようにストレンの街の店を調査するために酒場や飲食店を巡っていたアレクは、日に日に疲れていく親方のノイジと弟子達の顔を見て、相当追い込まれているなと感じた。
「お~、屋敷で教えたパスタが置いてある。お父さん優しいなぁ。惜しげもなく教えちゃうんだもん」
アレクは、どんなメニューがあるのか端から端まで見たあと、周りにいるお客さんが何を頼んでいるのか見渡す。そして、アレクはオークの香草焼きとエールを頼んだ。
「酒場だから、ガッツリした物が頼まれると思ったけど、意外にパスタ頼む人いるんだ。これなら、同じ麺類だし、ラーメンも受け入れられそうだね」
ラーメンがヒットする可能性を秘めていると感じたアレクは、少し心に余裕を持つことが出来た。それから暫くして、香草焼きとエールが運ばれてくる。
「うわぁ~!うまそう。いただきま~す。え!?むちゃくちゃうまい。昔食べたホロホロ鳥の香草焼きに匹敵するうまさだよ。昔に比べて、ストレンの街の飲食のレベルが上がってるなぁ。こないだお父さんと行った酒場もうまいものばっかだったし」
アレクは、一口食べると、口いっぱいに広がる旨味と鼻から抜ける香草の香りに舌鼓を打つ。
そんな幸せそうな顔をして食べるところに、また一段と疲れ切った顔で入店してきた親方のノイジがいた。
アレクは、今まで声をかけなかったか、流石に限界まで疲れ切った顔をしているノイジを放っておくことが出来ず、名前を呼んで相席しないかと聞いた。
「あ、アレク様......では、相席失礼します......」
ノイジは、フラフラしながらやってくると、今にも消え入りそうな声で挨拶をして席に座った。
「ノイジさん、大丈夫ですか?何度か見かけて声をかけようとはしたんですが、1杯飲んだら、すぐ帰っていたので中々声をかけにくくて。それに、今日は弟子の方々もいないなと」
「気を使わせて申し訳ございません。弟子達は、限界を迎えて家に帰っていきました。私も、何か腹の足しになるものとエールを飲んだら帰って寝ます」
ノイジは、体を壊さないために無理をしてでも何かを口にしようとしているらしいが、アレクから見ると、このままでは建築をしている時に、大事故を引き起こすのではと思ってしまう。
「栄養ドリンクをまず飲んでください。それから、何があったのか、話を聞かせてもらってもいいですか?」
アレクは、強化版ではない普通の栄養ドリンクを渡した。すると、ノイジは効果を知っているので、躊躇いなく飲み干した。
「お~!これは、本当に凄いですね。ここ最近の疲れが一瞬で吹き飛びました。厚かましいお願いですが、弟子達に分も頂けないですか?」
ノイジの精気の抜けた顔が嘘のように赤みを帯びており、今からでも踊りだしそうなくらい元気になっていた。
「いいですよ。5本渡しておきます。それで、なんでこんなことになったんですか?」
アレクは、弟子の人数分の栄養ドリンクを渡した。そして、このような状態になった原因がなんなのかを尋ねる。
「お恥ずかしい話なのですが、私達が考えもつかない技術を惜しげもなく教えて頂けるので、張り切りすぎてしまいました。ディドさん達は、早く帰るようにと何度も言ってくれていたのですが......」
魔物の国で、人間にも教えているはずのディドが、人間を過労させるまで追い込むのはおかしいと考えていたのだが、ただ単にノイジ達が、やらかしていただけだと知り安堵した。
「無理矢理働かされてるわけじゃないことを知ってよかったですよ。もし、そうだとしたら、ディド達を叱りつけなきゃいけなかったですから。今後は、どうするつもりなのですか?」
「無理矢理だなんて!今日も、早く帰るように無理矢理帰宅させられましたし。このあとは、無理せず私達の出来る範囲で学ばせてもらう予定です。こんな機会、二度とないと思うと、悔しいですが......仕方ありません」
ディドが、限界と判断して帰宅させたことを聞いて、アレクは安心する。しかし、ノイジの悔しがる表情を見てアレクは、何か手はないかと一考した。
「伯爵に聞いてみてですが、もし許可がおりたら、数名ずつ魔物の国で技術学べるよう短期留学の計画を立ててみようと思います」
「え!?それは、本当ですか!もし可能なら、願ってもないことです。是非よろしくお願いします」
アレクの突拍子もない案は、今に始まったことではないが、今回はヨゼフに確認してからと前置きをした。
「まだわかりませんよ。伯爵の許可がなければ、父親だからといって強行は出来ないですからね。ましてや、ノイジさん達は、ストレンの街に欠かせない大工職人なんですから。それより、お弟子さん達に栄養ドリンクを届けてあげてください」
「アレク様、ありがとうございます。いち大工職人の私なんかに嬉しい言葉と時間を頂いて......すぐに、弟子達に届けてきます」
アレクの言葉を聞いて感動したノイジは、袖で涙を拭い、弟子達の下へと向かうのだった。
だが、毎日のようにストレンの街の店を調査するために酒場や飲食店を巡っていたアレクは、日に日に疲れていく親方のノイジと弟子達の顔を見て、相当追い込まれているなと感じた。
「お~、屋敷で教えたパスタが置いてある。お父さん優しいなぁ。惜しげもなく教えちゃうんだもん」
アレクは、どんなメニューがあるのか端から端まで見たあと、周りにいるお客さんが何を頼んでいるのか見渡す。そして、アレクはオークの香草焼きとエールを頼んだ。
「酒場だから、ガッツリした物が頼まれると思ったけど、意外にパスタ頼む人いるんだ。これなら、同じ麺類だし、ラーメンも受け入れられそうだね」
ラーメンがヒットする可能性を秘めていると感じたアレクは、少し心に余裕を持つことが出来た。それから暫くして、香草焼きとエールが運ばれてくる。
「うわぁ~!うまそう。いただきま~す。え!?むちゃくちゃうまい。昔食べたホロホロ鳥の香草焼きに匹敵するうまさだよ。昔に比べて、ストレンの街の飲食のレベルが上がってるなぁ。こないだお父さんと行った酒場もうまいものばっかだったし」
アレクは、一口食べると、口いっぱいに広がる旨味と鼻から抜ける香草の香りに舌鼓を打つ。
そんな幸せそうな顔をして食べるところに、また一段と疲れ切った顔で入店してきた親方のノイジがいた。
アレクは、今まで声をかけなかったか、流石に限界まで疲れ切った顔をしているノイジを放っておくことが出来ず、名前を呼んで相席しないかと聞いた。
「あ、アレク様......では、相席失礼します......」
ノイジは、フラフラしながらやってくると、今にも消え入りそうな声で挨拶をして席に座った。
「ノイジさん、大丈夫ですか?何度か見かけて声をかけようとはしたんですが、1杯飲んだら、すぐ帰っていたので中々声をかけにくくて。それに、今日は弟子の方々もいないなと」
「気を使わせて申し訳ございません。弟子達は、限界を迎えて家に帰っていきました。私も、何か腹の足しになるものとエールを飲んだら帰って寝ます」
ノイジは、体を壊さないために無理をしてでも何かを口にしようとしているらしいが、アレクから見ると、このままでは建築をしている時に、大事故を引き起こすのではと思ってしまう。
「栄養ドリンクをまず飲んでください。それから、何があったのか、話を聞かせてもらってもいいですか?」
アレクは、強化版ではない普通の栄養ドリンクを渡した。すると、ノイジは効果を知っているので、躊躇いなく飲み干した。
「お~!これは、本当に凄いですね。ここ最近の疲れが一瞬で吹き飛びました。厚かましいお願いですが、弟子達に分も頂けないですか?」
ノイジの精気の抜けた顔が嘘のように赤みを帯びており、今からでも踊りだしそうなくらい元気になっていた。
「いいですよ。5本渡しておきます。それで、なんでこんなことになったんですか?」
アレクは、弟子の人数分の栄養ドリンクを渡した。そして、このような状態になった原因がなんなのかを尋ねる。
「お恥ずかしい話なのですが、私達が考えもつかない技術を惜しげもなく教えて頂けるので、張り切りすぎてしまいました。ディドさん達は、早く帰るようにと何度も言ってくれていたのですが......」
魔物の国で、人間にも教えているはずのディドが、人間を過労させるまで追い込むのはおかしいと考えていたのだが、ただ単にノイジ達が、やらかしていただけだと知り安堵した。
「無理矢理働かされてるわけじゃないことを知ってよかったですよ。もし、そうだとしたら、ディド達を叱りつけなきゃいけなかったですから。今後は、どうするつもりなのですか?」
「無理矢理だなんて!今日も、早く帰るように無理矢理帰宅させられましたし。このあとは、無理せず私達の出来る範囲で学ばせてもらう予定です。こんな機会、二度とないと思うと、悔しいですが......仕方ありません」
ディドが、限界と判断して帰宅させたことを聞いて、アレクは安心する。しかし、ノイジの悔しがる表情を見てアレクは、何か手はないかと一考した。
「伯爵に聞いてみてですが、もし許可がおりたら、数名ずつ魔物の国で技術学べるよう短期留学の計画を立ててみようと思います」
「え!?それは、本当ですか!もし可能なら、願ってもないことです。是非よろしくお願いします」
アレクの突拍子もない案は、今に始まったことではないが、今回はヨゼフに確認してからと前置きをした。
「まだわかりませんよ。伯爵の許可がなければ、父親だからといって強行は出来ないですからね。ましてや、ノイジさん達は、ストレンの街に欠かせない大工職人なんですから。それより、お弟子さん達に栄養ドリンクを届けてあげてください」
「アレク様、ありがとうございます。いち大工職人の私なんかに嬉しい言葉と時間を頂いて......すぐに、弟子達に届けてきます」
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