上 下
684 / 730
第3章 アレクを狙って

【3巻書籍化!発売中】第791話 ノックスvs蔵之助!激闘......決着!

しおりを挟む
ノックスと蔵之助は、今から戦闘が始まるというのが嘘のように、向かい合いながら微動だにせず、ただ立ち尽くしていた。
しかし、次の瞬間、蔵之助は常人では目で追えないスピードでノックスに近付き、帯刀の状態から刀を抜き、一撃そして二撃と与える。

「スキルも魔法も使わず、足運びだけでよくここまでの速さを身に着けたものだな。しかも、その剣速恐れいった。おやっさんの防具を断ち切るなんてな」

蔵之助は、体を前傾姿勢にし、重力を利用した移動法である縮地を使って、ノックスに急接近をし、抜刀術という、刀を帯刀した状態より、鞘から刀を抜き放つ動作で相手に一撃を与え、続く太刀捌きでさらに攻撃を加えた。
ノックスでさえも反応が遅れてしまうほどで、もしおやっさんの防具がなければ、一撃目で体が真っ二つになっていた。
しかし、二撃目は体をうまいこと捻って避け、腕にかすり傷を負う程度で済んだ。

「この二撃で勝つつもりでござったが、やはり一筋縄ではいかぬでござる。それに、その防具は凄いでござるな。大和ノ国の最強と言われた刀職人が打った大和刀であったが、一撃で刃こぼれしてしまうとは......」

大和刀をよく見ると、亀裂や刃こぼれが起きており、あと一度でも振りかざせば、ポッキリと折れてしまいそうな状態だ。
蔵之助は、刀を鞘に仕舞って、ノックスから少し距離を取る。

「蔵之助を馬鹿にしてたわけじゃなかったが、少し甘く見てたようだ。身体強化 魔装甲」

ノックスは、神力は使わないまでも、それ以外の身に着けた力を全て使用する。
しかも、始まったばかりにも関わらず、向上薬も全て服用した。

「さっきまでとは見違える力強さを感じるでござる。では、私も本気で行くでござる。修羅羅刹解放」

蔵之助も、前回の戦いの最終で見せた修羅羅刹を解放する。前回は、体から赤いオーラを発していたが、今回はワインレッドのような少し黒さが混ざった赤になっていた。

「ぶっはははは、これはおもしろい。よく一人でその極地まで辿り着いたな。行くぞ」

ノックスは、蔵之助の成長ぶりにワクワクが止まらない。そして、今回はノックスから仕掛ける。
だが、蔵之助もノックス同様、その場からすぐに姿を消して攻撃に転じた。
次の瞬間、ガキンと刀と剣がぶつかる音がして、音のした方向を見ると、中央で鍔迫り合いが起こっていた。

「ぐぬぬ」

「ゔゔゔ」

二人は、鍔を押し合って力比べをしていた。
しかも、蔵之助の新しい金銅色の刀は特別な鉱石で作られたノックスの大剣とぶつかり合っても刃こぼれ一つしない。
そして、鍔迫り合いをそこそこに、お互いは凄まじい剣技を披露してガキンガキンと刀と大剣をぶつけ合う。

「まさか、ここまでとはな。久しぶりに、魔法を使わない力と力のぶつかり合い、最高だ」

「私もでござる。こんなにも心躍る戦いはノックス殿としかできないでござるよ。だが、楽しい時間はあっという間でござる」

二人は、真剣勝負にも関わらず、終始笑みが溢れていた。
蔵之助は、念願の決闘が出来て喜ぶのは納得だが、ノックスは始めは乗り気ではなさそうだったにも関わらず嬉しそうにする。理由は、思いのほか、蔵之助が強いことと魔物の国で同じ相手との訓練ばかりで、マンネリ化していたところに、刺激をもたらしてくれたからだ。

「なら、最後に俺の全力を見せてやるよ。蔵之助も全力でこい」

ノックスは、神力を纏って強化薬を服用した。流石に、全盛期の力まで活性化させる薬は、一ヶ月支障が残るので使えないが、全力に近い力を解放している。

「ハハハ、これは流石に予想外でござった。力が計りしれぬでござるよ。だが、私の全力をぶつけるでござる」

蔵之助は、目を瞑って神経を研ぎ澄ませる。そして、柄に手を添えて、抜刀の構えに入る。
次の瞬間、ノックスが大気を震わせて地面を抉るほどの力で、蔵之助に迫り、大剣を振り下ろす。蔵之助も、カッと目を見開き、一閃を繰り出すが、結界を壊すほどの風圧と砂埃で、二人の様子を視界に捉えることができない。

「凄まじい戦いだ。ノックスも蔵之助も常軌を逸している......」

持東親王は、只々目の前の戦いの異常さに言葉が詰まってしまう。だが同時に、男として二人の天才同士の戦いに、胸の高鳴りを抑えられないでいた。

「ゲホゲホゲホゲホ、まさか大剣を真っ二つにされて、魔装甲を諸共せず腕を持っていかれるとはな。本当に、世界は広い」

「ぐはぁ......それは、こっちの台詞でござる。大剣を真っ二つにして、腕を吹き飛ばしたにも関わらず、軌道を変えて片手で心臓を突き刺す胆力......化け物でござった。私の負けでござる」

ノックスは、全ての力を解いて、その場に座り込む。蔵之助は、胸に大剣の半分が突き刺さったまま仰向けで倒れて血を吐きながら、負けを認めた。そして、二人はボロボロになりながらも満足そうな笑みを浮かべるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。