上 下
610 / 761
第3章 アレクを狙って

第721話 地獄の力を解放したレオ!守る力を手に入れる。

しおりを挟む
レオは、部屋の真ん中に座らされる。地獄の力の解放儀式を執り行うようだ。

「この薬を飲め。あ~、毒薬じゃないぞ。アレクに頼んで作ってもらった薬だから安心しろ。本当は、弟子に飲ませる予定だったが、緊急だし仕方ない」

起死回生薬を渡されたヴァンドームは、このような現実離れした薬が作れるなら、もしかすると弟子の悩みを解決する薬を作れるのではと相談して作ってもらった。

「大事な薬ですよね?本当に、お弟子さんのを飲んでよろしいのですか?」

レオは、普通なら聞くであろう薬の詳細を聞かない。それは、アレクのことを信用しているのもあるが、力を解放するのに使う物だろうと推測できるからだ。

「アレクなら、また頼めば作ってくれるだろうしな。だが、お前の力が解放しなければ叶わない。だから、さっさと飲め」

「わかりました。あ、あれ?何も起こりません」

レオは、慌てるように、ポーション瓶に入った液体を飲み干す。
しかし、体全体を見渡して両手を握って開いたりもしてみるが、一切違和感も変化もない。

「地獄の力を活性化させやすくするだけだからな。アレクいわく、副作用の代わりに、スキルと魔力がなくなると言ってたな。まぁ、スキルも魔法も必要ないし、問題ないだろう。早速始めるから背中をこっちに向けろ」

薬の説明には書いていなかったので、詳しいことはわからないが、もしかすると地獄の力と魔法とスキルは相容れない存在なのかもしれない。
そして、魔法とスキルがなくなったことを聞いたレオだが、一切慌てることはない。むしろ、陛下が何やら騒いでいるが、レイリシアの一喝によって、またシュンてなっている。

「ヴァンドーム様、魔法とスキルがなくなったというのに未練も恐怖もありません。不思議です」

「地獄に住む者は、皆スキルも魔法も奪われるからな。今まで、前世の行いの罰だと思っていたが、もしかすると地獄の力を手に入れるために無くなるのかもな。じゃあ、時間がないから始めるぞ」

ヴァンドームは、新たな発見かもしれないと思うと、自然に笑みが溢れた。
そして、ヴァンドームはレオの背中に両手の手のひらを当てる。次の瞬間、レオが苦悶の表現を浮かべて苦しみだす。

「余の息子に何をしておるのだ!?」

陛下は、我慢の限界に達して、レオとヴァンドームの下にやってきて怒号を上げる。

「王様、静かにしてくれ。レオの表情を見ろ!今俺の地獄の力に反応して、必死に呼び覚ましてるとこだ。集中を妨げるな!下手したら死ぬぞ」

魔力を呼び覚ますのと同じように、ヴァンドームはレオに地獄の力を流して、感覚を掴ませようとしている。
しかし、急に活性化した地獄の力が、レオの体で暴れ回り、それを適応させるために苦悶の表情を浮かべているのだ。

「レオ、ゆっくりでいい!深呼吸しながら、全身に巡っているのをイメージしながら整えていけ......凄いな。人間が、ここまで早く順応するとは。グッ、俺の力まで吸い取るのか」

ヴァンドームは、適応し始めたのを確認して手を離そうとしたが、一気に地獄の力を吸い取られた。予想だにしていなかったことなので、流石のヴァンドームも驚いてしまう。

「こりゃ、一筋縄じゃいかないな。どこまで、吸収するか楽しみだ。レオ、そろそろ溢れた力を心臓に貯める感覚で集めてみろ」

レオは、言われた通りに心臓に地獄の力を集めていく。その集中力は、スキルでは絶対に身に付くことのない先天的なものだろう。
そして、暫く経つと体全体が真っ黒な丸い球体に包まれたと思ったと同時に、全ての地獄の力がレオに吸収される。

「よく頑張ったな!今すぐにでも、第3階位に圧勝できるだろう。どうだ?地獄の力を手に入れた感想は?」

「どんどん力が溢れてくる気がします。今ならなんでもできそうです」

今までに感じたことのない止めどなく溢れる力に呼応するように、自信まで漲ってくる。

「よし!今俺が張ってる結界を真似て張ることはできるな?」

「はい!ヴァンドーム様の力も、流れていますので、すぐに真似できそうです」

レオは、ヴァンドームと同じ結界を城全体を覆うように展開する。

「完璧だな。俺は、あいつらを倒してくるから、その間結界を張り続けろ。もし、地獄の力が底をつきそうなら、これをすぐ飲め」

ヴァンドームが渡した物は、アレク特製の地獄の力を回復させるポーションだ。
ヴァンドームも、先程のレオに吸収されたので、回復ポーションを一気に飲み干す。

「はい!わかりました。みんなを守ってみせます!」

レオは、今までに見せたことのない笑顔で答える。それ程までに、今まで力のない自分に負い目を感じていたのだろう。

「ヴァンドーム様、全てが終わりましたら、何故息子に地獄の力があるのか、教えてもらえませんでしょうか?」

項垂れている陛下を他所に、レイリシアは人間であり、尚且つ王族であるレオに地獄との繋がりがあるのを知りたかった。

「はっきりしたことはわからないが、予想でいいなら聞かせてやる。その前に、サクッと終わらしてくる」

ヴァンドームは、そう言い残してパスク達の加勢に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 2,139

あなたにおすすめの小説

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。