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第3章 アレクを狙って

第764話 ライの無邪気さにほっこりする!

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ヴァロワ子爵とライが、是非魔物の街を見てみたいということで、パスクはど偉いことを計画して王様に許可を貰っていた。
そんなことはつゆ知らず、ヴァロワ子爵とライは、パスクが来るのを屋敷で首を長くして待っていた。

「父上、本当に王国を救った英雄の方々が住む街に行けるのですよね?」

ライは、居ても立ってもいられず、玄関先で今か今かと待っていた。見兼ねたヴァロワ子爵は、ライに付き合うように話し相手をしている。

「あぁ、先日ライに話した通り、ハシモト伯爵様からお声をかけてもらったんだ。だが、ライがそんなにも興味を示すとは思っていなかったぞ」

「学園の歴史の授業で学びました。僕の知らない世界がいっぱいあるんだなと。そんな世界を見ることができるなんて夢のようです。まぁ、学園の生徒のほとんどが、そんなことあるわけないと否定していますけどね」

学園では、大まかな話と公開していい内容だけを生徒に教えているのと、アレク達が表立って活動を常にしているわけではないので、生徒からするとおとぎ話のように聞こえてしまうようだ。

「ライ、安心しなさい。全て事実であるからな。箝口令が敷かれて話せない者や認めたくない馬鹿な貴族は、子供に嘘を教えたりしていたらしい。私も、一部しか知らないが、陛下とタカハシ辺境伯の様子を見るに、公表されている以上のことがあるのだろうな」

箝口令を敷いたのは、魔物の街に不届き者が溢れないように陛下が気を利かせたことなので仕方ないが、またしても無駄にプライドだけ高い貴族などの影響で、子供達に事実とネジ曲がったことが伝わっているようだ。

「安心しました。本当でよかったです。楽しみだなぁぁ」

ライは、色々なことを想像しながら、どんな未知の世界が待ち受けているのかワクワクする。

「ライ、今伯爵様から連絡が入って、もうすぐ着くそうだ。外で待っていよう」

「はい!」

通信の魔道具で、知らせを受けたヴァロワ子爵とライは、玄関を出て外に出る。
すると、出た瞬間は晴れ間が広がっていたが、段々と空が暗くなっていき、なんだろうとヴァロワ子爵とライと執事とメイドは空を見上げる。
メイドは、空を見上げた瞬間悲鳴を上げて、執事は驚きのあまりに尻もちを突いてしまう。

「あぁぁぁぁ、ド、ドラゴン!?」

ヴァロワ子爵は、尻もちを突いて声にならない様子だ。

「父上、ドラゴンですね。ですが、こちらを攻撃する意思があるならば、すでに僕達は死んでいると思います。攻撃せずにゆっくり下りて来ていますから敵対の意思はなさそうですよ」

周りとは違い、ライは平然と分析をして、ドラゴンが下りてくるのを微動だにせず、ジッと眺めていた。

「ヴァロワ子爵、お待たせしました。このような登場で申し訳ございませんが、ここから距離がありますので、遊覧飛行といきましょう」

ドラゴンの正体は、レッドドラゴンであり、パスクが考えたとんでも企画とは、このことだった。

「はぁ、ハシモト伯爵様でしたか......いやはや、登場でこれとは、この先心労で倒れないか心配になってしまいます」

ヴァロワ子爵は、この流れで街に行けば、どれほどの見たこともない世界が待ち受けているのかと頭を悩ませる。
逆に、ライは目を輝かせてレッドドラゴンを見ている。

「街に滞在してもらえれば、すぐに慣れますよ。それにしても、ライくんは物怖じしませんね。ドラゴンは、怖くないのですか?」

「ハシモト伯爵様、お会いできて光栄でございます。まさか名前まで覚えて貰えてるなんて......感動です。ドラゴンを見るのは夢だったんです。乗ったり触ったり男の夢じゃないですか!」

ライは、興奮し過ぎてパスクを前にしても目をキラキラさせてドラゴンについて熱く語る。

「フッ、ライくんは大物ですね。これならば、魔物の街に来ても安心ですよ。魔物に対して、全然拒絶がなく、むしろ興味を持ってくれて嬉しいですね」

パスクは、ヴァロワ子爵の息子とは思えないほど、物怖じしないのと、キィルと真反対の性格なので、驚きながらも純粋な子だなと思う。

「はい!魔物にも興味あります!色んな種族とも関わりたいです!それからそれから、皆様が王国を守った話も聞きたいです!うわぁぁぁ、本当に楽しみだなぁぁ」

パスクは、12歳らしい男の子を久しぶりに見たので、頭を撫で撫で可愛いなと思ってしまう。
だが、後ろではヴァロワ子爵が、アワアワして冷や汗を掻きながら慌てている。

「ハシモト伯爵様!息子が失礼な事ばかり大変申し訳ございません!ライ、すぐに頭を下げなさい!」

ヴァロワ子爵は、ライの頭を押さえて頭を下げさせる。それを見て、パスクは笑ってしまう。

「ライくんは、何も失礼なことはしていませんよ。このくらい無邪気な方が可愛いですから。魔物の街に来たら、今みたいに聞きたいことを素直に聞いてくださいね。では、レッドドラゴンに乗ってください。行きますよ」

「は、はい!ありがとうございます!失礼なことを言うかもしれませんが、魔物の街の方といっぱいいっぱい仲良くしたいです」

ライは、今まで出会った貴族とは色んな意味で全然違うパスクに、親しみやすさと器の大きさを感じて感動してしまう。
だが、ヴァロワ子爵は相変わらず冷や汗ダラダラで、「申し訳ございません。ありがとうございますありがとうございます」と何度も言って慌てているのだった。
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