チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第3章 アレクを狙って

第767話 スラムの住人の魔物の街移住計画！

パスクが、ヴァロワ子爵とライを案内している頃、デストロイもスラムの住人の移住計画をスタートしていた。
住人達は、井戸水で入念に体を洗ったあと用意された服に着替えた。

「お前ら、今から魔物の街に向かうが、事前に話した通り、ここの取り壊しが決定している。忘れ物がないかと最後の別れをしろ」

強い口調で言うが、デストロイ自身も故郷を失っているので、後戻りが出来ないことと前を向いて生きていかなくてはいけないことを伝えている。
デストロイの気持ちを知ってか知らずか、スラムの住人は、誰一人として厳しく言うデストロイを軽蔑したり、突っかかってくる者はいない。ただただ言われた通りに、目を瞑って最後の別れを惜しんでいた。

「ありがとうございます。デストロイ様も、同じ経験をされているのですよね？みんなわかっています」

ティアの母親が、デストロイに近付いてきてお礼と先程の言葉の意味を理解していることを伝える。

「おい！俺の過去に何があったか知らねぇやつが好き勝手言うんじゃねぇ！さっさと荷物まとめて集まりやがれ」

デストロイは、突き放すような言葉を言うが、ティアの母親は微笑みながらデストロイを見つめる。

「わかりました。準備してきますね。あの、準備してる間、ティアのことよろしくお願いします」

「おい！どう言うことだ！？俺は......って、なんでお前がいやがるんだ」

デストロイは、どう言うことか問いただそうとした瞬間、服を引っ張られる感覚があり下を見るとティアがデストロイの服を引っ張っていた。
気配を一切感じさせなかったティアにデストロイは驚いてしまう。

「え？パパの側にずっといたよ。忙しそうだったから黙ってたけど、ママの許可が出たからパパと一緒にいる～」

「......」

デストロイは、ティアの返してきた言葉に驚きと、もし事実であるなら何かしらのスキルを持っていることになるので、どんな強力なスキルなのか考えて黙ってしまう。

「パパ、パパ、パパってば、もうみんな集まってるよ」

「うおっ！お、おう、おい！なんで、首に跨ってやがるんだ」

集中していたデストロイは、みんなが集まっていることに気付いていなかった。しかも、いつの間にかティアはデストロイに跨って肩車をしている状態になっている。

「パパが、無視するからだよ！それに、ここは私の特等席だから。えへへ」

ティアは、デストロイの頭をギュッとして甘えた素振りを見せる。

「はぁ～、仕方ねぇな。落ちても知らねぇぞ！しっかり捕まっとけ......おい！お前ら、そんな目で見んじゃねぇ！殺すぞ」

デストロイとティアの仲睦まじい光景に、住民達は温かい目で見る。すると、居心地の悪いデストロイは怒鳴りつけた。
しかし、言葉とは裏腹にティアが落ちないように優しく足を掴んでいる。

「皆様、そちらの円に入ってください。今から、転移致しますので、絶対に円からは出ないようにお願いします」

魔ノ国から派遣してもらった魔道具技師の男性が全員を円の中に誘導する。
スラムの住民は、魔族である男性を見ても、一切の驚きや偏見などはなく、「はーい」と返事をして言われた指示に従う。
そして、ドラブルもなく、そのまま全員を魔物の街に転移させた。


◆


簡易転移魔道具に設定された座標に転移すると、魔物の街の広場に着く。
転移してきたスラムの住民は、今までに見たことがない綺麗な建物に圧倒されて言葉が出ない。

「いつまでも呆けてねぇで、お前らの家まで案内するぞ！ついてこい」

デストロイは、圧倒されている住人を用意した移住区へと連れて行く。

「パパ～、見たことない魔物がいっぱいいる～！なんで、襲ってこないの？」

ティアは、魔物を見たのは生まれて初めてだが、大人から魔物は危ないものだと教えられていた。しかし、人間と同じように生活する魔物を見て大人が言っていた話と違い疑問に感じてしまった。

「ここにいるやつらは、知性がある。怖がらず接すればいい。だが、ここにいる魔物以外に出くわしたら逃げろ。いいな？」

「は～い！パパの言うことを守る～。でも～、ティアが襲われたらパパが助けてね」

デストロイに、ここまでズケズケと、ものを言って殺されなかったのはティアが初めてだ。
しかも、助けてという言葉に対して、「あぁ」と小さな声でデストロイが言った。少なからず、デストロイの中でティアを大切な存在だと認識しているらしい。

「お前ら、着いたぞ！今日からここが家だ！あそこにいるやつらの指示に従って行動しろ」

住民達は、スラムとは雲泥の差があるほどの移住区で、家の綺麗さや舗装された道や街灯などに目を奪われてしまい、デストロイの話など耳に入っていない。
デストロイは、仕方ないといった表情で、案内をする担当にあとを任せるのだった。