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第3章 アレクを狙って

第770話 新しい移住者と移住者の今後!

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応接室でアレクが待っていると、ヴァロワ子爵とライが入室してきた。
アレクのことを辺境伯と思っていたにも関わらず、まさかの王様になっていたことで、より緊張した表情をしている。

「タカハシ陛下、お初にお目にかかります。王国より子爵の位を授かっておりますギッスル・フォン・ヴァロワと申します。よろしくお願い致します」

「タカハシ陛下、お初にお目にかかります。ヴァロワ子爵家嫡男ライ・フォン・ヴァロワと申します。以後、お見知りおきを」

ヴァロワ子爵とライが、片膝を突いて挨拶をする。

「二人共、よく来てくれましたね。どうぞ、座ってください。パスクからは、移住するかどうかの検討をしてくれると聞いてます。まず、その話からしましょう」

パスクから、ヴァロワ子爵は優秀な人材だと聞いていたのと、ライの希少スキルもあるので是非引き入れたいとのことで、移住の話から始める。

「はい!息子と昨日話し合いまして、受け入れて貰えるのでしたら、是非こちらに移住させて頂きたいと考えております」

ヴァロワ子爵とライは、頭を下げてお願いをする。

「わかりました。では、最後に確認なのですが、子爵の位がなくなり平民になってしまいますが、いいのですか?」

平民落ちすることは、貴族にとってプライドが許されない人が多く、ヴァロワ子爵がどのように考えているのかを最終チェックした。

「構いません。魔物の国で滞在している間に、皆が平等に生活をしていることを身を持って学び、貴族など飾りだったのだと知りました」

「そうですか。ヴァロワ子爵の考えはわかりました。陛下には、私から話しますので、手続きなどは待っていてください。では、ライくんのことと食糧難の話をしましょうか」

ヴァロワ子爵は、他の国とは異なり貧富の差が一切ない魔物の国で、国としてのあり方や生活のあり方など、今までにない視点からライに学んでもらいたいという気持ちもあった。

「ハシモト伯爵から聞いているとは思いますが、ライには魔物使いというスキルがあります。現在わかっているのは、どの種類のブルでも操ることが可能で、その能力を使い、飼育出来ないかと考えています」

「ライくん、凄いスキルを持ってるんだね。スキルについては、把握してるの?距離がどのくらい離れたら効果がなくなるとか時間とかね」

ヴァロワ子爵が、わかりやすく説明はしてくれたのだが、やはり本人から聞くのが一番だと思ったアレクは、ライに話を振る。

「お恥ずかしい話、家族から見放されていると思っていたので、スキルについて相談出来ず試す機会がありませんでした。今回のことで、父に話すことが出来て、初めて使いました。何も分からずごめんなさい」

見放されていたのは事実にも関わらず、ヴァロワ子爵の印象を悪くしないために、されていると思っていたとライが勘違いしていたように答えた。

「何にも謝ることないよ。この国以上に、そのスキルを検証出来る場所はないからね。逆に、知られていなくてよかったよ。悪事を働くやつらに狙われてた可能性があったしさ。ゆっくり、検証していこう」

「は、はい!ありがとうございます!必ず役立てるように努力します」

申し訳無さそうにしていたライだったが、アレクの優しい言葉を聞いて笑顔になり、やる気を漲らせる。
案の定、ヴァロワ子爵は罪悪感があるのか何とも言えない顔をして、アレクに頭を下げた。

「パスク、ライを教える適任者を選出してほしい。それから、ヴァロワ子爵には色んな仕事をやらせて見てくれるかな。飼育に関しても任せるよ。あとは、ブルの褒美だよね......どうしようかな」

パスクからヴァロワ子爵は、見込みはあるが、貴族として長らく染み付いたものがあると聞いていたので、今までに経験していない泥臭い仕事も学んで貰おうと思った。

パスクは、アレクからの指示に対して、「畏まりました」とすぐに答える。

「陛下、ありがたい限りでございます。私もライも、出来ることは何でもやろうと思います。それから、褒美ですが......保留にしてもらうことは可能でしょうか?」

「保留?どういうことですか?」

ヴァロワ子爵の発言からパスクが言っていた印象は、杞憂かなと感じたが、アレクは暫く様子を見るかと決めた。

「いい印象を持たれないかもしれませんが、正直に話しますと、ライのために手札を残して置きたいのです。これまで、何もしてやれなかったので、少しでも父親らしい姿をライに見せたいのです」

ヴァロワ子爵は、裏表などはなく、単純に罪滅ぼしをしたいと考えており、ライが生きやすく困らない将来を手に入れようとしている。

「寧ろ、父親らしくていいと思いますよ。でも、同じ子を持つ親として、親が先走ったり、勝手に決めたりはせず、子供と相談しながら決めてあげなさい。でなければ、また孤立させて同じ過ちを繰り返しますよ」

「はい!肝に銘じておきます!もう、あのようなライの顔は見たくありませんので......タカハシ陛下、今後ともよろしくお願いします」

ヴァロワ子爵の最後の「よろしくお願いします」には、ライのことしか含まれていないと感じたアレクは、少しずつライへの罪の意識を無くさせながら、自分自身も大切に考えられるように仕向けていかなくてはなとアレクは感じたのだった。
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