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第3章 アレクを狙って

第813話 蔵之助の覚醒とデストロイらしさ全開!

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蔵之助ならば、前後から迫る二人を躱すことが出来るだろうが、目の前に迫っても微動だにしない。そして、蔵之助に攻撃が当たるか当たらないかのギリギリのタイミングで、目を見開き刀を抜いた。
その刀の刃は、目では追えないスピードで振り抜かれる。

「ぐはぁ......真の武士に近付けた気がするでござる......」

蔵之助は、刀を振り下ろしたあと、血を吐いた。しかし、その表情は何かを悟ったように穏やかであり、そのまま前へ倒れ込む。だが、それを拒むように誰かが支えた。

「大丈夫ですか?アレク様の命令で助けに参りました。こちらをお飲みください」

蔵之助は、目が虚ろになっており、視界がボヤけ目の前の人物が誰なのかわからない。しかし、その安心する声に導かれるままポーションであろう液体を飲み、そのまま気を失った。

「命に別状はなさそうですね。それにしても、あの剣速と鋭さ......一瞬ではありましたが、ノックスさんを超えていた?武士とは恐ろしいです。フッ、デストロイさんは......完全に楽しんでますね」

パスクは、倒れそうになった蔵之助を支えながら、風花に放った一撃を思い出していた。
何があったかというと、蔵之助は後ろにいる土流に一切見向きもせず、風花だけを倒すために全てを注いだ。
その結果、螺旋状に回転してくる風花の全身全霊の攻撃に対して、回転に飲み込まれない剣速と無駄のない上段からの振り下ろしで真っ二つにした。
しかし、その代償として後ろから来る土流の攻撃をまともにくらい胸に風穴が空いてしまった。そこに、デストロイとパスクが応援にやってきて、パスクは蔵之助を助け、デストロイは土流にハルバードを振り下ろしたが、危険を察知した土流は素早く躱して距離を取ったのだ。

「やるじゃねぇか!こりゃ楽しめそうだ。お!?警戒してんのか?安心しな!お前の相手は俺以外いねぇからよ」

土流は、戦闘に集中していたとはいえ、ギリギリまで気付くことさえ出来なかったデストロイとパスクの存在を恐ろしく思う。しかも、二人がかりとなれば、生き残るのは難しいとさえ感じ、冷や汗を流した。

「俺は、戦いたくないので、一旦離脱させてもらおう。土遁:穴道」

土流は、モグラのように一瞬にして土の中に潜った。そして、土流は土を掘りデストロイ達から離れようと無我夢中で掘る。
しかし、グラグラと地中が揺れて土流の方向感覚を狂わせた。

「勝手に逃げてんじゃねぇ!さっさと出てきやがれ」

デストロイは、ハルバードを振り下ろして地面に直撃させる。それから、2秒ほど経つと地割れが起こり、地面が揺れて隆起した。

「出てこねぇならもう一撃いくぞ」

デストロイは、またハルバードを叩きつけた。地面は、大地震かのように揺れて、更に地割れと隆起が酷くなる。

「クラクラする......なんて馬鹿力してるんだ」

土流は、地面から這い出てくると、頭を押さえて周りを見渡す。
そして、後方で蔵之助を支えていたパスクも頭を押さえた。

「はぁ、もうアレク様の言いつけを破ってますよ。デストロイには、力加減をするよ......いや、あの性格ならば無理ですね。諦めて、尻拭いを考えなくては」

このまま戦争が続くと、目の前の悲惨な状態以上の悲惨な現場が待ち受けていると思ったので、今のうちに謝罪と交渉内容を考えていた。

「逃げんじゃねぇよ。俺が、相手になってやるから遊ぼうぜ」

「長様のためならば、仕方ないか.......禁術:泥人形」

ハルバードを構え臨戦態勢のデストロイに対して、心が固まったのか、禁術を使った。その瞬間、土流は糸が切れた人形のように崩れ落ちて全く無く動かなくなる。
だが、死体となった土流からブクブクと泡のようなものが吹き出して次第にどんどんと大きく膨れ上がった。

「ノックスが言ってた禁術か!何が出るか楽しみだぜ」

デストロイが、大きくなった土流の死体を眺めると、禁術の名の通り、巨大な泥人形が誕生した。
デストロイは、ハルバードを構えて、まだ何もわかっていない泥人形に対して襲い掛かる。
そして、いつものようにハルバードを振り回して首と胴体を真っ二つにするが、泥人形には全くダメージはなく、何もなかったかのように首と胴体がくっついた。

「なんだ?こいつ!おもしれぇな!再生できねぇように切り刻んでやらぁぁぁ」

デストロイは、ハルバードを振り回して、泥人形のあらゆる箇所を切り刻んでいった。しかし、先程と同じであっという間に再生してしまう。

「仕方ねぇよな。吹き飛ばすしかねぇか。危ねぇ~、こいつ攻撃してくんのかよ!ん?なんか軽ぃな......って、ハルバードがぶっ壊れてやがるじゃねぇか」

デストロイは、別の方を試そうとした瞬間、泥人形が殴りかかってきた。そして、簡単に避けたのだが、手に重さが全くないのでハルバードを見ると、先が粉々に粉砕されているのだった。
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