上 下
703 / 756
第3章 アレクを狙って

第810話 両者出陣と素直じゃないデストロイ!

しおりを挟む
弦馬と総助は、忍者の里が一望出来る丘の上で、キセルを吸いながら忍者達が集まっている場所を眺めていた。

「まさか、長老達を本当に殺すとは思わなかったぞ。やはり総助の力は怖いな。俺も知らず知らずに操られているのか?」

弦馬は、キセルを吸って煙を吐いたあと、総助の恐ろしさを語り始めた。

「前にも言いましたが、この力は憎悪を増幅させるだけですから。元々相手に憎悪がなければ何も役には立ちません。それに、弦馬とカルロには効きませんから万能ではないのです。それよりも、あの誓約を無効にした弦馬の方が怖いですよ」

二人の言葉からわかったのだが、やはり長が長老を殺すように仕向けた原因は、弦馬と総助にあったようだ。

「本当か疑わしいが......今は納得するしかないか。俺も、ある条件下でしか発動できないから、総助と同じだ。それより、元帝国の兵士は雑魚ばかりだな。面白い内乱が起こると思ったんだが、なんだあれは。アハハハ」

弦馬と総助は、長い付き合いのようだが、お互いに手の内を曝け出していないのか、牽制し合う言葉を言う。

「フッ、公国の兵に最初から期待はしていません。ただあの国が孤立して潰れたら面白いくらいでしたが、どうなるのでしょうか。完全に内乱を起こすなら、使徒の国のやつらの憎悪をかき乱してやるのが一番です」

公国の兵の隙間に入り込んで悪さをした総助だが、弦馬の内乱も起こらず、総助の言う孤立にもならず、目論見を見事アレク達は阻止していた。

「あの感じだと期待薄だ。それに、使徒の国のやつらも一枚岩ではないだろう。使徒以外のやつも実力は半神かそれ以上ある。まぁ、今はこの戦争がどうなるか見守ろう。あれは、仕込んだんだろ?」

「少し見ない間に、使徒もその仲間も実力を上げていたのが予想外でした。はい。あれは仕込みましたよ。おっと、忍者達が動き出したので、私達も移動しましょう」

弦馬と総助は、忍者達のあとを追うように、その場から姿を消した。





アレク達も、同じように広場に集まっていた。そして、持東親王の出撃前の挨拶を終えた頃、忍者の里を見張っていた兵から通信が入る。

「今入電が入った。忍者達が出陣したようだ。そして、女子供を除いた全ての忍者が向かったとのこと。我々も、作戦通り出陣する。頼んだぞ」

持東親王の頼んだぞと言う言葉を聞いた兵士達は、「おー」と答えて城をあとにし、町中を行軍していく。
城下町の人々は、戦争と聞いているようだが、逃げ隠れなどせず、手を振って声援を送ってくれた。

「親王は、好かれているんだな。だが、俺なら小っ恥ずかしくて手なんか触れないだろう」

ノックスは、馬車の中から声援を送る民とそれに応えて笑顔で手を振る持東親王を見て感想を言う。

「俺も無理だが、嫌いじゃねぇ。それに、昔は気付かなかったが、今となっちゃあ、皇帝は屑だと思えるぜ。まぁ、いつかアレクが手を振る機会がありゃあ、俺がケツを蹴り上げてやる。その方が、アレクらしいだろ?」

「何言ってるの?俺だってカッコよく声援の中、手を振りたいよ。なんで、わざわざカッコ悪い姿を晒さなきゃいけないのさ」

デストロイは、口悪く人を罵るだけではなく、しっかりと最後にオチをつけて話した。
アレクは、それに対して頬を膨らませてしっかりとツッコミを入れる。
その瞬間、全員が笑ってアレク達のいる馬車だけが戦争に行く前の雰囲気ではない空間に包まれていた。

「流石、デストロイさんは戦争慣れしていますね。人は、緊張よりも和やかな方が力を発揮しやすいですから。ありがとうございます」

オレールは、ひと笑いすると、冷静に分析して、良い緊張を保てるようにしてくれたデストロイにお礼を言った。

「戦争慣れはしてるが、帝国時代は仲間だと思ったやつはいねぇな。駒以下な連中ばっかだったからよ。こんな全員でやる戦争は初だな」

デストロイは、少し天井を見上げて過去のことを思い出すと、そう言えば仲間などいなかったと思い出す。

「では、やっと仲間と思える人ができたのですか?例えば、ノックスさんやオレールさんやアレク様や私など」

パスクは、少しニヤニヤしながら、先程場を和ませる冗談を言ったデストロイに問いかけた。

「殺すぞ!俺に仲間はいらねぇ。馬鹿なこと言ってねぇで、さっさと作戦を伝えやがれ」

デストロイは、怒声を浴びせたあとに、腕を組んでそっぽを向いてしまった。
しかし、仲間など必要ないと思っているのなら、わざわざ作戦を聞いたりはしないので、アレク達は素直じゃないなと微笑むのだった。
しおりを挟む
感想 2,129

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。