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第3章 アレクを狙って
第803話 王国から逃げた第二王子!そして、護衛の正体!?
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第一、第二王子が引き起こした王国への謀反の時期に遡る。
カルロ元第二王子と護衛のノーマックは、数ヶ月をかけて偽造した身分証を使い、国をいくつも越えて目的地に向かっていた。
「カルロ様、この村に私の知り合いがおります。うまく懐柔すれば、王国への復讐の機会が訪れるでしょう」
「ノーマックの知り合いですか。では、あまり無茶なことはせず、ゆっくりと誘導しましょうか。ですが、知り合いを懐柔とは、やはりノーマックは恐ろしいですね。私も、気をつけなければ......」
ノーマックの懐柔という言葉を聞いて、過去のことがあるので、今は信用できるが、いつ手のひらを返されるかわからないとカルロは思った。
「ご安心ください。私からカルロ様を裏切ることはございません。もし、カルロ様が私を嵌めるようなことがあれば、抵抗はさせて頂きますがね」
「君は、本当に恐ろしいことを言いますね。武力を持ち、知力も私に引けを取らない人間に対して負け戦は致しません。十分利用させて貰いますよ」
お互い言葉による死闘を繰り広げているように見えるが、一切険悪なムードではなく、お互いが笑っている。これは、似た者同士による遊びに過ぎないようだ。
「では、あの武力に対抗するために、私は利用されカルロ様と共に知力で完膚なきまでに叩き潰しましょう。おっと、こんな話をしていたら隠れ家に着きました」
あの武力とは、ノックスやデストロイ達のことを指している。カルロとノーマックは、パスクを知らないため、武力でやられたと思っている。
カルロとノーマックは、馬を降りて知り合いがいるという隠れ家についた。だが、そこは至って普通の田舎にある酒場であった。
「今日もいい天気だ。右から2番目の酒を貰えないかな?いや、やはり左から3番目。それから、ナッツを5粒貰おう」
ノーマックは、まだ開店していない昼間の酒場に、何の躊躇もなく入り、棚の酒を整理している店主らしき人物に注文のような言葉を言った。
「天気が良い日のお客様は大歓迎です。ちょうど、旦那様がお会いしたいと申しております。こちらにお越しください」
その店主らしき人物は、強面な顔とは正反対の礼儀作法も言葉使いもしっかりした様子で答えて、奥の通路に案内した。
「ノーマック、君はいったい何者なのですか?私にも話していない秘密があるのではないですか?」
「貴方と同じです。もうすぐしたらわかるでしょう」
カルロから見てもノーマックは、明らかに裏の住人である。しかし、ノーマックはカルロの幼少期から側にいた存在であり、城に出入り出来る時点で、身分を調べられているはずだ。
しかし、他国に伝手があり、裏社会との繋がりのある人物が何故城に常駐出来たのか、カルロは謎で仕方なくなる。
だが、ノーマックはわざとなのか、含み笑いを浮かべながら通路の奥にある木の板を引っ張る。すると、地下に繋がる階段が現れた。
「カルロ様、緊張が顔に出ております。これから、貴方は一癖も二癖も......いや、傲慢な人間と相対するのです。いつものように演じてください」
階段を下りる旅に、冷や汗が吹き出し、顔を強張らせるカルロに声をかけた。
しかし、カルロは全く緊張していることに気づいていなかったようで、豆鉄砲を食らったような顔をした。
「クックック、この僕が、まさか緊張とはね。城ではあれだけ人を欺いていたにも関わらず、一歩外に出たら、このザマとは......ノーマック、これからは貴方に色々学ばなければいけないようだ。よろしく頼むね」
「へぇ~、カルロ様がまさか頼み事とは。それに、素を見せるとは思いませんでした。一瞬、幼少期のカルロ様かと思いましたよ。では、地獄の扉を開けましょうか」
カルロは、顔に手のひらを当てながら笑っていた。それは、情けない自分を嘲笑うのではなく、狭い世界にいたことと、まだ楽しみがいっぱいあることへの高揚感であった。
そして、ノーマックは重い頑丈な鉄の扉に手をかけて、ゆっくりと開ける。部屋の中には、一人の老人が杖をつき立っていた。
「相変わらず人を欺くのがお好きのようですね。本物の弦馬にいつ会えるのやら」
「お主も相変わらず王国民のふりか!まだノーマックとかいう腑抜けのような名を語っておるのか?沖田総助よ」
二人は、現代でいうヨーロッパ風の顔をしているのだが、呼び合う名前は、大和ノ国の人名なのだ。
そして、顔を見合わせた二人は、大笑いし合った。
「沖田総助は、この世に存在しません。疾うの昔に殺されました。それでは、新しい仲間と、これからの作戦を話し合いましょう」
大笑いしていたノーマックだが、沖田総助という名前を聞いた瞬間、肌がピリつくほどの殺気を放った。しかし、すぐに何もなかったように、いつもの表情に戻り話を続けるのだった。
カルロ元第二王子と護衛のノーマックは、数ヶ月をかけて偽造した身分証を使い、国をいくつも越えて目的地に向かっていた。
「カルロ様、この村に私の知り合いがおります。うまく懐柔すれば、王国への復讐の機会が訪れるでしょう」
「ノーマックの知り合いですか。では、あまり無茶なことはせず、ゆっくりと誘導しましょうか。ですが、知り合いを懐柔とは、やはりノーマックは恐ろしいですね。私も、気をつけなければ......」
ノーマックの懐柔という言葉を聞いて、過去のことがあるので、今は信用できるが、いつ手のひらを返されるかわからないとカルロは思った。
「ご安心ください。私からカルロ様を裏切ることはございません。もし、カルロ様が私を嵌めるようなことがあれば、抵抗はさせて頂きますがね」
「君は、本当に恐ろしいことを言いますね。武力を持ち、知力も私に引けを取らない人間に対して負け戦は致しません。十分利用させて貰いますよ」
お互い言葉による死闘を繰り広げているように見えるが、一切険悪なムードではなく、お互いが笑っている。これは、似た者同士による遊びに過ぎないようだ。
「では、あの武力に対抗するために、私は利用されカルロ様と共に知力で完膚なきまでに叩き潰しましょう。おっと、こんな話をしていたら隠れ家に着きました」
あの武力とは、ノックスやデストロイ達のことを指している。カルロとノーマックは、パスクを知らないため、武力でやられたと思っている。
カルロとノーマックは、馬を降りて知り合いがいるという隠れ家についた。だが、そこは至って普通の田舎にある酒場であった。
「今日もいい天気だ。右から2番目の酒を貰えないかな?いや、やはり左から3番目。それから、ナッツを5粒貰おう」
ノーマックは、まだ開店していない昼間の酒場に、何の躊躇もなく入り、棚の酒を整理している店主らしき人物に注文のような言葉を言った。
「天気が良い日のお客様は大歓迎です。ちょうど、旦那様がお会いしたいと申しております。こちらにお越しください」
その店主らしき人物は、強面な顔とは正反対の礼儀作法も言葉使いもしっかりした様子で答えて、奥の通路に案内した。
「ノーマック、君はいったい何者なのですか?私にも話していない秘密があるのではないですか?」
「貴方と同じです。もうすぐしたらわかるでしょう」
カルロから見てもノーマックは、明らかに裏の住人である。しかし、ノーマックはカルロの幼少期から側にいた存在であり、城に出入り出来る時点で、身分を調べられているはずだ。
しかし、他国に伝手があり、裏社会との繋がりのある人物が何故城に常駐出来たのか、カルロは謎で仕方なくなる。
だが、ノーマックはわざとなのか、含み笑いを浮かべながら通路の奥にある木の板を引っ張る。すると、地下に繋がる階段が現れた。
「カルロ様、緊張が顔に出ております。これから、貴方は一癖も二癖も......いや、傲慢な人間と相対するのです。いつものように演じてください」
階段を下りる旅に、冷や汗が吹き出し、顔を強張らせるカルロに声をかけた。
しかし、カルロは全く緊張していることに気づいていなかったようで、豆鉄砲を食らったような顔をした。
「クックック、この僕が、まさか緊張とはね。城ではあれだけ人を欺いていたにも関わらず、一歩外に出たら、このザマとは......ノーマック、これからは貴方に色々学ばなければいけないようだ。よろしく頼むね」
「へぇ~、カルロ様がまさか頼み事とは。それに、素を見せるとは思いませんでした。一瞬、幼少期のカルロ様かと思いましたよ。では、地獄の扉を開けましょうか」
カルロは、顔に手のひらを当てながら笑っていた。それは、情けない自分を嘲笑うのではなく、狭い世界にいたことと、まだ楽しみがいっぱいあることへの高揚感であった。
そして、ノーマックは重い頑丈な鉄の扉に手をかけて、ゆっくりと開ける。部屋の中には、一人の老人が杖をつき立っていた。
「相変わらず人を欺くのがお好きのようですね。本物の弦馬にいつ会えるのやら」
「お主も相変わらず王国民のふりか!まだノーマックとかいう腑抜けのような名を語っておるのか?沖田総助よ」
二人は、現代でいうヨーロッパ風の顔をしているのだが、呼び合う名前は、大和ノ国の人名なのだ。
そして、顔を見合わせた二人は、大笑いし合った。
「沖田総助は、この世に存在しません。疾うの昔に殺されました。それでは、新しい仲間と、これからの作戦を話し合いましょう」
大笑いしていたノーマックだが、沖田総助という名前を聞いた瞬間、肌がピリつくほどの殺気を放った。しかし、すぐに何もなかったように、いつもの表情に戻り話を続けるのだった。
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