チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第3章 アレクを狙って

第847話 開拓・因縁・懸念・復讐！

ヴァンドームとウォルターは、地獄に帰ってきていた。そして、ラフな格好をした現大王であるヴィドインが手を振って出迎えてくれた。ウォルターは、すぐに跪いて頭を垂れる。

「ヴィドイン様、只今戻りました。工事も無事進んでいるようで何よりです」

辺りを見渡すと、以前の岩と荒野が広がる荒地ではなく、舗装された道路や無駄な岩が撤去されていた。

「下界や神界のように太陽が差すわけではないけど、住心地が良さそうだったからな。こいつらも、力で分からせたら理解してくれた。それと、反逆しそうなやつらは、ズタボロにして幽閉してやった。アハハ」

下界と神界が、どういう場所なのかを見に行ったヴィドインは、建物や舗装された道や景色に良さに感化されて地獄の開拓を進めていた。そして、階位持ち所謂地獄の貴族達に対して、今までは制裁を与えていなかったが、ヴァンドームの背中を再度見て、地獄の大王らしい振る舞いをするようになったのだ。

「やっとお前も力を振るい始めたか。それに、俺の考えつかなった開拓......地獄がよくなるといいな。俺の弟子が育つ前に開拓を進めてくれよ。あいつは、地獄に行きたがってからな」

ヴァンドームは、地獄の大王としてのあるべき姿と新たな目線での大王としての変化を見て、やはりヴィドインに託したことは間違いではなかったと感じた。

「ヴァンドームと同じではいけないと頑張ってきたけど、いい物は引き継ぎ、新たな物を生み出すことが大事と気付かされた。あぁ、数年かかるが、必ず地獄を変えるさ。それより、あの件はどうだった？」

ヴァンドームとヴィドインは、顔を見合わせて、フッと笑みを溢した。
形では、大王を譲ったことになっていたが、本当の意味でヴァンドームからヴィドインに大王の位を譲った瞬間だ。

「死んでないだろうな。ウォルター曰く、魔神の使うコアを破壊した感覚だと言っていた。ウォルターのお陰で、俺の力を見せずに情報を得ることが出来たな。大事な執事を貸してくれて感謝するぞ」

「魔神......ヴァンドームが全て皆殺しにしたはずだろう？まだ生き残りがいたのか？ウォルター自ら力になりたいと申し出てくれたんだ。感謝ならウォルターにしてやってくれ」

魔神の正体が明かされたのだが、ヴァンドームによって消し去られた種族だったようだ。

「ウォルター感謝するぞ。それから、ウォルターはあいつらとの戦いには二度と出るな。次は、対策されるはずだ」

「いえ、私を強くして頂いたのはヴァンドーム様です。その恩を返させて頂きたかっただけです。畏まりました。執事として本業に戻りたいと思います」

ウォルターは、立ち上がってヴァンドームに頭を下げて礼をした。
そして、ヴァンドームが表立って戦わなかったのは、ルシファーの戦いから黒い力に違和感を覚えており、総助と弦馬が、魔神の可能性があると感じていたからだ。

「魔神の生き残りか。正直不明だな。だが、俺を相当恨んでいるようだったし、確定だろう。どうやって、地獄の力に似た力を手に入れたは知らんがな。それから、ヴィドインも動けるようにしとけよ。アレクが、弱体化されたらしいからな」

「地獄を支配しに来た魔神が全てではなかったってわけだな。ん？待て！アレクが弱体化！？創造神が目をかけていた使徒だろ？呪いが効くとは思えないが......」

ヴィドインは、魔神のことよりも、神にも近い神力を持っているアレクが弱体化したことを信じれない様子だ。

「魔神なら、あり得る話だ。それに、地獄の力のまがい物を習得してるなら尚更強力な呪いだろうな。だが、永久にかけるつもりが、1年の弱体化らしい。あいつらも、アレクの神力の強さを侮っていたんだろうよ」

「神に近い神力があって1年......ただの人間なら死ぬな。それに、アレクの仲間が受けたら永久だろう。わかった。俺も、戦いに備えることにする。だが、まずは改めて二人ともご苦労だったな」

ヴィドインは、ただの魔神であれば、易々と倒すことが出来ただろうが、地獄の力に似た力を持っていることと、もし魔神が力を使い下界の人間を皆殺しにした場合、地獄は死人の処理に追われる毎日を過ごすことになると考えて、自らも動く決断をした。

「あぁ、俺は引き続き同行を追いながら、弟子を生き残れるよう育てるつもりだ。じゃあ、俺は下界に変えるぞ」

ヴァンドームは、地獄でのんびり過ごすことはせず、足早に共和国へと帰還した。


◆


ウォルターによって胸を貫かれて横たわっている総助と弦馬の前に同じ姿をした人物が立っていた。

「やはり、地獄の力とは相性がよくありませんねぇ。それに、人形では力に制限がかかり、あのレベルでは持ちませんか。にしても、ウォルターという人物......厄介極まりません」

総助は、黒いモヤを出して、自分の死体を燃やした。横にいた弦馬も、同じように死体を燃やす。

「最高のコアが......また作り直しか。クソ忌々しい地獄の野郎がぁぁぁ！ウォルターの能力を解析するぞ！あぁぁ、計画がぁぁぁぁ」

「落ち着いてください。使徒に呪いが効いたのです。もう一度かければいいではありませんか。そして、仲間諸共呪いにかけて殺しましょう。あとは、ヴァンドームとウォルターの対策をすればいいのです。簡単でしょう？」

弦馬は、最高傑作を壊されたこと、創造神が動き出したこと、ヴァンドーム達が現れて動きにくくなったことが立て続けに起きて、イライラが爆発した。
しかし、総助は神力を有する相手には、優位に立っていると自負しており、目の前の本当の敵は地獄のやつらだと考えていた。

「ふぅ～、そうだな。色々あり過ぎて気が狂っていた。創造神がいくら動こうが下界には降りれない。あとは、地獄のやつらだけだ。皆殺しにしてやるぞ」

弦馬は、冷静さを取り戻して世界を無茶苦茶にすることと、ヴァンドームへの復讐を誓うのだった。