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第3章 アレクを狙って

第739話 家臣と主君の新たな誕生とデストロイの過去の一部!

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男は、アレクに対して貴族が行ったスラムでの殺人のことを語った。そして、話を聞く中で、スラムを牛耳っていた者達が手引きをしたのだろうと推測する。

「話を聞く感じ、年齢から察するにどこかの貴族の息子達が引き起こした事件だね。陛下に進言して調査......」

「俺に任せろ!そいつらが来やがったら、この世の絶望を味合わせてやる」

アレクは、国に問題を任せようとするが、デストロイ自身が解決すると言う。

「絶望って......いや、待てよ。やっぱり殺さないならいいよ。でも、力が戻るまでまだまだかかるけどいいの?」

デストロイは、一般人くらいの力があと3週間ほど続くので、無差別殺人のようなことはならないだろうと許可を出したが、魔物の街から人員を派遣するほどの余裕がないので、デストロイ一人で大丈夫なのかを尋ねた。

「殺すか殺さねぇかは、相手の出方次第だ。ブッハハハハ、俺は死を感じる戦闘がしたいんだ。弱いくらいが、ちょうどいいじゃねぇか」

ノックスとはまた違った戦闘狂であるデストロイにとって、生きるか死ぬかの戦いで生を感じるサイコパスに近い感覚なのだ。

「わかったよ。陛下にも報告はしない。したら、騎士団が来て目的が達成できないだろうからね。でも、デストロイがスラムを気にする理由だけは教えてほしいな」

騎士団が動き出したとしたら、警戒して貴族の息子達が動かないだろうと思ったアレクは、全面的にデストロイに任せることにした。
しかし、デストロイの懐かしそうな会話やここまでスラムを思う気持ちが何なのかをアレクは知りたくなった。

「薄々気付いてるんじゃねぇか?俺は、元々スラムの生まれだ。略奪や殺人は当たり前。俺は、その中でのし上がり、皇帝の前で将軍を殺して将軍の座を奪ってやったんだ。だが......なんでもねぇ、こいつらを助けるのは気まぐれだ」

デストロイは、過去の自分の話をするが、最後の肝心な部分を語ることはしなかった。

「そっか、デストロイありがとうね。過去を話してくれて。いつか、その続きを話せるようになったら教えてほしい。じゃあ、辺境伯として命じる!このスラムを脅かす貴族に罰を与えろ」

アレクは、必要以上に詮索することはしない。
それよりも、領地ではない王都で、好き勝手に命令を出し始めてしまう。

「お前のそういうとこが貴族らしくねぇんだよ!タカハシ辺境伯様、お任せ下さい!任務を成功させてみせます」

デストロイからしても、後々のお咎めなど一切気にしない、アレクのぶっ飛んだ言動を気に入る。
そして、デストロイは普段絶対にしない。ましてや陛下にすらしたことのない家臣の礼をしてみせる。

「え!?デストロイどうしたの?そんな言葉遣いしたことないよね?」

アレクは、熱がある人を見る目でデストロイを見る。あまりの綺麗な所作と言葉遣いに驚く。

「俺も、一応元将軍だからな。馬鹿な連中が媚を売ってる姿を何度も見てる。言っておくが、本気でやったのはアレクしかねぇからな。俺は、認めたやつにしかしねぇ」

デストロイは、アレクのことを信頼でき、一生ついていく主君だと決めた。
しかも、人生でアレク以外に心から主君と思い、家臣の礼を取ったことはないと伝えた。

「デストロイ、それはズルい。余計守ってあげたくなるよ。殺しはしないように、エクストラポーションを10本渡しておくから、派手にやってね」

アレクも、覚悟を決めたのか、デストロイのお仕置きタイムを応援する形でエクストラポーションを渡す。
そして、あのデストロイからここまでされてしまっては、主君として期待に応えない訳にはいかないと爵位を失ってもいいと考えた。

「ブッハハハハ、わかってんじゃねぇか!こんだけありゃ......精神崩壊まで持ってけるな」

デストロイは、貴族達をどうしてやろうかと悪巧みをする子供のような顔をする。

「あの?これはどういうことでしょうか?」

男は、戸惑いの色を見せながら、怖ず怖ずとアレク達に尋ねる。

「デストロイが、貴族を懲らしめるって感じかな。あまり深く考えなくていいよ。それより、スラムの住民全員で俺の領地に移住する気はないかな?今よりいい暮らしは保証するからさ」

「え!?ちょ、ちょっと待ってください。内容が多過ぎてついていきません」

アレクのトントン拍子に進む話についていけない男は、頭がパンクしそうになりかける。

「とりあえず、これでも食べて下さい。話は、それからゆっくりしましょう」

アレクは、お粥を男に手渡す。まだまだこれから長い話し合いになりそうなので、その前にお腹いっぱいになってもらって頭が回るようにしてから話そうとする。

「あ、ありがとうございますって、食べてる場合じゃありません!話を、もう一度聞かせてください」

「とりあえず、食べて精をつけてから話しましょう。って、言葉とは裏腹に食べてるし」

男は、目の前のお粥の匂いに我慢出来なくなってしまい、がっつくように食べるのだった。
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