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第3章 アレクを狙って
第763話 おやっさんの過去と濡れ衣!
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酒をこよなく愛するおやっさんと酒好きな魔王なのだが、この日本酒に関しては、あれから一口飲んだだけで蓋をして日本酒を目の前に手を合わせて拝んでいる。
「えっと......いつまで拝んでるの?」
アレクは、崇拝者のような二人を呆れた?哀れんだ?様子で見ながら尋ねた。
「至高な酒様に拝むのは当たり前の行いじゃろ?坊主も拝まんか!」
「そうだぞ!妾が、跪いても良いと思う相手など、この方しかおらぬ!」
アレクは、やれやれといった様子で頭を抱える。
そして、アレクはポーション瓶を取り出して二人の口に突っ込んで飲ませる。
「んおっ!?ワシは、何をやっておったんじゃ?そ、そうじゃ!この酒を飲んだあと意識がなくなったんじゃ」
「うむ!妾も同じである。この世の酒を凌駕するうまさだったが、何かに吸い込まれるような感覚に陥ったあと意識がなくなった」
アレクが、薬を飲ませると二人は正気を取り戻して、いつもの二人に戻った。
「まさか、こんな魔性の酒だとは。幻の酒としか聞いていなかったので、申し訳ありません。それから、魅了を解く薬を飲ませたので大丈夫だと思いますが、体に異変はないですか?」
幻の酒とは、希少という意味と幻惑のように虜にさせる二つの意味があったのだと、アレクは理解した。
「大丈夫じゃ。じゃが、この世の物とは思えんうまさじゃった。もういっぱ......坊主!何するんじゃ」
「駄目です!また魅了されちゃうでしょ。もうこのお酒は封印です。あんな姿のおやっさんとアナベルは見たくないです」
また幻の酒に手を伸ばそうとしたおやっさんの横から掠め取るように幻の酒をかっさらって魔法鞄に入れる。
「ゔっ......ワシの酒がぁぁぁ」
「おやっさん!うるさいです。この酒でどうなったか、心行くまでご覧になってください」
アレクは、滅多に見られない光景だと思って、映像を記録出来る魔道具に保存しておいた。それを、二人の前に置いて満足行くまで見てもらった。
すると、ラヴァーナが狼狽えて頭を抱えながら「うにゃぁぁぁ~」とわけのわからない叫び声を上げる。
おやっさんは、全然平気そうな様子で最後まで見続けたあと、おもむろに立ち上がるとアレクの前にやってきた。
「なんじゃ。おかしいとこなどないように思うがのぅ。あのうまさならこの反応も納得じゃわい」
おやっさんは、魅了されていてもいなくても、酒に対する愛が本物過ぎて考え方そのものは変わらないのであった。
「アレク~、妾のこの情けない姿は絶対秘密にしてくれ~頼む」
ラヴァーナは、土下座をしてアレクに懇願する。アレクは、ラヴァーナに近付いて肩に手を置きながら「言わないから大丈夫だよ」と声をかけた。
「本当に本当に本当だろうな!嘘であったら、死ぬ覚悟で異空間に閉じ込めてやるからな」
「はいはい。その時は、異空間に自ら入るから、おやっさんの生い立ちを聞きましょ。おやっさん、話の続きをお願いします」
ラヴァーナは、涙を浮かべて、アレクの胸ぐら掴み激しく揺らしながら問い質すが、アレクはどこ吹く風といった感じで適当に流して、おやっさんとの本題に戻そうとした。
「そうじゃったな。1から話すと長くなるのでのぅ。掻い摘んで話していくぞい」
おやっさんが、ゆっくりと何があったのか話していく。
現在のドワーフ王は、何十人もの妾を作っており、おやっさんもその中の妾の子供の一人であったらしい。そして、おやっさんはドワーフ王よりも優れた鍛冶技術を持っており、年々にドワーフ王に追い付く勢いだった。
周りは、次期王はおやっさんだと持て囃すようになっていったのだが、ドワーフ王はそのことが気に入らなかったようで、おやっさんがドワーフ国の鍛冶場を荒らし回ったという罪を着せて国外追放処分にした。
「ワシは、王などに興味はなかったのじゃがな。ただ自分の可能性を追い求めておったら、いつの間にか濡れ衣を着せられておったわい。ガッハハハハハ」
おやっさんは、一切心残りがあるようには見えず、心の底から笑い飛ばしている。
「うむ。そんな王には見えなかったがな。人は見かけによらぬな。だが、確かに言われてみると、ドワーフの国の武器の品質はよかったが、魔物の街の武器には数段劣っておったな」
「ドワーフは、基本同胞の女にしか興味がないからのぅ。対外的には真面目に見えるじゃろうな。やはり、技術は進歩しとらんようだのぅ。同胞として情けないわい」
ラヴァーナは、誰から見ても魅力たっぷりの女性であり、人間であればその魅力に落ちてしまうが、ドワーフからすると、なんの魅力も感じない。だから、ラヴァーナに対していやらしい目などを向けなかったのである。
「おやっさんが凄いから、王様ってどれだけの人物かと思ったけど、話を聞いて一気に興味がなくなっちゃったよ。なんなら、ドワーフ達を引き抜いちゃおうかなとか思ったくらいだもん」
アレクは、伝説の鍛冶師に会えるとワクワクしていたのだが、最低な人物だと知って落胆した。
それならば、おやっさんやジャルやここにいるドワーフのような優秀な人物を魔物の街に連れてきてしまえばいいのではないかと考えた。
「それは良いな!魔ノ国にもほしいぞ!引き抜いてしまおうではないか」
「そうじゃな。ドワーフの国で埋もれるようであれば引き抜いてやってほしいのぅ」
ラヴァーナもおやっさんも、アレクの意見に賛成してしまう。
しかし、アレクの中では、引き抜きは最終手段で、本心としては新しいまともな王に代わってもらって、ドワーフ国と同盟を結びたいと考えていた。
「まぁ、引き抜きは置いといて、まずは病の治療からだね。おやっさんはいいかもだけど、おやっさんは俺の大切な仲間だし、濡れ衣を着せられたままは嫌だから反撃したい!だから、ドワーフの国についてきて」
おやっさんの中では終わっていることであり、そこをほじくり返すようなことをするのは駄目かもしれないが、大切な友を思うとアレク自身が許せないと思ってしまった。
「ガッハハハハ、仕方ないのぅ。すぐに、荷物を取ってくるわい」
おやっさんは、大笑いしたあと、すぐに後ろを向くと、はにかんだように照れ笑いを浮かべて荷物を取りに行くのだった。
「えっと......いつまで拝んでるの?」
アレクは、崇拝者のような二人を呆れた?哀れんだ?様子で見ながら尋ねた。
「至高な酒様に拝むのは当たり前の行いじゃろ?坊主も拝まんか!」
「そうだぞ!妾が、跪いても良いと思う相手など、この方しかおらぬ!」
アレクは、やれやれといった様子で頭を抱える。
そして、アレクはポーション瓶を取り出して二人の口に突っ込んで飲ませる。
「んおっ!?ワシは、何をやっておったんじゃ?そ、そうじゃ!この酒を飲んだあと意識がなくなったんじゃ」
「うむ!妾も同じである。この世の酒を凌駕するうまさだったが、何かに吸い込まれるような感覚に陥ったあと意識がなくなった」
アレクが、薬を飲ませると二人は正気を取り戻して、いつもの二人に戻った。
「まさか、こんな魔性の酒だとは。幻の酒としか聞いていなかったので、申し訳ありません。それから、魅了を解く薬を飲ませたので大丈夫だと思いますが、体に異変はないですか?」
幻の酒とは、希少という意味と幻惑のように虜にさせる二つの意味があったのだと、アレクは理解した。
「大丈夫じゃ。じゃが、この世の物とは思えんうまさじゃった。もういっぱ......坊主!何するんじゃ」
「駄目です!また魅了されちゃうでしょ。もうこのお酒は封印です。あんな姿のおやっさんとアナベルは見たくないです」
また幻の酒に手を伸ばそうとしたおやっさんの横から掠め取るように幻の酒をかっさらって魔法鞄に入れる。
「ゔっ......ワシの酒がぁぁぁ」
「おやっさん!うるさいです。この酒でどうなったか、心行くまでご覧になってください」
アレクは、滅多に見られない光景だと思って、映像を記録出来る魔道具に保存しておいた。それを、二人の前に置いて満足行くまで見てもらった。
すると、ラヴァーナが狼狽えて頭を抱えながら「うにゃぁぁぁ~」とわけのわからない叫び声を上げる。
おやっさんは、全然平気そうな様子で最後まで見続けたあと、おもむろに立ち上がるとアレクの前にやってきた。
「なんじゃ。おかしいとこなどないように思うがのぅ。あのうまさならこの反応も納得じゃわい」
おやっさんは、魅了されていてもいなくても、酒に対する愛が本物過ぎて考え方そのものは変わらないのであった。
「アレク~、妾のこの情けない姿は絶対秘密にしてくれ~頼む」
ラヴァーナは、土下座をしてアレクに懇願する。アレクは、ラヴァーナに近付いて肩に手を置きながら「言わないから大丈夫だよ」と声をかけた。
「本当に本当に本当だろうな!嘘であったら、死ぬ覚悟で異空間に閉じ込めてやるからな」
「はいはい。その時は、異空間に自ら入るから、おやっさんの生い立ちを聞きましょ。おやっさん、話の続きをお願いします」
ラヴァーナは、涙を浮かべて、アレクの胸ぐら掴み激しく揺らしながら問い質すが、アレクはどこ吹く風といった感じで適当に流して、おやっさんとの本題に戻そうとした。
「そうじゃったな。1から話すと長くなるのでのぅ。掻い摘んで話していくぞい」
おやっさんが、ゆっくりと何があったのか話していく。
現在のドワーフ王は、何十人もの妾を作っており、おやっさんもその中の妾の子供の一人であったらしい。そして、おやっさんはドワーフ王よりも優れた鍛冶技術を持っており、年々にドワーフ王に追い付く勢いだった。
周りは、次期王はおやっさんだと持て囃すようになっていったのだが、ドワーフ王はそのことが気に入らなかったようで、おやっさんがドワーフ国の鍛冶場を荒らし回ったという罪を着せて国外追放処分にした。
「ワシは、王などに興味はなかったのじゃがな。ただ自分の可能性を追い求めておったら、いつの間にか濡れ衣を着せられておったわい。ガッハハハハハ」
おやっさんは、一切心残りがあるようには見えず、心の底から笑い飛ばしている。
「うむ。そんな王には見えなかったがな。人は見かけによらぬな。だが、確かに言われてみると、ドワーフの国の武器の品質はよかったが、魔物の街の武器には数段劣っておったな」
「ドワーフは、基本同胞の女にしか興味がないからのぅ。対外的には真面目に見えるじゃろうな。やはり、技術は進歩しとらんようだのぅ。同胞として情けないわい」
ラヴァーナは、誰から見ても魅力たっぷりの女性であり、人間であればその魅力に落ちてしまうが、ドワーフからすると、なんの魅力も感じない。だから、ラヴァーナに対していやらしい目などを向けなかったのである。
「おやっさんが凄いから、王様ってどれだけの人物かと思ったけど、話を聞いて一気に興味がなくなっちゃったよ。なんなら、ドワーフ達を引き抜いちゃおうかなとか思ったくらいだもん」
アレクは、伝説の鍛冶師に会えるとワクワクしていたのだが、最低な人物だと知って落胆した。
それならば、おやっさんやジャルやここにいるドワーフのような優秀な人物を魔物の街に連れてきてしまえばいいのではないかと考えた。
「それは良いな!魔ノ国にもほしいぞ!引き抜いてしまおうではないか」
「そうじゃな。ドワーフの国で埋もれるようであれば引き抜いてやってほしいのぅ」
ラヴァーナもおやっさんも、アレクの意見に賛成してしまう。
しかし、アレクの中では、引き抜きは最終手段で、本心としては新しいまともな王に代わってもらって、ドワーフ国と同盟を結びたいと考えていた。
「まぁ、引き抜きは置いといて、まずは病の治療からだね。おやっさんはいいかもだけど、おやっさんは俺の大切な仲間だし、濡れ衣を着せられたままは嫌だから反撃したい!だから、ドワーフの国についてきて」
おやっさんの中では終わっていることであり、そこをほじくり返すようなことをするのは駄目かもしれないが、大切な友を思うとアレク自身が許せないと思ってしまった。
「ガッハハハハ、仕方ないのぅ。すぐに、荷物を取ってくるわい」
おやっさんは、大笑いしたあと、すぐに後ろを向くと、はにかんだように照れ笑いを浮かべて荷物を取りに行くのだった。
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