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第3章 アレクを狙って

第720話 王都が消失!?レオ第三王子の隠された力

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アレクが、仲間を見送っている頃、ヴァンドームによって王都を守る者達が、王城に転移でやってきた。

「うぉっ!な、なんだ?って、お前達か......心臓に悪いではないか!その様子からして、緊急なのだな?」

陛下は、アレクと出会い幾度となく危険に晒されてきた。そのお陰で、このような無礼な行為をしても怒ることなく、危機が迫っていると、すぐに理解した。

「話が早くて助かります。ゼロ、いやルシファーの仲間が王都に向かってきております。すぐに、避難をお願い......」

パスクが、陛下に避難を求める言葉を言おうとした瞬間、轟音とも呼べる爆発音が響き渡った。
そして、爆音が鳴り止み、皆が立ち上がろうとした時に、一人の兵士が部屋に入ってきた。

「へ、陛下!御無礼をお許しください!ただいま、王都上空の亀裂から何者かが現れ、王都に向けて見たこともない魔法が放たれました。宰相様の指示で、騎士団が討伐に向かって、ぐぁぁぁ」

知らせに来た兵士が、最後まで内容を述べる前に、またしても大爆発したような音が聞こえた。

「陛下、すぐにお逃げください!騎士団も、やられました。そして、王都は火の海でございます。ん?パスクではないですか!?まさか、タカハシ辺境伯が援軍を、うわぁ」

「おっさん、俺が城に結界を張った。今のは、城への直接攻撃だ。意味はわかるな?」

アントンは、騎士団総出で出撃するように命じて、王都守備隊の兵士達に生き残った民を避難させるように命令したのだが、騎士団と王都守備隊が街に入った瞬間、見たこともない魔法によって消し炭にされた。
その中には、ルーヘンやヘリオスもいた。

そして、三度目の攻撃は、王城に放たれた。しかし、ヴァンドームの地獄の結界によって防がれたのである。

「余をおっさん呼びとは......だが、今はそんなことを言っている場合ではないな。直接攻撃ということは、王都には余達しか残っておらんということであるな?どうすればよいか指示を出してくれんか?」

愛する者達が、次々と死んだにも関わらず、陛下は取り乱す様子は一切ない。

「おっさん、いや王様......お前のことは気に入った。待て......ほぉ~、おもしろい。適性者がいるとはな。王様の息子を強くする気はあるか?」

ヴァンドームは、みんなが予想していなかった言葉を口にする。しかも、適性者という言葉に、嫌な気配がプンプンと漂う。

「息子とは、レオのことか!?いや、待て!今は、そのような話をしておる場合ではなかろう。上空におる敵の対策を練らなければならんであろう?」

陛下は、大事な息子が強くなることに興味を示したが、すぐに王様として、今成さねばならないことに意識を戻す。

「話は最後まで聞け!今のままでは、俺達が出て行った直後に、城が消し炭になるぞ。それを回避するために、お前の息子に力を与えて防御結界を張らせる」

このように話している間も、地獄の結界に向けて、無数の攻撃が降り注いでいる。

「うむ。先程からの轟音、止める術が息子にあるならば、お願いするしかないであろうな。アントン、すまんがレイリシアとレオを連れてきてはくれんか?」

「ハッ!畏まりました」

陛下は、どのような力を与えられるのか聞く前に、城にいる者と家族を優先した。

「情けない王であるな。権力だけで、民一人守る力さえないとはな。それに、家族や自分自身を優先し、息子に頼るとは......」

呆気なく民を殺されて、更にはまだ生きたいという欲を出している自分に腹を立ててしまう。

「パスク、一瞬だけ結界を解くから、俺以外を連れて敵さんの相手を頼めるか?」

「わかりました。それに、デストロイがちょうど限界を迎えていたようなので、先に行かせて頂きます」

ヴァンドームは、轟音に嫌気が差していたのと、先程からデストロイを含めた全員がウズウズしているのを感じて、ルシファーの仲間と対峙するように言う。

「話がわかるじゃねぇか。行かせてもらうぜ」

デストロイは、待ってましたと言わんばかりに、城の窓を割って飛び出す。それを追うように、パスクとマンテ爺も向かう。

「騒がしくて悪いな。あのまま放置していたら、この城を破壊して出て行ったかもしれない。それからな、王も一人の人間だ。欲を出すのは自然の摂理。おかしなことではない。お!来たようだな」

ヴァンドームは、静かに話せる状態を作りたく、わざとパスク達を戦わせに行った。

「お父様、ご無事で何よりです。僕が必要だとお聞きしましたが......」

レオは、やってくるなり、陛下の下に駆け寄る。レオは、陛下に会いたがっていたようだが、危険ということで部屋に閉じ込められていたようだ。

「この者が、レオを強くさせてくれるようなのだ。どうだ?頼んでみる気はないか?」

「僕がですか?でも、魔法も弱いですし、スキルも力を2倍にできるだけの平凡なものですよ」

兄二人から馬鹿にされていた一つの原因として、王族にも関わらず突出した力が全くないことも理由にあった。そのため、気弱な性格になり、陛下も気に病んでいた。

「俺は、地獄の元大王だ。原因は、知らないが、お前には地獄の力の適性がある。どうだ?国を守る力を解放してみないか?」

地獄という言葉、そして元大王だということに一同は驚いてしまう。

「な、なにを言っておる。息子に地獄の力を与えるというのか!?」

王族ということで、文献を読み漁っている陛下は、地獄のことを知っていた。しかし、文献に書かれている地獄とは酷いもので、その場所で生まれた力を息子に与えるなど以ての外と思った。

「そうだな。知っている者は、地獄が無法者の集まり、掃き溜めの末路といったところだろうな。だが、今は少しずつ変わってきた。経緯はどうあれ、世界を救いにきている。それに、あれを見ても弱いままでいたいか?」

ヴァンドームは、目に見えない動きで、陛下とレイリシアとレオを抱えて、窓の側に連れて行き、パスク達の戦いを見せる。

「今後も、他人に頼り守ってもらうのか?そして、民をこのように見殺しにするんだな。まぁ、俺はお前らが、どうなろうが構わない。じゃあ、俺はあいつらを救いに行くか。じきに、結界も解けるから、精々逃げ惑うんだな」

ヴァンドームは、振り向くと手をヒラヒラとさせて、パスク達がいる戦場に向かおうとする。

「待ってください!僕を強くしてください!次期王として、全てを守れる力がほしいです」

レオは、去ろうとするヴァンドームを引き止めるように、力強い声で覚悟を決めた答えを出す。ヴァンドームは、小さな声で「ほぉ~」と言って口角を上げる。

「ま、待つのだレオ......」

「あなた、レオが次期王としての自覚が芽生えたのです!子供成長を黙って見ていなさい!いいわね?」

陛下は、慌てて止めようとするが、いつもののんびりした口調ではない強き母といった様子のレイリシアにぴしゃりとぶった斬られる。
そして、陛下は萎々と枯れたようになって小さく「はい」と返事をした。

「ブッハハハハ、王様には勿体ないいい女じゃないか。レオも、いい答えだな!少し手荒になるが、さっさと解放するぞ」

「はい!よろしくお願いします」

ヴァンドームに、いい女と言われたレイリシアは、顔を赤らめて照れている。それを見た陛下は、更にダメージを食らって今にも倒れそうになるのだった。
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