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第3章 アレクを狙って

第812話 蔵之助vs土流&風花!

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アレク達が話し合っていると馬車が止まり、という声が辺りに響き渡る。
戦場になる予定の場所に、まだ着いていないにも関わらず、開戦する声が聞こえて、アレク達は馬車から降りた。すると、武士と忍者が刃を混じえて交戦を始めていた。

「アレク坊、どうする?参戦するか?待つか?」

「どうしようかな?でも、持東親王が自軍でどうにかしたいみたいだから待ちましょうか」

目の前では、短刀と刀のぶつかり合いが起こっており、一見戦国時代の戦のような状態になっていた。

「わかった。だが、前線も崩壊しそうだな。蔵之助が唯一奮闘してるが、面倒なやつと対峙しそうになってるし。そろそろ来るだろう」

蔵之助の奮闘で前線をどうにか保つことは出来ているのだが、他の兵が弱いので押されていた。
しかも、蔵之助に強者が迫ろうとしている。





蔵之助は、前線の危ない部分を瞬時に把握して、敵を一掃してはまた別の危ない場所に行っていた。そのせいで、自分の動きが思ったように出来ず、肉体的にも精神的にも疲弊し始める。だが、そこに追い打ちをかけるように強そうな2人の忍者が現れた。

「長様が、殺せと。恨みはないが、死んでもらおう」

蔵之助の目の前に現れたのは、以前忍者の里で長を助けた土流と風花だ。

「面倒な二人でござるな。一つ疑問に思ったのだが、なにゆえ背後から殺さなかったのでござるか?二人であればできたでござろう?」

蔵之助は、息を整えるためにわざわざ聞く必要性のない質問を投げかける。

「キャハハハ、だってぇ、おじさんのことすぐ殺せちゃうから、不意打ちなんて勿体ないよ」

風花は、手を叩きながら馬鹿笑いをする。だが、蔵之助は怒る様子もなく、表情一つ変えない。

「そうでござるか。ならば、これを見てもまだ余裕でござろうか?修羅羅刹解放」

蔵之助は、まだ開戦したばかりにも関わらず、修羅羅刹解放を解放する。一瞬で、蔵之助の体からワインレッドのオーラが放出されて鬼の目つきとなる。

「キャハハハ、何そ......」

「笑ってる暇があるなら、こいつの背後から殺せ」

蔵之助は、縮地を使って風花を切ろうとしたが、土流が割って入り刀を受け止めた。
しかし、土流は冷や汗を流しながら耐えている。そして、蔵之助は力で押し切り土流の短刀をへし折るが、後ろから風花が短刀で刺しに来ようとしていた。

「そう慌てないでほしいでござるな。時間はまだまだあるでござろうに」

蔵之助は、瞬時に体を移動させて、柄を短刀の剣先に当ててへし折った。
しかも、ノックスとの戦いの時よりも、平常心かつ心身共に充実した状態でいる。

「あぁ~、もうムカつく!風遁:風手風足旋風」

完全に、背後を取ったと思った風花だったが、蔵之助にあっさりと短刀を折られて、頭に血が登った風花は、手と足に小さなトルネード纏い、蔵之助に迫る。

「やるでござるな」

蔵之助は、刀で風花の連打を受け止めているが、刀に当たった瞬間、ネジ曲がるような感覚に次の行動が遅れてしまう。
更に、蔵之助が攻撃をしようとするも、風花の腕に纏われたトルネードによって弾かれる。

「土遁:泥泥沼」

土流は、蔵之助が後ろにも気を配りながら風花と戦っているのを知っていたので、敢えて直接攻撃はせず、離れたところから忍術を使った。
そして、土流の忍術によって泥沼になった地面に蔵之助は足を取られて一瞬の隙が生まれる。その瞬間、風花は先程よりも出力を上げて連打を繰り出した。

「くっ、油断したでござるよ」

「あり得ないんだけど!なんで吹き飛ばないの」

蔵之助は、連打をうまく受け流しながら、最後の一撃がきた瞬間、両手をクロスして防いだ。しかし、風花は吹き飛ばす勢いで放ったにも関わらず、少し後退りしただけの蔵之助に納得がいかない。

「左腕が使い物にならなくなったでござるな。それに、受け流してはいたでこざるが、体のあちこちが悲鳴を上げているでござるよ」

蔵之助の左腕の一部が螺旋状のあとが残り、骨が粉砕骨折していた。そして、体のあちこちの骨にヒビが入っており、次の一撃で決めなければならないと考える。蔵之助は、刀を鞘に入れて、大きく息を吐いて目を瞑った。

「風花!落ち着け!こいつは、満身創痍だ。俺と同時に攻撃を仕掛ける。いいな?」

「はぁ~、もうわかってるってば~。土流こそ、ちゃんとしてよ」

土流は、風花を落ち着かせたあと、連携して蔵之助を討ち取ろうと決める。
だが、蔵之助は一切微動だにすることなく、目を閉じたまま柄に添える形で手を置いた。

「土遁:土剛体堅」

「風遁:螺旋牙」

土流は、体全体が岩のゴーレムのようなゴツゴツしさとなり、風花は体全体がトルネードのようになる。二人は、その状態のまま、蔵之助に襲い掛かるのだった。
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