チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
648 / 808
第3章 アレクを狙って

第759話 聖女の訓練は長くなりそう!

しおりを挟む
聖女は、薬学神の下で修行をすることになったのだが、初めのうちは家事も服を着替えることも体力がなさ過ぎて走ることさえ出来なかった。
そして、薬学神のスパルタ講座という名の地獄の訓練により人並みには生活を送ることが出来るようになってきた。

「これにて基礎訓練1を終了とする!にしても、本当に箱入り娘だったんだな。これだけ基礎訓練1に時間がかかったやつは初めてだぞ」

「はぁはぁはぁはぁ、申し訳ございません。前にも言いましたが、外にも出してもらえず、聖女として利用されていただけでしたので......」

アレクも経験した山を走破する基礎訓練を何ヶ月もかけてやっと成し遂げた。

「本当に権力を振りかざすゴミをこの世から消し去る必死があるな。まぁ、聖王国のゴミ共は消し炭になったがな。そんなことよりもだ。基礎訓練2を始めるぞ!このままでは、まだまだ足りない」

「え!?まだ基礎訓練は終わらないのですか?来た時よりも、かなり体力がついたと思いますけど......」

アレクの時とは違って基礎訓練の内容を分けているようだ。しかし、箱入り娘の聖女からすると、基礎訓練1だけでも地獄の訓練であった。

「こんな誰でも出来ることで終わると思ったのか?アレクは、基礎訓練1.2を両立させてお前の数倍早く終わらせたんだぞ!ぐだぐだ言うな!やるぞ」

聖女は、小さな声で「アレク様と私じゃ違う」と呟くと、薬学神に首根っこを掴まれて山の一番下まで連れて行かれた。

「これをやるから身体強化を使いながら、魔物を倒して中腹までこい!そうだ。こいつも渡しておくから、死にそうになったら飲むんだぞ」

アレクも経験した身体強化を使った魔物討伐を聖女にもやらせようとしている。
今までの訓練は、薬学神の薬で魔物が寄って来ないようにしていたので、戦闘にならなった。

「魔物と戦うなんて出来ません......今まで魔物と戦ったことなんて一度も......」

「私と戦闘訓練しただろう?あの要領でやれば中腹までの魔物なら死ぬことはない」

魔物に対する恐怖心が抜けない聖女は、薬学神から大丈夫とのお墨付きをもらっても、なかなか一歩を踏み出すことが出来ないでいた。

「それなら、ここで一生いればいい。そうだ。言い忘れていた。お前が、ノロノロしてる間にアレクが厄災にもなりえるやつを倒したぞ!本来なら、お前にも行ってもらう予定だったんだがな」

薬学神は、厳しい言葉を数多く聖女に投げかけたあと、飛び去っていく。
取り残された聖女は、目に涙を浮かべながら色んな感情が溢れ出して「わぁぁぁ」と泣き叫ぶ。

「もう無茶苦茶です。魔物と戦うなんて......」

聖女は、一人取り残されて自暴自棄になりそうになるが、言葉とは裏腹に渡されたナイフを腰に付けて、鞄を開けて何のポーションが入っているかを確認する。

「あの鬼畜神ですから、やらなきゃ一生このままですよね。行きますよ!行けばいいんでしょ!」

アレクが、ルシファーを倒したことについては聖女の耳には届いておらず、今生き残ることを考えるのに必死になっていた。
そして、当然鬼畜神と言ったことは地獄耳の薬学神に届いており、更にスパルタにしてやろうかと考えながらニヤリと笑う。

「大丈夫!大丈夫!鬼畜神との訓練のままにやったら死なない......キャァァァ」

聖女は、ゆっくりと山を登り始めたのだが、葉っぱから垂れてきた雫が顔に当たって悲鳴を上げてしまう。

「うぅ、自分が情けない......」

魔物にすら出会っていないにも関わらず、こんなことで怖がる自分を恥ずかしく感じてしまう。
聖女は、頬をパンパンと叩いて気合を入れ直したあと、ナイフを取り出して構える。
すると、先程の悲鳴のせいでゴブリンを呼び寄せてしまったようで、二体のゴブリンが聖女の前に現れた。

「ギャギャギャギャ」

ゴブリンは、獲物を見つけてニヤリニヤリしながら近付いてくる。
聖女は、まだ恐怖心を拭えず、心臓が破裂するくらいの鼓動が鳴る。

「逃げちゃだめ!生きなきゃ!わぁぁぁあ。キャッ!え?全然痛くない」

聖女は、ゴブリンに目を瞑りながら突進してナイフを振り下ろすが見当違いの方向を切ってしまう。そして、ゴブリンが棍棒で頭を殴ってくるが、全然痛みを感じない。
薬学神との訓練で、ゴブリン以上の攻撃を受けている聖女は、ゴブリンの攻撃くらいならガードしなくとも身体強化で受け止めきれるようになっていた。

「ギャ!?ギャァァァ」

ゴブリンは、ノーダメの聖女を見て不思議そうな顔をするが、次の瞬間、聖女がゴブリンの胸をナイフで一突きした。
聖女は、ゴブリンに対しての恐怖心を克服して、もう一体にも立ち向う。

「怖がらせて許さないです!フフッ、何だか気持ちいいです。こんな感情は初めかも」

二体のゴブリンを倒した聖女は、普段の弱々しさとは真逆の恐怖心を与えるような不気味な表情を浮かべる。

「あぁ、完全に入ってるな!訓練で何か殺させて感情のコントロールを学ばせるべきだったか。まだまだ先は長そうだ」

薬学神は、透明になってあとをつけていたのだが、初めて刺し殺したことによってHighになる聖女を見て、一度止めに入るべきだなと感じるのだった。
しおりを挟む
感想 2,184

あなたにおすすめの小説

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。